見出し画像

忍殺TRPG小説風リプレイ【ダンス・ダンス・ダンス!(その3)】

アイサツ

ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

なお本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

ではやっていきたいと思います。

本編

◆◆◆

場面は再びトコロザワピラー内、秘密ブリーフィングルームへと戻る。

「タダイマー♡」ブラインドが相変わらず照明の点いていない部屋の中に入ると、ソニックブームが椅子に座りこみ、49ラウンドを戦い抜いたボクサーめいてがっくりと項垂れていた。「戻ったか……報告しやがれ……」あらかじめプログラミングされた言動を機械的に行うスシ・ベンダーめいて呟く。

「ローズル=サンとダンスしたりしたらノロイを解いてくれました♡でもローズル=サンには逃げられちゃいました♡ゴメンナサイ♡ローズル=サンはまた遊ぼうぜって言ってました♡」「……そうか」ソニックブームは裸の万札を力無く投げてよこした。「報酬だ……」「ワーイ♡」

【万札:20】ピンハネで更に【万札:1】【余暇:4日】GET

「ところでソニックブーム=サン♡なんだか元気無いですね♡どうしたんですか?♡」「………オイ、さっきからテメエその喋り方を「ダイジョブですか?♡♡お腹痛いんですか?♡♡それともお腹空いたんですか?♡♡」「だからその「バスト揉みますか?♡♡♡なんなら一緒に踊りませんか?♡♡♡楽しく踊れば元気出ますよ♡♡♡♡♡♡♡」


「イイィィヤアァーーッ!」「ンアーッ!?♡」ソニックカラテアッパーカットだ!吹き飛ぶブラインド!「イヤーッ!」「ンアーッ!♡」ソニックカラテ対空ポムポムパンチだ!「イヤーッ!」「……ンアーッ!」ソニックカラテ胴回し回転蹴りだ!「イヤーッ!」「ンアーッ!」ソニックカラテ空中サマーソルトキックだ!「イイィィヤアァーーッ!」「ンアバーッ!」ジェット・ツキだ!!

ゴウランガ!次々と放たれるソニックカラテを受け続けるブラインドはまるで糸に繋がれ、乱暴に操られるジョルリ人形の如し!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「ンアーッ!ンアーッ!ンアーッ!」ブラインドは空中という名の舞台でソニックカラテのリズムに合わせながら踊る!踊る!踊る!……カゼの舞踊を!

「イイィィヤアァーーッ!」「ンアバババーッ!」DOOOM!BACOOOM!CLAAAAAAASH!ソニックカラテジャンピングカワラ割りチョップだ!地面に叩きつけられるブラインド!「アバッ……ナ……ナンデ?」ブラインドは生きていた。なんとか。「ヤカマシャワラー!ガキガゴラー!そんだけ元気が有り余ってやがるなら追加のビズをくれてやる!感謝しやがれメジャリャギャラー!!」「エエ……」ブラインドは理不尽に泣いた。

◇◇◇

………………「それで追加のお仕事って何ですか……アイテテテ」ブラインドは傷の痛みに顔を歪ませる。「テメエにお似合いのクソ下らねえ仕事だ」ソニックブームは椅子に座り、携帯UNIXのキーボードをタイプしながら吐き捨てた。「テメエのチームメイトがスカウトに行ったのは流石に知ってるな?」「チキンハート君が負けちゃって逃げてきたっていうアレですか?」「ああ、そうだ」ッターン!ソニックブームはエンターキーを押した。

「ブレードブレイカー=サンの方も難儀したようでな。何人か当たってスカウト出来たのはバイジンっつうイアイ使いだけだ。まあ、あの二人には対処が難しい賞金首ニンジャ共をぶつけたからな、一人でも連れてこれりゃあ御の字ではあった」「フムフム」ブラインドは頷く。よく分かっていないのだ。

「で、だ。テメエにもスカウトに行ってもらいたい。もちろんテメエみてえなサンシタに賞金首になっているようなニンジャを相手させるつもりはねえ。もっとシンプルな相手だ」ソニックブームは説明をしながらUNIXの画面をブラインドに見えるように回す。そこには飲食店、服飾店、風俗店などの所在が複数マーキングされた地図が映し出されていた。

「どうもうちのシマを荒らしてるガキがいやがるらしくてな。この店舗が実際被害にあった場所なんだが……ソウカイヤの系列店に押し込み強盗しやがったわけだ」「ハイハイ」「手口から判断して間違いなくニンジャ……それも憑依したてのニュービーだ。ちょっくら行って締め上げてこい。それで大人しく恭順すれば良し。そうでなきゃ殺せ、いいな」「ハーイ、ワカリマシタ」ブラインドは気軽に了承した。

「よし、それじゃあとっとと行ってこい……と言いたいところだが」「ンン?」出口へ向かいかけたブラインドの足が止まる。「チームの他の二人が生きるか死ぬかっつうイクサをしてるのによ、お前一人がこれだけ簡単すぎる任務ってのは歯応えがねえだろう?エエッ?」「いえ、全然」「イヤーッ!」「ンアーッ!」ソニックカラテ左ジャブだ!吹き飛ぶブラインド!

「とにかく、だ。今回のビズにちょいと条件を付ける。と言ってもそう難しい事じゃねえ」ソニックブームは再度キーボードをタイプする。「インパルス=サン、知ってるか」「?どなた?」起き上がったブラインドは首を傾げた。「まあ知らねえか……コイツだ」ソニックブームが見せてきた画面には、ヤクザスーツを着用したホストめいた風体の男が映っていた。

「コイツは少し前から俺様の下で働いてるニンジャでな。野心に溢れてやがるのは結構なんだが、実戦を知らねえせいか手柄欲しさに独断で動いちまいそうな危なっかしいところがある。テメエにはこのインパルス=サンと一緒に今度のビズをしてもらう」「エートつまり、このインパルス君に任せてればいいんですか?ヤッター!」「………まあ、半分は正解だ」「ンン?」

「いいか、インパルス=サンを連れて行く理由はコイツにイクサの場を経験させてやることだ。殺し合いの恐さをな」ソニックブームは右手の人差し指を立てる。「まず、コイツの好きにさせてみろ。手に余るようだとお前が判断したら助け舟を出せ。いいな?」「オッケー!任せてくださいよ!」ブラインドは気軽に了承した。

「本当ならこういうのはチキンハート=サンあたりにやらせるんだが……ベッドで寝てやがるんじゃあしょうがねえ。まったくいい身分だぜ」「ウンウン、ホントですね!」「テメエが言うな、ボケが。それじゃあ後日追ってIRCに指示を飛ばす。今日はもう帰っていいぞ」「ハーイ!オツカレサマデシター!」ブラインドはどたどたと部屋を後にした。


「……ッフウーー………」ソニックブームは椅子の背もたれに背中を預け、深く深く溜息を吐いた。今日は疲れた。本当に疲れた。いつもの仕事とはまったく別のベクトルで。「アー……」閉じた瞼を指でほぐす。「休暇でも申請するか……」瞼の裏に浮かび上がるのは、以前行ったオキナワ・リゾートの青い海、白い砂浜、照りつける太陽の輝き。

TRRRRR……TRRRRR……「……チッ」携帯IRCの着信音が鳴り響き、ソニックブームはニューロンに浮かんだオキナワの光景から現実の無味乾燥なオフィスへと引き戻される。IRCの通知画面を見たソニックブームはその眉間に浮かべた皺をますます深くした。ピボッ。「ドーモ、ソニックブームです」3コール以内に出る。『ドーモ、アムニジアです』凛とした声が通話機越しにソニックブームの鼓膜に届いた。

『スカウトするよう命じられたニンジャは皆誘いに応じました。報告書を送るので確認をお願いします』「………そうか、ご苦労さん」立て板に水を流すような言葉に彼にしては歯切れの悪い返事を返す。実際のところ、ソニックブームは新しい部下であるアムニジアの対処に困っていた。


アムニジア……真の名をドラゴン・ユカノ……はもともとソウカイヤと敵対していたドラゴンドージョーの一員だ。ブレードブレイカー、ブラインド、チキンハートの三人がヘルカイトと共にドラゴンドージョーを襲撃した際、ラオモトに命じられてその身柄を確保した……のであったが。

捕えられ、トコロザワピラーに連れてこられたユカノは精神的ショック故か記憶を失い曖昧な状態となっていた。この結果にリアルニンジャの秘密を探ろうと目論んでいたラオモト・カンは激怒し、衝動的にユカノを処分しようとした。そこにマッタをかけたのが、かのニンジャサイエンスの第一人者であるマッドサイエンティスト、リー先生である。

リー先生はユカノの失われた記憶、そしてリアルニンジャの孫娘という境遇に強い興味と執着を示し、彼女の助命を嘆願した。その後、ラオモトのニューロンでどのような閃きがあったかは分からぬが、ユカノはアムニジアとしてソウカイニンジャの一員となり、ソニックブームの管轄であるスカウト部門へと回された。

アムニジアの働きは目覚ましく、スカウト、工作活動、斥候、全てにおいてスカウト部門に所属する並大抵のニンジャ以上の成果を出してみせた。まるで精密機械のようなその所作はラオモト・カンの懐刀たるダークニンジャを髣髴とさせるほどだ。そして、なまじ優秀なだけにかえって扱いづらい。

(どこまで信用していいもんか分かりゃあしねえ。いつ記憶が戻るとも知れねえってのによ)実際、ヘルカイトやブレードブレイカーなどは口にこそ出したりはしないが、今すぐにアムニジアを殺すべきだと考えているのが手に取るようにわかる。端的に言ってアムニジアという存在はソウカイヤの中で浮いているのだ。(面倒事を押し付けられたもんだぜ)ソニックブームは心中で愚痴る。

『ソニックブーム=サン、もう一つ相談事が』アムニジアの声に思考を中断させる。「……なんだ」『プロミネンス=サンからニンジャを数名貸してほしいと要望が。輸送新幹線の護衛のためということです』ソニックブームは騒がしい同僚ニンジャの顔を思い浮かべた。ブレードブレイカーとグロウコブラを足して2で割ったような男だ。

「ああ、分かった分かった。手配しておく。テメエもバックアップに回ってやれ」『了解しました、ではシツレイシマス』ピボッ。「フゥー……」通話が途絶え、ソニックブームは中断していた思考を再開させた。

ソニックブームがアムニジアに対して出所の分からない悪臭を嗅がされているかのような、漠然とした不信感を抱いているのは決してその出自だけが原因ではない………それは同じシックスゲイツであるダイダロスからの報告によるところが大きい。(ザイバツのクソ共がドラゴン・ユカノを狙っている、だったか)

先日、極めて強力なハッカーであるダイダロスはブラインドと共にザイバツの電算機室に電子的に侵入し、ザイバツの機密情報を奪取することに成功した。それによると、ザイバツシャドーギルドがネオサイタマに侵攻する理由の一つがドラゴン・ユカノの捜索であるというのだ。だが、それが真実だとすれば疑問が浮かび上がる。

(ドラゴン・ユカノはソウカイヤの手に落ちた。だっつうのにザイバツはソウカイヤとの間に不可侵条約を結び、ネオサイタマから撤退しやがった。目的と行動が矛盾してやがる。一体何故だ?)果たしてザイバツの狙いは何なのか?あるいは単純にユカノがソウカイヤの一員となることを読み切れなかった、ただそれだけの話なのであろうか?

「………チッ、やめだ。考えたってしょうがねえ」ソニックブームはそれ以上考えることを放棄し、頭を掻きながら立ち上がった。いずれにせよ、アムニジアの動向には注意する必要があるだろう。管理を任された以上は手の届く範囲に置いておかねばなるまい。

そこまで考え、背筋の痒くなるような発想がニューロンを過る。「待てよ………そうすっと、オキナワ旅行に行くならあいつも連れて行かなきゃならねえのか?……ハッ」ソニックブームは自分の脳裏に浮かんだ光景にせせら笑った。豊満な美女と一緒にリゾートか。随分と良い身分なものだ。これではチキンハートのことを責められまい。

「休暇中も仕事をしなくちゃいけねえとは何のためのバカンスだかわかりゃしねえな……ま、オキナワにまでザイバツだのアマクダリだののニンジャが来るわけでもねえだろ」バカンスを前に少し浮かれているのか、ソニックブームにしては珍しい冗談めいた言葉で思考を打ち切り、ブリーフィングルームを後にする。

(まずは飛行機とホテルの手配をしなくちゃあな……フッ)その足取りは心なしか軽やかであった。


後書き

ノボリを立てていくスタイル。

ということで左に傾き過ぎたシナリオを右にちょいと傾け直して締めとしました。いや、右に傾いてるかこれ?まあいいや。


ところでまったくの余談なんですがミニシナリオ作成ガイドにあるオプションルール、SYSS(ソウカイヤクザ・スカウトシステム)では【精神力】の値でスカウトを行う訳ですが、そうするとソニックブーム、アムニジア、ダイダロスの中で一番スカウトが上手いのはダイダロスなんですね。アムニジアには『◉変装と勧誘』があるので一概にそうとは言い切れない部分もあるんですが。試しに振ってみましょう。

ソニックブームスカウト:6d6>=5 = (5,4,4,1,1,5 :成功数:2) = 2

アムニジアスカウト難易度-2:4d6>=3 = (5,3,2,1 :成功数:2) = 2

ダイダロススカウト:17d6>=5 = (1,3,1,4,3,4,6,6,2,3,4,5,4,4,2,2,6 :成功数:4) = 4

2、2、7。うーんこのダイス数の暴力。やはり何事も暴力で解決するのが一番ですね。


ダイダロス「あなた、ソウカイヤクザになりませんか?」

ニュービー「アッハイ」

なるほどなるほど。


話を戻して余暇を過ごしたブラインド=サンのステータスはこう!

ニンジャ名:ブラインド
【性別】:女
【カラテ】:4        【体力】:7/7        
【ニューロン】:12     【精神力】:14/12
【ワザマエ】:5       【脚力】:3
【ジツ】:3         【万札】:15
【DKK】:6         【名声】:20

【アイテム】:ウイルス入りフロッピー:
       使用するとそのハッキングの難易度がー1される。使用後ダイスを1個振り、
       出目が3以下だった場合、このアイテムは失われる。
      :オーガニックスシ:【体力】を3回復(使い捨て)
      :トロ粉末:【精神力】を2回復(使い捨て)
      :ZBRアドレナリン注射器:次の手番まで【脚力】+2、行動不能状態にある仲間の蘇生(使い捨て)

【サイバネ】:▶生体LAN端子+【ニューロン】判定時にダイス+2個、ハッキング時にさらに+4個
       ▷無線LAN攻撃用ユニットLAN直結を行うことなく「生体LAN端子」持ちの敵に対し遠隔ハッキング攻撃を仕掛けられる。

【装備品】:スゴイテック社製LAN直結攻撃用ケーブル:『特殊近接武器』、『ダメージ0』、『戦闘スタイル:直結攻撃』
     :パーソナルメンポ:【精神力】+1
     :*キーボード・オブ・ザ・ゴールデン・エイジ*:ハンドヘルド型レリックキーボード。ハッキング絡みの判定時に、ダイスを全て振り直すことができる。
       1回の判定につき1回までしかこの振り直しは行えない。また、任意のダイスだけを振り直すこともできない。シナリオ中1回限りの使用。

【生い立ち】:『ピンハネ』

【スキル】:『時間差』『マルチターゲット』
      ◉『挑発』◉『翻弄』◉『痛覚遮断』

【備考】:アジトに『サイバーカリブー』(『危険生物飼育施設』あり)
     アジトに『プール』(【精神力】+1)

ソウカイヤの女ニンジャ。怠惰で無計画。
アイマスクめいたメンポとジャージめいたニンジャ装束を纏う。

彼女は次の任務で公式でその存在が明らかにされたインパルス=サンと共に行動します!

それではここまで読んで下さってありがとうございました!