遠望


魚を飼いたい と思っているのだけれど
魚が飼いたい と思う気持ちだけが先走ってしまって
どの子を連れて帰っていいのかが分からなくなって
その結果何度もお店に行って 水槽の前でウンウン唸るだけの日が続いている

魚は、当然家具でも消耗品でもないので
僕が連れて帰ろうが帰らまいが同じような時間で死んでしまう。

それでも 一度手を伸ばすなら、思い出すための余白くらいは作っておくべきだ
なんて勝手に思っている。

数年来の友人、あるいは友人だった人の
「変わらないね」は、どうやら叱る言葉らしい。

変わりたかった、変わりたくなくもあった
人も僕も そのままでいれば
良かった日に立ち返ることができるので

そんなことを思っていたけれど、
僕の人生にとって良かった日、戻りたい日なんて
冷静に考えるとないかもしれないと、最近は思ってしまう。

”あの頃は良かったね””戻りたいね”なんて言われてしまうと
そんな気もするけれど、
考えるといつだって気を許せる友人なんていなかったし
恋人でさえ、例に漏れず ”一人でいたくなったから” という理由でお別れしている

それでも最後に言われた「そんなに簡単に本当の一人になんてなれやしないよ」
という言葉がお腹のあたりに溜まって、
下手くそな言い訳をしてきただけの自分に、幻滅してしまう日も少なくない。

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