山間の少女

家族や他人の
「なぜ田舎にいるのか」という質問。
「僕には田舎が合っているので」の答えがデフォルト。
細かな説明は面倒で、何より
ここにいる理由は僕にも良く分かっていない。

ただ、そこにいたくない理由がある。

僕の生活を取り巻いていた「上手に生きる人」
人並みに泣いて、悩む人
「打ち込めるものがあっていいね、私には何もない」と言った人

持ち合わせていないものをあたかも持っているように担ぎ上げられた先は、薄い空気と圧迫感。
ハリボテの空は行き止まりの面を示すが、下からの突き上げは止まず、やがて動けなくなってしまった。

まるで、ありもしない服を着せられた裸の王様。
20世紀の満州や南米の、冷えて痩せた土地を明け渡された農民。
それでも行進の最中は、耕している最中は、幸せだった。少なくとも幸せに似た何かを感じていた。

たくさんの人の側についていれば、面倒なことをあまり考えずに済んだからだ

ただ、少数の側に入った時
面倒なことばかり考えなくてはならなくなった。
やがて担ぎ上げていた他人は、明らかな難色を示し始めた。

人は僕を遠ざけたし、僕はもっと人を遠ざけた。

人が嫌いなわけではない。
どちらかといえば人に周りにいて欲しいと思う。
ただそういった、ある種の駆け引きや性的な闘争に巻き込まれる不快感よりは孤独を選んだほうがマシだ。

そんな気持ちが他人を遠ざけてしまう。
「もっと単純に考えなよ」と人はいう。
複雑に考えるだけ損だと君は言う。
”上手に生きる人”の言葉だ。
人並みに泣いて、人並みに怒り、人並みに悩む人。

僕に構わないでいい。心を痛めないでいい
そして、併せて僕のことを忘れて欲しい。

君はどうやらあるらしいマル印を探しているし
僕はただ、バツ印を踏まないように生きているのだから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?