忍殺TRPG小説風リプレイ【ファロウ・ザ・フォックス・テイル(その1)】

アイサツ

ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

なお本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

今回挑戦させていただいたのはゴルダ=アルカトラスさん作成のソロシナリオ【カツアゲマンとキツネの影】です。詳細は下記の記事をご覧ください!

※なお、リプレイにあたりシナリオの描写を一部改変させていただいております。ご了承ください。

更にシナリオ内に古矢沢さん作成の非公式ルールセット、追加ソウル案『キツネ・ニンジャクラン/シニフリ・ジツ』のデータが採用されたニンジャが登場します。詳細は下記の記事をご覧ください。

今回のシナリオは善良寄りのフリーランスもしくはドラゴン・ドージョー所属向けのシナリオということでドラゴン・ドージョー所属の女子高生ニンジャ、ドラゴンチック=サンに挑戦してもらいます!

【ニンジャネーム】:ドラゴンチック
【性別】:女
【カラテ】:7          【体力】:7/7
【ニューロン】:7        【精神力】:11/10
【ワザマエ】:7         【脚力】:5
【ジツ】:1(カトン・ジツ)   【万札】:58
【DKK】:0           【名声(ドラゴン)】:13

【アイテム】:なし

【装備品】 :生成装束(伝統的ニンジャ装束【回避ダイス+1】【精神力+1】)
       生成メンポ(パーソナルメンポ【精神力+2】)

【生い立ち】:○未覚醒のアーチ級ニンジャソウル憑依者

【ジツ】  :★★★共振装束生成 
       ★カトン・ドレスアップ(カトン・パンチ読み替え)(未熟、発動時【精神力】更に+1必要) 
       「難易度:NORMAL」で判定。『素手』および『バイオサイバネ』で繰り出したダメージ全てに、
       炎による+1の修正が入る。さらに『近接攻撃』時のダイスが+1個される。

【スキル】 :『連続攻撃2』『時間差』『マルチターゲット』『連射2』『疾駆』
       ●ミネウチ

【備考】  :アジト(風呂)の効果で【精神力】+1
       カラテ蓄積2

それではやっていきたいと思います!

本編

ネオサイタマ都市部、最大級繁華街ネオカブキチョ。夜のこの町を知る者にとって、昼時のネオカブキチョは驚くほど静かだ。日が沈めば五月蠅いほどに光り輝くネオン群も今はまだ眠りについており、ヤクザ同士の銃撃戦やマイコ・ポンビキ、違法ドラッグの取引といったこの町の日常を照らし出す時を奥ゆかしく待っている。

「ヨー、てめえ飛び跳ねろよ」「こんだけじゃ足りないでショ?俺達3人いるんだから3人分必要でショ?」「アイエエエエ……」その路地裏の一角、強面の男3人に壁際に追いつめられ、青褪めた顔で目に涙を浮かべる青年が1人。彼はネオカブキチョ・ニュービーの無軌道学生である。

いきなり夜のネオカブキチョに来るのは怖かったため、昼間の内に下見を済ませておいて、夜になったら女の子をスマートにエスコートし、自然な流れで前後まで持っていくという彼の完璧なプランは初手から躓いた。運悪く3人組のカツアゲマン達に捕まってしまったのだ。

カツアゲマンとは、気弱そうな通行人や観光客を狙って路地裏に引きずり込み、難癖をつけて金品を強奪する恐るべきヨタモノ集団である。彼らに絡まれたが最後、手持ちの金は全てネコソギにされ被害者は泣き寝入りして自分の不注意を呪うしかない。これもマッポーの世の一側面か。

「ヨー、黙ってたら分かんねえだろがよ。飛び跳ねてみろや」首を大袈裟に前後に動かしながら無軌道学生の俯いた顔を覗き込むのはレザージャケットを着たダブルモヒカンヘアの男だ。屈強な筋肉が詰まった右腕にはブッダデーモンに襲われるカエルとウサギのタトゥーが彫られておりとてもコワイ。「このまま黙ってれば助かると思ってる?なわけないでショ?」

右手に持った改造スタンガンを左手に叩きつけて威圧的な音を出しているのは痩せぎすなカッパヘアだ。「早くカネ出した方が良いよ?いや、俺はともかくコイツがね?」カッパヘアが親指で後ろを指す。そこに立っていたのは…ナムサン。身長7フィートはあろうかという大男だ。

「アー……シグレ様……」焦点の合わぬ虚ろな目で宙を睨み、涎を垂らしながら意味不明な言葉をブツブツと呟いている。コワイ!「アイエエエ……」きっとこの男は危険な薬物中毒者に違いない。無軌道学生は小失禁した。だが彼を助ける者などいない。マッポ―の世においてこの程度の犯罪行為は取るに足らぬチャメシ・インシデントなのだ。

………その時である。

調査判定(ワザマエ):7d6>=5 = (3,6,2,2,4,3,4 :成功数:1) = 1


「ちょっとやめなさい」「アア―ン?」表通りから声を掛けてきたのは若い女、いや少女だ。黒のショートヘアに白い肌。小鳥の刺繍がされた透明感のあるチャイナシャツに、厚手のホットパンツを履いている。ファッション・ブランド『沈没宝船セニョリータ』で取り揃えた服装だ。彼女のバストは標準的だった。

「最近この辺りで噂のカツアゲマンってあなたたちでしょ。ちょっと話を聞かせてくれる?」少女はまったく躊躇する様子も無く薄汚い路地裏へ足を踏み入れた。ダブルモヒカンとカッパヘアは顔を見合わせる。その口元に下卑た欲望に塗れた笑みが浮かんだ。

「お話してぇの?いいぜ!君みたいなマブなら大歓迎!」「君、1人?友達とかいない?俺達3人いるからさァ。3人分必要だよねェ?」少女はちらりと2人を一瞥し、「あなたたちじゃないみたいね」「ア?」「ン?」一言告げると残った大男に目線を移す。「アー…何だテメエ…カネ寄越せや…シグレ様……」

「オイオイ、もうカネなんていいだろ!それよりマブだぜ?楽しもうぜ!」ダブルモヒカンが大男の背中を叩きながら言った。すると、「イヤーッ!」「グワーッ!?」大男が裏拳でダブルモヒカンの顔面を殴りつけた。「グワーッ!?」鼻がひしゃげ、鼻血が噴き出る。「アイエッ!?」「エッ!?エッ!?」カッパヘアと無軌道学生が狼狽した。

「アホかテメエら…マブよりカネだろ…前後よりシグレ様なんだよ…」大男の言葉は譫言めいていた。明らかに様子がおかしい。彼はただの薬物中毒者ではないのか?「オ、オイ!昨日からおかしいぞお前!急にカツアゲしようっつったと思えばよお!誰だよシグレ様!知らねえよ!」「イヤーッ!」「グワーッ!?」カッパヘアの言葉は大男の右ストレートで遮られた。

「シグレ様はシグレ様だろうがよ…カネを集めるんだよ…カネ…」「そこのあなた」黙って様子を見ていた少女が大男に呼びかけた。「そのシグレ様っていう人について詳しく聞かせてもらえる?」「…ア?」その瞬間、大男の纏っていたアトモスフィアが一変し、敵意を籠めた目で少女を睨みつけた。

「何だテメエ…シグレ様の邪魔はさせねえぞ…!」大男は懐から改造スタンガンを取り出す!「ああクソ訳分からねえ!テメエのせいだぞ!責任取って前後させやがれ!」「ヤッチマエ!」ダブルモヒカン、カッパヘアも同様にスタンガンを少女に向けて突き付けた!彼らは理解が困難な状況に直面した時、まず最初に暴力と前後を求めるのだ!

「事情は分かった」だが、少女は臆することなくカツアゲマン達を睨み返した。のみならず、ジュージツめいた構えを取り3人に対峙する。まさか、この何処にでもいるような少女はカラテでこの状況をどうにかしようというのか?無謀!「シネッコラー!」ダブルモヒカンがスタンガンを振り上げて突撃する!「アブナイ!」無軌道学生が頭を抱え、目を瞑った。

カツアゲマン 種別:モータル
カラテ  :3 体力 :2
ニューロン:2 精神力:2
ワザマエ:3  脚力 :2
万札:0
装備:
◇スタンガン
【ワザマエ】NORMAL判定(対ニンジャ攻撃難易度+1)
『ダメージ1』『電磁ショック1』


カツアゲマン1

イニシアチブ
ドラゴンチック→カツアゲマン達
ドラゴンチックミネウチ:4d6>=5+3d6>=5 = 
(5,3,6,2 :成功数:2) + (2,1,6 :成功数:1) = 3
ダブルモヒカン気絶

「イヤーッ!」「グワーッ!?」「イヤーッ!」「グワーッ!?ムン」スタンガンが少女の身体に触れることは無かった。それよりも早く少女の踏み込みからの拳がダブルモヒカンの鳩尾に叩きこまれ、蹲って位置が下がった顎にハイキックが掠り、ダブルモヒカンの意識がブラックアウトしたからだ。「エッ?」「エッ?」カッパヘアと無軌道学生のニューロンが一時停止した。

ダブルモヒカンがどさりと音を立てて崩れ落ちたことを確認すると、少女は右の手の平を上に向け、カッパヘアに対して挑発的に手招きした。次はお前だ、と言わんばかりに。「ソ…ソマシャッテコラー!」激昂したカッパヘアがスタンガンを振り回し「イヤーッ!」「グワーッ!?」目にも止まらぬ速さのチョップであっさりと武装解除された。

カツアゲマンスタンガン:3d6>=5+3d6>=5 = (5,1,6 :成功数:2) + (6,6,5 :成功数:3) = 5
ドラゴンチック回避:9d6>=4 = (2,5,2,6,5,4,5,3,1 :成功数:5) = 5 カウンター!
カッパヘア体力1

「ア、アイエエ……」「イヤーッ!」カッパヘアが痛む手首を押さえているうちに少女にその腕を捕られ、肩を掴まれた。「イヤーッ!」「グワーッ!ムン」そのまま背負いこむような形で硬いアスファルトの地面に背中から叩きつけられて気絶した。ジュドーの代名詞、イポン背負いだ。

「ウオオーッ!シグレ様ウオオーッ!」少女の無防備な背中へ向けて大男が襲い掛かった。少女は振り向きもせずに立ち尽くしている。アブナイ!「イヤーッ!」「グワーッ!?」男の絶叫が路地裏に響いた。少女はその場で左足を限界まで開脚して蹴り上げ、すぐ後ろに迫っていた大男の顔面をつま先で蹴り飛ばしたのだ。

ドラゴンチックミネウチ集中:4d6>=4+3d6>=4 =
 (6,3,6,2 :成功数:2) + (2,2,4 :成功数:1) = 3
カッパヘア気絶
大男体力1

「イヤーッ!」「グワーッ!」少女は左回転して大男の足を払う。スイープ・サイ。「イヤーッ!」「グワーッ!」更に回転を続け、遠心力を得た右フックで大男の脇腹を打ち抜いた。まるでマイめいた動きであった。「グワーッ!ムン」大男はキリモミ回転して吹き飛び、背中からビル壁に叩きつけられ気絶した。「スゥーッ…ハァーッ…」少女は深く息を吐き、ザンシンした。

カツアゲマンスタンガン:3d6>=5 = (1,6,4 :成功数:1) = 1
ドラゴンチック回避:9d6>=4 = (2,6,6,3,6,4,3,3,2 :成功数:4) = 4 カウンター!
大男気絶

「ア……」小柄な少女があっという間に男3人を打ちのめす様を、無軌道学生は口を開けたまま呆けた顔で見ていた。見とれていたと言ってもいい。「ダイジョブですか」「エッ!アッハイ!ダイジョブです!」無軌道学生は慌てて立ち上がった。その顔は羞恥で赤く染まっている。自分より年下の女の子にみっともないところを見られたことと、思わず敬語で返事してしまったことに。

幸いと言うべきか残念と言うべきか、少女は特に反応を示すことなく気絶したダブルモヒカンの懐を漁り始め、何かを取り出した。「これ、あなたの財布ですか?」「エッ?」少女の手に握られていたのはクラシックなデザインの長財布だ。

「そ、そうです!さっきソイツに取られて!」その財布は無軌道学生が大学の入学祝いに父親からプレゼントされたものであった。男ならみみっちい財布なんかに金を入れるなとは父の言葉だ。あんまり頼りがいの無い父親ではあるが、プレゼントは素直に嬉しかったことを覚えている。「ヨカッタ、どうぞ」

少女は笑顔で財布を差し出してきた。「ア、アア、アリガト!」無軌道学生はどもりながら礼を言って財布を受け取った。その時、少女の指先に僅かながら手が触れた。「そそそ、それじゃ!オタッシャデー!」少女が何か言う前に無軌道学生は路地裏から表通りへ向けて全速力で走っていった。

………「ハァーッ!ハァーッ!」脇腹の痛みが限界になったところで無軌道学生はネオカブキチョ駅に到着した。ホームの椅子に座って息を整えながら路地裏での出来事を回想する。(夜の予定は……キャンセルしよう)今日は家に帰って早く寝よう。無軌道学生はそう考えてから、やっぱり寝る前にセルフ前後しようとぼんやりとした頭で考えた。

◇◇◇

さて、場面を路地裏へと戻そう。走り去る無軌道学生を見送った少女は気絶した大男へと近付き、しゃがみ込んでぺちぺちと頬を張った。「起きてください」「ウ、ウーム……」大男が僅かに目を開いた。「ここは……?アンタは……?」「ドーモ、クツロ・ツクです。シグレ=サンについて聞かせてもらうから」少女は……ツクはアイサツをした。

彼女のモータルとしての名前はクツロ・ツク。そう、モータルとしての名だ。ツクのもう一つの名前はドラゴンチック。彼女はドラゴンドージョーに所属するニンジャソウル憑依者なのである。そんな彼女がどうしてカブキチョに居るのか?話は数日前にさかのぼる。

邪悪な野良ニンジャやソウカイヤのサンシタニンジャなどの暴虐行為を可能な限り止めるため、日課であるネオサイタマ各地の見回りを行っていた際、ドラゴンチックは奇妙な噂を耳にした。ネオカブキチョやツチノコ・ストリートといった治安レベルの低い地域でカツアゲマンが大量発生しているというのだ。

そしてカツアゲの被害者たちの話では『金を取られたけど金以外は見向きもしていなかった』『カツアゲマンは薬物中毒者みたいに虚ろな目でコワイだった』『誰かの名前をブツブツ言ってたような気がする』というような情報が散見された。明らかに異常事態である。そしてネオサイタマの異常あるところにニンジャあり。ドラゴンチックは個人的に調査を開始した。

その後、カブキチョやツチノコ・ストリートなどの路地裏を数日巡回し続け、ついに有力な手掛かりと思われる目の前の大男に辿り着いたという訳である。だが。「シグレ……?誰だそりゃあ?」「……覚えてないの?」「覚えてないも何も、誰だよシグレ、それにアンタも」大男の様子は再び激変していた。目には理性が宿り、受け答えもしっかりしている。

「ア?オイ!オメエらしっかりしろ!誰にやられた!?」その時、大男は地面に這いつくばっていたダブルモヒカンとカッパヘアに初めて気が付いたように叫んだ。先程何があったか覚えていないのだろうか?「ちょっといいですか?」ドラゴンチックが大男の肩に手を置く。「アア?何だガキガコラー!後にしろオラ―!」「聞いて」「アッハイ、ゴメンナサイ」

肩に置かれた手から万力で締め付けられるような圧力を感じた大男は一瞬で素直になった。コイツには敵わないと判断したらなるべく早く従順になるか逃げるのが裏社会で生き残るコツだ。ドラゴンチックはインタビューを始める。「さっき、ここであなた達がカツアゲしていたことは覚えてる?」

「カツアゲ?俺達が……アンタにか?」大男の表情に誤魔化しや虚偽の色は無い。どうやら案の定記憶が抜け落ちているようである。「……ちょっと質問を変えるね。最後に記憶がしっかりしてるのはいつ?」「ア?そんなのはよ……確か昨日、いや一昨日?ツチノコ・ストリートで酒を飲んで……パンクス共とやり合う羽目になってよォ……」

大男は記憶の糸が途切れぬよう慎重に手繰り寄せる。「向こうが3人いやがったから、ガツンとシャカリキ決めてブチのめしてやって……俺、ヤクが抜けるまでブラブラ歩いてたら……あの辛気臭えセンソ・ディストリクトにまで行っちまって……そこで……そこで……?……ア?アア!?アイエエエエエエ!?」

ナムサン!大男は急に頭を抱えて叫び始めた!NRSフィードバックだ!「アイエエエ!ニンジャ!ニンジャナンデ!キツネ!ニンジャ!アイエエエ!」「イヤーッ!」「グワーッ!ムン」ドラゴンチックのソフトチョップにより大男は再び気絶した。「ゴメンナサイ」謝罪をしてから他の二人と共にビル壁にもたれるように座らせてやる。

ドラゴンチックは思案する。「ニンジャ……キツネ……?」やはり今回の件にはニンジャが絡んでいた。この大男はニンジャに操られ、カツアゲ行為で得た金をそのニンジャに渡す手筈だったということだろう。「ニンジャにしては回りくどいというか慎重というか……」独り言を呟きつつ、ドラゴンチックはその場を離れる。

路地裏から表通りに出たドラゴンチックは周囲に人がいないことを確認し、地面を蹴った。電信柱やネオン看板を蹴り渡り、あっという間にビル屋上へ。ドラゴンチックはそこから北東へ視線を向ける。先程の大男の話を思い返す。センソ・ディストリクト。果たしてそこに何があるのか。「イヤーッ!」ビルの屋上で北東への風が吹いた。


ファロウ・ザ・フォックス・テイル(その2)へ続く