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服装の自由度が高まったが、はたして重要度は下がったのか

仕事柄、オンラインでの打ち合わせが多い。
取引先の担当者と実際に会ったことがない、ということも珍しくない。

だが先日、久しぶりに対面での打ち合わせの機会があった。
それも初対面の方だ。
面会相手は誰もが知る大企業だった。

当日はこちらのオフィスで面会した。
普段はややカジュアルな服装で出社することも多い私だが、
社外の人とお会いする時は、ジャケット着用と決めている。

この日の私の装いは、くるぶし丈の細身のスカート(素材はハイゲージのニット)に、トップスはクルーネックのカットソー。
長時間のデスクワークに適した、肌に馴染む気楽な服装だ。
打ち合わせには、フォーマルの中にトレンドも感じるやや長め丈のブラックのジャケットを羽織って参加した。
足元は6.5cmヒールのパンプス。これは私のONのスイッチでもある。

こちらから打ち合わせに参加したのは私の他に2名、全員女性で、ジャケットを着ていた。

来訪者は2名。
先に名刺交換をしたのは、40代くらいと思われる男性。
スーツでネクタイをしていた。

後の方は、おそらく60代。
名刺にあったのは、その大企業ではなく聞いたことのない社名だった。
社外のアドバイザーとして、プロジェクトに参加していると説明された。

「この人、なんなんだ…?」

心の中で湧いた、不信感のような、ちょっとした嫌悪感のような、負の感情。
その理由は、聞いたことのない社名ではなかったと思う。

コットンのような素材のスタンドカラーのシャツに、
なんとも言えない色みのクルーネックのトレーナー。
ラフなサイズ感が、私服の楽しみ方を知らない休日のお父さん、という雰囲気を強めていた。
そして手入れのされていないグレイヘアーは、清潔感無く伸びたままだった。

失礼な格好というわけではなかったが、
決して気が使われた身なりではなかった。

とは言え、私は発言する機会も多く緊張感を持って参加していたため、余計なことを考える暇はなく、
実際にそれらに目が行ったのは終盤だ。

打ち合わせ自体は1人目の方が仕切り、スムーズに進行し、
アドバイザーのその方に意見を促す場面が多かった。

そして40分ほどの打ち合わせの後半に差し掛かると、
アドバイザーの方の知識量や、その世代とは思えないほどのトレンドキャッチ力に、私は出し抜かれた気分になった。
私の身体の向きは、1人目の方からアドバイザーの方へすっかり向き直っていた。

この企業が呼ぶのも納得。

私以外の2名も、同様の評価だったように思う。

この時になってやっと、私はこの人への第一印象が悪かったこと、そしてそれが覆ったことに気付く。
その理由がおそらく服装や髪型であることにも。


働き方改革やテレワーク、オフィスのカジュアル化により
ビジネスシーンの服装が自由になってきている。

ビジネススーツの市場規模は縮小傾向にあり、スニーカーは“運動靴”ではなくオフィスでも市民権を得た。

服装の自由度はより高まっていると言えるだろう。

そんな中、どんな服装でいるかということは
重要ではなくなったのだろうか。

いやむしろ、その重要度はさらに増しているのでは…。
私はこの日の経験で、そう思うようになった。

例えば、みんながスーツを着ている場合、その着こなしや仕立ての良さなどで差がつく。
だがその差に気付く人はどのくらいいるだろうか?

背中にシワがないか、袖口は擦り切れていないか、ネクタイは曲がっていないか、サイズは合っているか…

せいぜい目が行くのはそんなところで、
清潔感が保てているかが印象に残る程度だ。
スーツを着ていること自体で何かをアピールすることは難しい。

一方、服装が自由な職場で、普段はノータイで仕事をしている上司が、ある日ネクタイとスリーピースという装いであれば、
「何か重要なアポイントがあるのかな」
「この打ち合わせに熱が入っていそうだな」
そんな気がしてしまう。

また結婚式を例にとると、一般的な式場やホテルなどへのお呼ばれのときは、フォーマルな装いで行けばよく、コーデネートにそう悩むことはない。

ところが、レストランウエディングや1.5次会など、型にはまらない形式のとき、
しかも招待状に「ぜひカジュアルな服装でお越しください!」なんて書いてあると、
途端に何を着ればいいのか悩み倒してしまう。

こういうときこそ、どんな服装でいるのかに注目が集まる。(自意識過剰だろうか。)
その難易度も急上昇だ。


精神は身なりに表れる。

ビジネスにおいて、第一印象は良いに越したことはない。
限られた時間の中で相手に自分の人となりを隅々まで知ってもらうことは難しい。

最初から好感度や信頼感のある印象を与える方が、
短時間で成果を出しやすいと思っている。

冒頭のエピソードを経て、私が取引先の人に感じたのは「この人勿体無いことしているな」ということ。

もしかすると私が知らないだけで、恋愛なんかには
第一印象が多少悪い方が、後から好感度が増すというギャップを狙った距離のつめ方もあるのかもしれない。

ただ言えるのは、ビジネスにおいてリスクは排除するに越したことはない。

特に信頼関係を築けていない相手や、ここぞというときに選ぶ服装には一層気を使う。
もちろんビジネスにおいてもっと重要なことが他にたくさんあることは言うまでもない。
だからこそ、日々積み重ねたものを惜しみなく発揮するため、私はこれからも自分の身なりに気を使うだろう。

“適した服装”の幅が広がったこの時代において、
その重要度は高まり、また難易度も一層増している。

それをうまく利用して、パフォーマンスを上げていきたいと思う。


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