冷静と情熱のあいだ

体育会系の環境で育った割にアウトドアは苦手で、BBQもその例に漏れず苦手。
しかし学生の頃はそれなりに協調性を装備していたので、度々参加する事があった。

川沿いで行われたBBQはかなりの大所帯で、私は会計の係を担っていた。
肉を食べも川遊びもせず、携帯電話を計算器代わりに黙々と集金したお金を数えていた。

そんな私に気を使ってか、数人の先輩が声をかけて来た。
「川、入れよ！！」

答える間も無く、ひょいと持ち上げられ、気が付いた時には水の中。

台風後で増水した川を、流し素麺のようにスムーズに流れていった。あんなに早く水中を移動したのは後にも先にもあの時だけだ。
流れ着いた下流で岸に上がると、何やら赤く光るポケットの中身が私を現実へと引き戻した。

残念ながらその携帯電話は防水性ではなかった。そんな備えの心が私にあるはずがない。
画面は真っ暗でボタンも無反応にも関わらず、着信アリの赤ランプが煌々と点灯し、その光が消える事はなかった。

怖かった。

アウトドアは怖い。
少し気を抜くと隙を突き、開放感に任せたウキウキ気分から不幸のどん底に突き落とす。そんなアウトドアのジェットコースター的スリルが、アクティブな人々を魅了し続けているのかもしれない。
だとしたらみんな結構なドMだ。

ゴールデンウィークを利用してBBQなどに出掛けるという方は十分に準備をし、最後まで一切気を抜く事なく過ごしてほしい。

帰ってくるまでがアウトドアです。

#すごいBBQ #携帯水没計5回