見つめずにはいられない

だあれも傷つけない夜の雪のようなものになって、この土地にふりつもって、朝にはとけて消えてしまいたい。街があって、音楽があるのだ。首からおなかにかけての、真ん中をとおるようにして。それが途方もなくうるさくて、うれしい。何も終わっていないのだ。「終わっちゃったね」「お別れだね」と言いながら、まったくそんな気がしないでいるのだ。もうずっと始まりたいような、終わりたいような気がしているのに。

作品のプレゼンと講評と展示という3つの大きな出来事が、まるで句読点のようにしてカレンダーのうえを区切っていった。そのなかでわたしは、あまりにもたくさんのことを感じ、そのせいか何も書けなくなっていた。

わたしと世界。そこを区切る輪郭線のようなものを、傷ついたときにだけ感じてしまう。わたしと世界のすきまで、すれていくものがあり、そこを見つめずにはいられない。わたしは、ながめる。まず傷ついた自分のからだをながめ、世界についた傷について考える。何か言おうとするたび、誰か傷つけている。どうして、ただ傷ついているだけでいられる。そんなことはありはしない。とてつもなく、怖いことだ。けれど、それを引き受けたいと思う。これからは。

やすらいでいたいよね。ほんとうは。寒い季節には、あたたかいところでお茶でも飲んでいてほしいよ。あなたに。でも、それはできないね。この冬、わたしは愛してもらう以上に、なにか大切なことを知って、選んだかもしれない。今はそう思う、それだけで生きていくことができる。

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