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宮廷風恋愛について(騎士編)

皆さま、お疲れ様です。

前回は宮廷風恋愛の貴婦人について紹介致しましたが、今回は騎士について紹介して行きます。

先ずおさらいですが、宮廷風恋愛とは騎士と貴婦人との不倫であり、取り上げるのは「Chanson d’amour 」やそれに伴って大流行した「恋愛遊戯」ではなく、現実的な側面としての内容で御座います。

貴婦人は大きく分けて3つの要因が絡み付いて騎士と不倫をしておりましたが、騎士はどうなのでしょうか。共に見て行きましょう。


騎士の目的も、大きく分けて3つでした。

・自分より上位の女性と結婚する事により、財産や土地を得られる

・貴婦人に気に入られると、その旦那さんへ覚えて貰える

・騎士にとって、自己実現の場であった

と言う事です。一つずつ見て行きます。


先ずは一つ目ですが、これが一番大きかったです。どれぐらい大きかったかと言うと、「遍歴の騎士」と呼ばれる旅をする騎士の目的の一つであったほどです。

前回紹介しました通り、長子相続制に於ける次男以降は土地を受け継げません。彼らが騎士となる場合、封土と戦利品で食べて行かないといけなかった訳です。

そして、結婚出来たとしても、同じ階級同士でないと結婚出来ませんでしたので、嫁に送り出す側も、それほど多額な財産を渡す事が厳しかったんですね。なので、結婚出来ても精一杯、或いは、結婚も出来ない騎士が沢山おりました。

この不倫に走るのは、後者の騎士です。もし、そんな彼らが城主の貴婦人と結婚出来れば?

暫しの安泰、或いは長期の安泰を手に入れられるわけです(城主より上の諸侯クラスは現実的ではありません。不倫が暴かれた際の罰則が非常に厳しかったからです)。従って、遍歴の騎士は貴婦人を求めて旅をし、見事不倫相手を求める貴婦人と出会い、お互いが納得出来れば、恋愛が始まる訳ですね。


次に、領主に覚えて貰えると言う側面です。

これは非常に現実的で、城主や諸侯の目に留まれば、封土を増やせるチャンスが出来るからですね。これは後年、逆手に取って亭主は妻との不倫に目を瞑る事になります。不倫している間は、自分の下で働いてくれる騎士となるからです。


そして最後が、自己実現です。

騎士に限らず、貴族は「結婚して、初めて一人前」になれました。だから、呼称が違うんですね。

貴族、貴公子。貴婦人、御令嬢。そんな隔たりが有ったのですが、騎士にとって、この価値観は致命的な物でした。

先も申し上げました通り、結婚出来ない騎士や結婚に余裕が無い騎士が居たわけです。彼らは、どれだけ武勇を上げても「半人前の若輩者」扱いを受け、会議への出席が困難な上、意見を口にしても聞き耳を立ててくれなかったんですね。

そんな彼らにとって、「自分は立派である」、「自分はこんなにも成果を上げられるのだ」と言う自己実現の場が、自分よりも高貴な身分の貴婦人との不倫でした。

少し話が変わりますが、騎士と貴婦人間の恋愛に於いて、次第に美化されていく「概念」が生まれます。

「fin’amor」、即ち「まことの愛」です。

これが何かと申しますと、貴婦人が騎士へ無理難題を課しても、騎士は貴婦人からの信用と愛を勝ち得る為に、必ず遂行すると言う関係と行為の間に生じる「愛」でした。彼らは、女尊男卑の中に、「まことの愛」を見出した訳です。

この「fin’amor」こそが、自己実現に他ならなかったんですね。この愛を遂行する度、騎士は愛する奥方へ自分の成果を見せつける事が出来る。半人前としてしか見られない騎士の欲求不満が、この愛によって解消される訳です。


以上が騎士にとっての目的とメリットです。

しかし、当然デメリットもあります。

不倫がバレると、両者に重たい罰が下ること。著しく貴婦人の名誉が傷付けられる事。それらがデメリットでした。

なので、この不倫を詩作したTroubadourは、ほとんど貴婦人の名前を口にする事がありません(だからこそ、現代では裏付けが取れず、その多くの作品がフィクションだと見なされている原因でもあります)。その背景にあるのが、このデメリットだったんですね。

そんな危険性がありながらも、彼らは、各々の目的のため、もっと言うと、お互いの「欲求不満の解消」のため、恋愛を楽しんでおりました。


以上が「宮廷風恋愛」の現実的な側面でした。

最後に、「恋愛遊戯」についても触れておきます。

この「宮廷恋愛詩」が大流行した後、フランス中で「宮廷風恋愛」が大流行します。つまり、みんながみんな「恋に恋する」時代が訪れる訳です。

この現象について『恋愛論』によって細かく分析されていらっしゃいますので、是非ご覧下さい。

この恋愛遊戯は、飽くまで「宮廷風恋愛を楽しむもの」であり、私が今まで説明していた物とは違う物であると認識して下さい。勿論、その果ての目的は御座いましたが、大抵が「性的な欲求不満の解消」に過ぎません。これは紛れもなく「不倫」だと言えるでしょう。


以上が「宮廷風恋愛」と「恋愛遊戯」の違いで御座いました。

いかがでしょうか。もしご不明点が御座いましたら、何なりとご質問ください。

また、このテーマは無料で公開しておりますので、拡散して頂けますと大変に幸いで御座います。

それでは、この辺りで失礼したいと思います。

寒くなって来ましたので、どうかご自愛ください。

此度も御閲覧下さり、誠にありがとうございました。

それでは、失礼致します。

A bientôt !

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