井手ゆきえ

医学/医療ライター

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嘱託殺人に思うこと

昨年末からACPの広告炎上、今回の嘱託殺人と「終末期」にまつわるテーマが一瞬、注目された(そして消えていく)。その合間、合間にCOVID-19で「トリアージ」が必要だ、「高齢者はDNRを明確にして、若い人にECMO(体外式膜型人工肺)を譲るべきだ」等々を唐突に発信する人たちがいる。 普段から人間の生死を考えているというより、普段から「やっかいものは排除してもいい(排除すべき)」とうすぼんやりと意識していた人たちだろう。安楽死、トリアージという便利な言葉がボキャブラリーに加わ

    • お一人様、お一人様を遠隔介護する③

      思い切り放置してしまったので、仕切り直し。 このテキストは50代独身娘が80代一人暮らしの母をどう、遠隔介護していくかという話だ。まだ現在進行形である。ちなみに、母はいたって元気で足腰こそ弱っているが、シルバーボランティアにいそしみ、高齢者のサークルで詩吟をうなっている(いた)。今は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で自粛を強いられているため(このいい方は変だ。自粛は強いられるものではないし)、引きこもりである。足腰や認知機能に影響が出そうで少々、不安だが致

      • お一人様、お一人様を遠隔介護する ②

        遠隔介護のことを考え始めたとき、まず頭を抱えたのは「どうやって、母の状況を把握するか」だった。もちろん電話という手段はあるが「顔が見えない」「目で様子を確認できない」点はいかんともしがたい。昔の人の常で、弱みを他人(娘にはなおさら)に見せたがらないところがあり、彼女の「元気だから、大丈夫よ」という台詞は7掛けで聞く必要がある。 実際、元気(そう)な声を聞いた後で、「実はあの時、体調が悪くて食べ物を受け付けなかったの。病院で点滴を受けてきたわ」なんて話が続くと、電話口で「元気

        • 人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)のこと その2

          ACPは「長患いや老化によるおとろえで回復が難しくなったときにそなえ、これからの治療と療養生活についてあらかじめ話し合うプロセス」だ。LWやADを生かし切れなかった反省から生まれたもので、関係者が参加する対話を通じて、本人の意思と最善の利益を護り「続ける」ことが目的。 もし、意識不明などで本人の最終的な意思を確認できないときであっても、過去に作成したLWやADに縛られるのではなく、対話をくり返してきたなかで生まれる「この人なら、今、こういう選択をするだろう」という共通の認識

        嘱託殺人に思うこと

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        • 大久保町歩き
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          人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)のこと その1

           この数日、厚生労働省が公開した「人生会議(アドバンス・ケア・プランニングの愛称)」のポスターに関して賛否両論が飛び交っている。私の仕事のフィールドに限ったことかもしれないけれど、良くも悪くも問題になったことでACPについて関心を持つ人が増えるのはいいことだろう。 自分もあのポスターには嫌悪感を感じた一人だ。なぜなのか。 アドバンス・ケア・プランニングってなんだろう「もしものとき」についての話し合い アドバンス・ケア・プランニング:ACP:人生会議は、「長患いや老化による

          人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)のこと その1

          お一人様、お一人様を遠隔介護する ①

           80代の親が50代の子どもの生活を支えるという「8050問題」が注目されているが、我が家の8050問題は、いたって普通に50代の娘が遠方に住む80代で一人暮らしの母親(父は既に他界)を、どう遠隔介護(遠距離介護)するかという問題である。  「遠隔」介護とは何事か!とお叱りを受けそうだが、ここで母の介護のためにお一人様の娘が仕事を辞めて介護Uターンしてしまうと、それこそ「8050問題」予備群になりかねない。都会で働く50代の娘はギリギリまで公的介護保険制度を含め、IT技術や

          お一人様、お一人様を遠隔介護する ①