もう引きこもりになりたいなんて、言わないよ絶対。

事情があって本当に家から出られない人からは石を投げられそうだが、「引きこもりになりたい。」と、ずっと思っていた。

深い理由などない、単純にインドアが好きなだけである。私は体育会系だが、インドア派だ。完全にキャラがブレている。

先日胃腸炎に罹り、三日間家に引きこもっていた。

引きこもり初日。
睡眠を何よりも愛している私は、不謹慎ながら「昼間から寝られるなんてラッキー♪」などと思う。
夜7時頃。一度が覚めるも、冷蔵庫にあるチーズを少し嚙り、白湯を啜ると、もう何もできそうもない。また布団へと戻る。

引きこもり二日目。
起きると午後3時を回ったところ。スープDELIクラムチャウダー味を少し食べるも腹痛と吐き気が強まったので、途中で止める。また眠くなってきた。「そういえば昨日歯を磨いていない」と思い、歯を磨く。また布団へと戻る。次に起きるともう夜中だったので、少しスマートフォンをいじり、また眠る。

引きこもり三日目。
丁度正午になる頃目覚める。さすがにこの二日間で眠りすぎて、当初の病とは無関係に頭が痛い。色々なことに思考を巡らせる。

「職場の人達には、この忙しい時期に…とか思われているんだろうなぁ。」

「そもそも良い歳してこんな事で三日も寝て、一体何をやっているんだろう。」

「体調管理もできない社会人なんて、社会のクズだ。」

「ひょっとしたら、今この瞬間、こんな形で三日も寝ているのは、同世代で自分だけかもしれない。」

「もう申し訳なくて職場の人達に顔見せできない、このまま消えたい、何もかも嫌だ…」

………。
完全に思考が悪循環に陥る。
何か……気を紛らせねば…

見逃していたドラマの最終回などを見る。どう考えても泣く場面ではないところで泣く。気が付くと、割と大きな声で叫んでいた。

「もう痛い!!嫌だ!!全部嫌だ!消えたいよー!!!」

叫んだところで返事はない(この家に居るのは自分一人なので当然である)。
私は一人…誰も助けてくれない…

ひとしきりナーバスに浸ると、泣き疲れてまた眠った。

四日目。
目覚めると、腹痛はかなり治まっていた。本調子ではないが、仕事には行けそうだ。仕事に行けそうな体調ならば、行かなくてはいけない。正直行きたくない、なぜなら私は社会のクズだから……。もぞもぞ布団を出る。

よく考えると三日もお風呂に入っていない。歯も三日間で通算一度しか磨いていない。社会どころか女性としてもクズだ。早朝からバスタブにお湯を溜め、入浴。

温かい。なんか幸せかもしれない…

三日ぶりにまともに歩くため、少しよたつきつつも最寄駅へと向かった。
冷たい空気を吸い込み体を動かすと、どんどん元気になっていくのがわかる。「そういえば昨日のあれは何だったんだろう…?」

気持ちが体調にシンクロし、すっかり滅入っていた。その渦中にある時は、全く気がつかなかった。本当に自分は人として終わったのだと信じきっていた。

こういうことは、普段の生活でもよくあるのかもしれない。つまり、その時は切羽詰まりすごく落ち込んだけれど、後から考えると全然大したことではなかったということ。

いつもより肩が凝っているのかもしれない。この部屋が少し寒いのかもしれない。お腹が空いているのかもしれない。睡眠時間が少なくなっているのかもしれない。

ネガティヴに身を委ねる前に、あらゆる可能性を考え対策を取ってみると、案外気持ちが穏やかになるものだ。
少し気持ちが落ち込んだ時に注意深く観察すると、自分がどういう事を不快に思い、どうすれば機嫌が直るのかわかるようになってくる。

自分の事がわからないままでは、世の中生きづらい。毎日様々な出来事が起こるから。
少しずつで良い、自分に目を向け自分用の処方箋を用意しておくと、いざという時、立ち向かえる気力が湧いてくると思う。

ちなみに私の場合、誰とも話さない、外気を吸わない時間が長引くとすっかり弱る事が今回でよくわかった。そしてお風呂に入るとやや気持ちが上がることも。

というか、次体調を崩したら、さっさと実家に帰ろう…

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