次の試合は五月。

先日、友人の結婚式に出席してきた。

結婚式とは不思議な行事で、新郎新婦がとんでもない人格者であり、尋常じゃない人望の持ち主達に見える。

そして、未婚の私は思う。
私はこんな人格者じゃないし、人望もない…結婚式が執り行えるのは、一部の選ばれた人間なのかもしれない…

ともかく、人生で他人よりも光り輝ける、数少ない瞬間の一つであることに違いない。

ところで今回も私は、結婚式に招待客として出席する際、女性ならば誰でも悩んだことのあるであろう問題で、漏れなく悩んだ。

それは、当日の装いである。

黒のドレスが無難であろうか。
でも黒は確実に親族が着るし、新婦に華を添える意味では、カラードレスの方がベター。
かと言って着やすい色であるベージュや淡いピンクなんかは、新婦のウェディングドレスと遠目で見たときに被ってしまうので、良しとされていない。
しかしあまりにも派手な色やデザインだと、それはそれで式の雰囲気を台無しにしてしまう。
振り袖も素敵だけれど、二次会以降のことも考えると、動きにくく着脱が大変な服装は何だか気が重い…

ついでに、「友人達に完全に埋もれてしまう服装は嫌だ!」なんて、欲を出してしまったりして、更に迷走。

私が招待客として参加する際に服装に求める条件は、以下の事だ。

1、親族に目を付けられないデザイン
2、新婦にほどよく華を添えられる色
3、ドレスばかりに気を取られない(着心地が良い)
4、教会での挙式の場合、何らかの形で肩を隠せる(羽衣は除外)
5、スタイルを誤魔化せる

こんなに他人のことを考えて服装を考える日は、他にない。いや、本来はファッションとは、そうあるべきなのかもしれないけれど。

考え抜いた末に私が選んだのは、グリーンのフレアタイプのドレスと、黒いジャケットという組み合わせだった。
グリーンならば友人である新婦が着るイメージはあまりないし、今回の仲間うちにも、きっと着てくる人はいない。
教会での挙式だったため、肩を隠すべく、そしてまだまだ寒い季節のため防寒として、ジャケットを羽織る事にした。更に言うと、私のキャラクター上ガーリーなタイプのボレロなどは似合わないこともあっての選択だ。黒なので少し重たくなってしまうことを考慮し、袖を少しまくって肌を出した。
まだまだ黒タイツが恋しい季節ではあるが、明るい雰囲気にしたかったので、ベージュのストッキングと、黒いエナメルの7センチヒールパンプス。私にとってヒールは必須だ。太く短い脚を、今日くらいは積極的に誤魔化したい。
バッグは伯母から譲り受けた、シャネルのチェーンバッグにした。クラッチタイプと迷ったが、肩から掛けられるチェーンバッグの方が手が空き、誰かのカメラのシャッターを押したり、立ったままドリンクを飲んだりする場面が多い結婚式でも楽だ。

最近はインターネットで調べると、自分で綺麗にヘアセットを仕上げるための情報が山ほど出てくる。動画でわかりやすく手順を紹介しているものもある。器用な人は、自分でアレンジにチャレンジするのも素敵だと思う。

しかし、私は結婚式前に時間的に余裕がある限りは、プロの方にお願いする事にしている。
私の髪質は直毛で、するすると解けやすい。ゆえにセットしにくいし、仮にうまくセットできても、披露宴前に崩れて来て、気になって仕方がないという事態が起こる。せっかくの新郎新婦の晴れ舞台、自分の髪の毛なんかに気を取られず二人の姿に集中したい。

今回も式場の近くの美容院にて、セットをお願いした。
やはりアップが定番だし、華やかで良いなぁと思ったが、きっと会場の7割の女性がアップだろうと思った。せっかくお金を出すのに、他人と同じではつまらない。
私の持ち前の地味さをそこそこに払拭し、かつ多数はいないだろう髪型を考えた結果、一本で編み込みをする、ダウンスタイルにして頂いた。友人達には「アナ雪のエルサみたい!」と言われた。キャラクターと一緒だなんて、良い歳をして恥ずかしいという思いもあったが、美容師さんが細かくアレンジをして下さったおかげでバックスタイルもとても凝っており、比較的好評だった。
美容院は、本当ならばいつも行っている場所にお願いするのがベストなのだが、家から式場までの道程からそれが外れるのであれば、別を探すことにしている。ホットペッパービューティーなどで探すと、その美容院の得意なスタイルなどが沢山載っているので、ピンときたスタイルの美容院に予約をして、それをそのままお願いすれば、「いつもと違う美容院だからイメージと違う感じにされちゃった!」という現象を防げる。
ちなみに私の場合、仕上げにラメのスプレーを振りかけられなさそうな美容院基準で選んでいる。

アクセサリーとメイクは、春を意識してピンクで揃えた。下まぶたに色を乗せることが、最近のマイブームである。
モテからは外れる気がするが、今日は他人のために考えた服装、顔くらい好きにしたい。

このように、ないセンスと知恵を絞り、迎えた当日。厳かな式が無事終わり、披露宴も順調に進んだ。
そして、新郎新婦のお色直しの時間が来た。披露宴の重要な見せ場の一つである。

友人達と、「何色のドレスを着るのかな⁈」「イメージだと黄色とかだよねー!」「私は赤だと思う。」などと楽しく予想をしながら、新郎新婦の再登場を待った。

そして遂にその時が来た。ドアから華々しく入場してきた新郎新婦を見て、私は戦慄した。

新婦のカラードレスが、グリーンだったのである。色味までほとんど同じ。自分の選択ミスを呪った。

もちろん、花嫁のドレスの方が何百倍も華やかであるので、彼女の晴れ姿を霞ませることはなかったと思う。それは間違いないのだが、記念撮影の時などで近くに行った際、どことなく「カブってる感」が漏れ出る。(というか、悪気はないのだろうが、友人達から「カブってるね」などと指摘された…)
数ある色から、わざわざ同じ色を選択する確率を考えると、げっそりした。新婦含め、友人達が今日の私の装いを、1日でも早く忘れ去ることをひっそりと祈った。アーメン…

やはり、結婚式での装いは難しい。女性ならば、誰でも一度は悩む問題だ。しかしおしゃれは戦いだ。諦めたらそこで試合終了である。
近々もう一つ、友人の結婚式に出席予定であり、そこでのリベンジマッチに密かに燃えている最近の私なのであった。

#そんは私とは無関係に結婚式はとても素敵でした #お肉美味しかった #最近の職場でのあだ名は肉食系

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