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忍殺TRPG小説風リプレイ【ダイブ・トゥ・ディープ・ブルー(その1)】

◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

 今回挑戦させていただいたのはlizardfolkさん作成のシナリオ【テラー・フロム・ディープ・シー】です。詳細は下記の記事をご覧ください!

※なお、リプレイにあたりシナリオの描写を一部改変させていただいております。ご了承ください。

 今回の任務に挑戦するのは彼!

◆サルーテ (種別:ニンジャ)  DKK:3    名声(フリーランス):10
カラテ    5		体力   9
ニューロン  9		精神力  8
ワザマエ   8		脚力   4/H(LAN直結型ハンドガン×2装備時)
ジツ     4		万札   27(ローン12)

攻撃/射撃/機先/電脳  6/15/11/13
回避/精密/側転/発動  10/12/12/13
即応/緊急       3/0

◇装備や特記事項
 所持品 :『ZBRアドレナリン注射器』
 スキル :『●マルチターゲット』『●時間差』『●寡黙(交渉難易度+1)』
      『◉重サイバネ』『◉シャープシューター』『◉ウィークポイント射撃』
      『◉知識:銃器』『◉知識:サイバネティクス』
 ジツ  :『★レッサー・キリングフィールド・ジツ』
 装備  :『LAN直結型ハンドガンx2』
 サイバネ:『▶︎▶︎サイバネアイLV2』『▶︎テッコLV1』『▶︎▶︎クロームハートLV2』『▶︎▶︎生体LAN端子LV2』
      『▷高性能赤外線ターゲッター』『▷内蔵型パルスダガー』
 生い立ち:『○元湾岸警備隊』
◆忍◆
ニンジャ名鑑#---
【サルーテ】
フリーランスの重サイバネニンジャ。元湾岸警備隊。黒い野戦服に身にを包み、ヘルメット、分厚いゴーグル、布製のフェイスマスクによって隠されたその表情は窺い知れない。サルーテとは彼が名乗った名前ではない。
◆殺◆

 ZBRアドレナリンを持っていたのを忘れてたので追記しました。

 それではやっていきたいと思います!

◆本編

 果てしなく広がる海。水平線の上を滑る白い積乱雲。目を刺すような太陽光が空から降り注ぎ、海面を飛び跳ねるオーガニック・マグロの鱗をきらめかせる。広大な海原の中央には豆粒めいた大きさの船が浮かび、水面に1本の船跡を描いている。

 俯瞰する視界を海面へと近付けてよく見れば、ちっぽけに見えた船はサーチライトや銛撃ち砲で武装した大型の中古漁船だ。船体の側面には擦れた『NSTuna49』の文字が錆にまみれ、この船がどれほど過酷な航海を続けてきたか如実に物語っている。

 潮の香りをふんだんに含んだ風がびゅうと音を立てて吹くと、甲板から海面へと垂れる複数の釣り糸が静かに揺れ動き、腹を空かせた海中の魚たちがたまらず糸の先の針に喰らいついた。

「大将!かかったぜ!こっち来てくれ!」甲板に立っていた一人が叫んだ。その手足はひょろりと細長く、釣竿を握る三本の指には鋭い鉤爪。トライアングル状に並んだ三つの目は糸の先と甲板の上とを忙しなく行き来する。この二足歩行の爬虫類めいた異形存在の名前はハイドラ。ヨロシサン製薬の手によって生み出されたバイオニンジャである。

「ハイドラ。大将は兄者と作戦会議中だって言ってたろ」水銀めいた質感の肌とメンポと装束を持つニンジャが網を用意した。彼はディスターブド。「そうだっけ?いや、そうだった。今思い出したぜ。でもそれってあのサイバネ野郎も一緒なんだろ?面白くねえよ」ハイドラは不満げに鼻を鳴らした。「俺達だけでやればいいじゃねえか。なあノトーリアスの兄者?」

「おっかしいなあ。さっきから全然釣れやしねえ。俺のバイオイアイドは無敵なのに」声をかけられたニンジャはそのことに気付いておらず、左右の手に持つそれぞれの釣竿を見比べながら腕を組みつつ首を傾げていた。そう、釣竿を持つ手と、腕を組む手が別々に存在している。このニンジャ、ノトーリアスには腕が4本あるのだ。

「糸が絡まってるせいだと思うぜセンパイ」両腕からブレード状の肘骨が突き出たニンジャ、カマイタチがノトーリアスの釣竿の糸を指でつまみ上げた。海面から引き上げられた糸を確認すればその通り。2本の釣竿から伸びる糸は複雑に絡み合い、針の先に仕掛けてあった餌もいつの間にか食べられてしまっていた。

「なんだそうだったのか!やるじゃねえかカマイタチ!」ノトーリアスは4本の腕で器用に絡まった糸を解いていく。カマイタチはあんまり褒められた気がしなかった。彼は数十分経っても何の反応も見せない自分の釣竿を見て、不機嫌そうに口を尖らせた。「海に潜ったほうが早いんじゃねえか」

「どうだお前ら。釣れてるか?」船室の扉が開き、現れたのは背中にマキモノを背負う小柄なニンジャ。彼の腰には干からびた袋めいたバイオカエルが吊るされており、臍から伸びる管で両者は繋がっている。彼の名前はフロッグマン。「大漁だぜ兄者!見ろよ!俺が釣ったんだ!」ハイドラが今しがた釣れた魚を頭上に掲げて自慢した。

 フロッグマンは甲板に設けられた床下収納スペースめいたイケスを覗き込み、笑みを浮かべた。「よおし上出来だ。こんだけ釣れりゃあ十分だろう」フロッグマンはパンと手を叩き、この場に居るニンジャ達の注目を集めた。「全員聞け!大将から話がある!」

 フロッグマンがそう言うのと同時、今度はジャングルめいた迷彩柄ニンジャ装束に編笠というベトコンめいた出で立ちの男が船室から姿を現した。男は深い隈の染みついた目でバイオニンジャたちの顔を順に見る。「まもなく作戦開始時刻だ。これよりブリーフィングを行う!」

 この男こそはフォレスト・サワタリ。ヨロシサン製薬の末端研究員でありながらニンジャソウル憑依とともにカイシャを自主退職し、研究所内に居たバイオニンジャたちを脱走させ、自由とサヴァイヴのための組織であるサヴァイヴァー・ドージョーを創設した油断ならぬニンジャである。

◆フォレスト・サワタリ (種別:ニンジャ)
カラテ    10  体力   17
ニューロン  7  精神力  13
ワザマエ   11  脚力   6/N
ジツ     5  万札   20

攻撃/射撃/機先/電脳  10/11/7/7
回避/精密/側転/発動  11/11/11/12

◇装備や特記事項	
 マチェーテ二刀流、タケヤリ、サバイバルナイフ、ショートボウなど多数(カタナx2とスリケンとみなす)
 『●連続攻撃2』、『●連射2』、『●時間差』、『●マルチターゲット』、『●弱点:ナム妄想』、
 『◉頑強なる肉体』、『◉不屈の精神』、『★◉即死耐性』、『★◉トラップ設置戦術』

『●弱点:ナム妄想』:
 フォレスト・サワタリは彼自身の精神とグエンニンジャソウルがもたらす狂気にさいなまれている。
 アトモスフィアがハード化した場合、サワタリの回避ダイスは−1個され、
 以降戦闘終了まで1ターンごとに−1個ずつ増えてゆく。
 また上記とは別に、味方のバイオニンジャが一撃で2以上の『火炎ダメージ』を受けて【体力】を失った場合、
 サワタリのナム妄想はナパーム幻覚によって悪化し、サワタリ自身も直ちに【精神力】を1失う。

『★◉トラップ設置戦術』:
 サワタリは『連続側転』によって移動した手番中に、
 「その他の行動」としてトラップ設置を行ってもよい。
 トラップを設置できるのはこの手番中に彼が通過したマスで、
 かつ他のキャラや罠が存在していないマスに限る。
 サワタリは【ワザマエ】判定を『難易度:HARD』で行い、成功した個数までのトラップを設置できる。
 トラップの種類は以下の2種類が存在し、設置時は色分けなどで区別する。
 設置時はこの2種類を自由に混ぜてよいが、同じマスに2種類のトラップを置くことはできない。
 「致命トラップ」:『ダメージ1』、『回避:NORMAL』
 「捕獲トラップ」:『回避ダイスダメージ2』、『回避:NORMAL』
        『ボス級の敵』でない者が捕獲トラップを踏んだ場合、そこで直ちに移動を停止する。
 マップ上に同時に存在できるサワタリのトラップは、最大で合計6個までである。
 トラップは味方には作用せず、手番中にこれらのマス上を移動した敵は、その都度回避を強いられる。
 一度発動したトラップはマップ上から取り除かれる(回避された場合は残り続ける)。

「待ちかねたぜ!俺の無敵のバイオイアイドの出番だな!」「ようやくかよ!遅すぎるんだよな!」ノトーリアスとカマイタチが持っていた釣竿を空目掛けて放り投げた。「「イヤーッ!」」ノトーリアスの二刀流が、カマイタチの肘から飛び出たカマ・ブレードが、3本の釣竿を一瞬で36個の破片に切断した。

「でもよう大将。こんな海のど真ん中に何があるってんだ?」ディスターブドは船の周囲をキョロキョロと見渡す。ネオサイタマの港で奪ったこの船に乗ってからすでに数時間。陸地は既に見えなくなっており、あたりに他の船影も存在していない。たまに飛行機や渡り鳥が空を横断する程度の、静かで平和な海だ。

「そのことについて説明する前に、お前達に改めて紹介しておきたい者がいる…………おい!こっちに来てくれ!」サワタリが呼びかけると、この船に乗っていた最後のニンジャが部屋から出てくる。彼は無言のままサワタリの斜め後ろに立った。

 黒い野戦服、腰にはLAN直結銃の収められたホルスター。その表情はヘルメット、分厚いゴーグル、布製のフェイスマスクで覆われ窺い知ることは出来ない。彼はサヴァイヴァー・ドージョーのニンジャではない。バイオニンジャでもない。そして生身でもない。彼は……全身をサイバネ改造したその男は……サルーテは右手を上げて見事な挙手の敬礼を行った。これが彼のアイサツなのだ。

「今回の任務は海兵隊との協同作戦となる!不慣れな海での作戦となるが、みっともない所を見せるなよ!」サワタリがそう叫ぶも、バイオニンジャたちの反応は冷ややかなものであった。彼らにとっての仲間とは同じバイオニンジャのことであり、例外はサワタリのみだ。

 いくらそのサワタリの決断とはいえ、部隊内に入り込んだ異物を信用することなど簡単には出来はしない。サルーテに対し疑いの眼差しを向ける者、露骨に嫌悪感を見せて拒絶する者、そもそも関心を寄せぬ者……サルーテはそれらすべてを無言で受け入れた。彼の表情は窺い知れない。

「…………では説明を始める!」サワタリは甲板に作戦マキモノを広げる。バイオニンジャたちがその周りに座り込み、サルーテは一歩離れた位置からサイバネアイのズーム機能をオンにしてマキモノを見た。

「偵察情報によると数年前にこのトンキン湾の海上でヨロシサン製薬の過剰積載輸送コンテナ船が爆発事故を起こし、そのまま沈没した。ヨロシサンはこの事故を隠蔽するため当時の記録を改竄・抹消したが、コンテナ船そのものは今も手付かずの状態で海の底に眠っている。当然そこには備蓄された物資、すなわちバイオインゴットもあるということだ!これを我々が徴収する!」サワタリは握った拳を振り上げた。

 ヨロシサン製薬の研究によって生み出されたバイオニンジャたちは定期的にインゴットを摂取しなければ血中成分のバランスが崩れ、いずれは死に至ってしまう。故にサヴァイヴァー・ドージョーのニンジャたちはネオサイタマの各地を転々としつつ、時折ヨロシサン製薬の研究所や社屋に対してインゴット略奪のために襲撃を仕掛けているのだ。

「海の底ォ?なんだ。それじゃあ殺しはなしか」ハイドラが興味を失ったようにマキモノから目を上げた。他のバイオニンジャたちもおおむね同じような反応だ。彼らは本能的に血とイクサを好む存在である。そのように造られたからだ。「無駄口を叩くなハイドラ!ナムでは気を抜いた者から順に屍を晒すことになるぞ!」「海底には潜っていくのか?」とディスターブド。

「サルーテ=サンがこの船に備え付けられたソナーレーダーでここら一帯の海底の地形を調べた。結果、ニンジャならば十分に潜行可能な深さだということが分かった。あとは沈没船の実際の位置を調査し、詳細が判明し次第突入する。今から隊を二つに分けるぞ。一方は海底へ向かい、もう一方はここに残って船の護衛だ」

「だったら俺が海に行く!もう船は飽きちまったよ!」カマイタチがいち早く手を上げた。「おい!新入りのくせに図々しいぞ!センパイに譲れ!」ハイドラが怒鳴った。カマイタチはこの中で一番ドージョーに入って日が浅く、立場も低い。

「俺はどっちでもいいぜ!俺のバイオイアイドは無敵だからな!」「静かにしろテメエら!大将が決めることだ!……で、どうすんだ」フロッグマンがサワタリに尋ねると、バイオニンジャたちも口を閉じて次の言葉を待った。「うむ……」サワタリは暫し考え、やがて決断した。

「カマイタチ=サン。お前は俺と共に沈没船へ向かう。準備をしておけ」「やったぜ!」カマイタチは飛び上がった。「サルーテ=サンも一緒だ。この3人で行動するぞ」「エエーッ!?」カマイタチは嫌そうな顔を作ってサルーテを見た。サルーテの表情は窺い知れない。カマイタチの猫めいた瞳に警戒と不信の色が浮かぶ。

1ノトーリアス2ハイドラ3ディスターブド4カマイタチ:1d4 = (4) = 4
◆カマイタチ (種別:ニンジャ/バイオニンジャ)
カラテ    4  体力   4
ニューロン  4  精神力  4
ワザマエ   9  脚力   4/E
ジツ     0  万札   10

攻撃/射撃/機先/電脳  4/9/4/4
回避/精密/側転/発動  9/9/9/4

◇装備や特記事項
 カマ・ブレードx2
 『●連射2』、『◉トライアングル・リープ』、『◉常人の3倍の脚力』、『◉突撃』

『カマ・ブレードx2』:
 戦闘用バイオサイバネLV1とみなす(ダメージ2)。
 カマイタチに『カマイタチの連続攻撃』と『カマイタチの回転斬撃』の戦闘スタイルをもたらす。

『●戦闘スタイル:カマイタチの連続攻撃』:
 【ワザマエ】で『近接攻撃判定』を行う。『連続攻撃3』となる。
 1発のダメージは2ではなく1となり、『サツバツ!』も『痛打』も発生しない。

『◉戦闘スタイル:カマイタチの回転斬撃』:
 連続攻撃上限1。『痛打』『サツバツ!』発生なし。
 【ワザマエ:HARD】で『発動判定』。隣接している敵全員に1ダメージを与える。
 【6,6】で成功した場合、1ダメージではなく2ダメージを与える。

 「勘弁してくれよ大将。コイツなんだか不気味で嫌なんだよ。一言も喋らねえしさ。誰か変わってくれよ」「黙れカマイタチ。これは既に決定事項である。つまらん私情で隊の規律を乱すな」サワタリはぴしゃりと言った。

「残りの者は船に残り、海賊船やバイオ生物から船を守れ!指揮はフロッグマンに任せる!話は以上だ。作戦開始時刻まで解散!……サルーテ=サン。引き続きソナーのチェックを頼む」サルーテは敬礼を返し、船室へと戻って行った。

「頑張れよ新入り」ハイドラがからかうように笑いながらカマイタチの肩に手を置いた。「頑張れよ!」ノトーリアスも反対の肩に右上腕の手を置いた。「頑張れよ」ディスターブドが流れに乗った。カマイタチはフロッグマンを見る。フロッグマンは肩をすくめた。「……あんまりウザかったら殺せばいっか」カマイタチは前向きに考えた。


「…………で、実際どうなんだ。大将」フロッグマンは他の誰にも聞こえないような声でサワタリに尋ねた。「どう、とは?」「あのサイバネ野郎のことに決まってんだろ。信用出来んのか」「……」サワタリとフロッグマンの厳つい視線がぶつかった。

「あいつのせいでドージョーがピリピリしてるぜ。だから隊を分けて新入りのカマイタチと組ませたんだろうが、大丈夫なのか」「フロッグマン、我々の、サヴァイヴァー・ドージョーの目的は何だ」ふいにサワタリが言った。

「自由、そしてサヴァイヴだ。俺達はこのナムの地獄で泥水を啜ってでも生き残らなければならん」「そのために必要なこと、だってのか?」「戦場の状況は常に変化する。それに対応できぬような者にベトコンどもは慈悲を見せてはくれんのだ」サワタリの目に狂気の熱が渦巻いた。サワタリはそれ以上何も言わず、イケスの中の魚を網で掬って手に取った。

「スシの用意をしてくる」厨房へと向かうサワタリの背中をフロッグマンは見送り、海へと目をやった。「これきりにしてもらいたいもんだぜ……できるならな」そう呟くフロッグマンの視線の先、不吉の前兆めいてバイオシャークが水面を飛び跳ね、低空を飛んでいたバイオカモメを捕食した。

サルーテ船の運転判定:12d6>=5 = (4,3,5,1,3,2,6,6,5,1,3,4 :成功数:4) = 4
サワタリ調査判定:7d6>=5 = (4,2,5,4,4,3,3 :成功数:1) = 1

◆◆◆

 ゴボゴボゴボ…………ブリーフィングから更に数十分後、サワタリ、カマイタチ、サルーテの3人は縦一列となって海の底へ向かい泳ぎ進んでいた。

 サワタリとカマイタチのニンジャ視力、そしてサルーテのサイバネアイは海底に横たわるクジラの死体めいた沈没船を既に捉えている。船体に刻まれた識別用バーコードと製造番号、ミンチョ体の『ヨロシサン』の文字、そして沈没船の周囲に浮かぶ大量の白骨死体も。

 サルーテはソナーレーダーを使用し、事前情報通りの沈没船を発見することに成功していた。そもそもサワタリがドージョー外部の人間に協力を求めた理由のひとつが船の操縦とソナーの操作に不安があるためであった。ニンジャ学習力とニンジャ器用さがあるとはいえ、元は研究員でしかないサワタリにとって船も海も専門外だ。

 そんなサワタリがネオサイタマ下水道で知り合ったサルーテはどこの組織にも所属していないフリーランスのニンジャであり、もともとは湾岸警備隊に所属していたこともあって、今回の作戦にはうってつけの人材であった。

 サワタリがサルーテに協力を打診したところ、彼はいくらかのカネとある条件を引き換えに快く――ナム妄想に憑りつかれたサワタリと口を利かないサルーテのやり取りがどのような方法で行われたのかは不明であるが――協力することを受け入れた。

 先頭を泳ぐサワタリが後続の2人に対し、事前に決めていたハンドサインを送る。続いて、サワタリは船尾の朽ちかけた外壁を指差した。((イヤーッ!))3人のニンジャは外壁に手をかけて強引にこじ開け、人ひとり通れるほどの穴を作った。(ムーブ、ムーブ!)彼らはその穴へと飛び込んでいく。


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◉水中マスでの効果まとめ
・あらゆる行動難易度+1(回避含む)
・1マス移動するために【脚力】の値が2必要になる。
・『●連続側転』不可。
・水中で『拘束状態』より重い状態異常になった場合、そのまま溺れ始めて各手番開始時に【体力】に軽減不能な1ダメージを受ける。
・カトン系のジツは発動難易度が+2(NORMALのジツはU-HARDになる)される。
・遠隔攻撃に有効な『ダメージ軽減1』を得る。
※描写にはありませんが、このMAPでは3人とも以下のレリックを常に装備しているものとして扱います。
ダイビングスーツ:レリック枠に装備。水中行動での不利な効果を受けなくなるが、水陸のどちらでも『回避難易度+1』を受ける。

◆玄関ホール

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 ひんやりとした空気が3人を出迎えた。壁には一定の間隔で非常用LEDボンボリがかけられており、暗闇にヨロシグリーン色の光を灯らせている。いや、待て。空気?空気だと?ましてや、LEDボンボリに光?

「どういうことだ。数年前に沈んだはずの船に何故清浄な酸素が……それに電気系統も生きているのか?」サワタリはタケヤリを構え、あたりを警戒した。「大将、これ見てくれよ」その時、カマイタチが何かを発見した。それは壁に埋め込まれた文字看板だ。いくつかの文字は朽ち果てているが、辛うじて『ヨ シサ   海  物研 所』と読み取れた。

「これは」サワタリは静かに驚き、喉を唸らせた。彼のニンジャ聴力がどこかの部屋に設置された大型モーターの駆動音を捉える。おそらく空気清浄装置と発電装置だ。サワタリはこれらの事実と推理力によって、隠蔽されていた真実を知った。この船はコンテナ輸送船などではない。輸送船に偽装したヨロシサンの海洋生物研究所だ!

「2人とも注意せよ。状況が変わった。ベトコン共が仕掛けたネギトロ・グラインダーや毒ガスマネキネコなどのトラップがあるやもしれん」暗黒メガコーポの研究施設ともなればそのセキュリティ強度はただの輸送船の比ではあるまい。サワタリは卓越したニンジャ野伏力を発揮し、奥へと慎重に歩を進める。その時である。

『ガガ……DNAスキャン……データ照合……ゲスト承認……ウコソいらっしゃいましたドスエ。ここでは……が主な研究……し……明日もヨロシサン……』人感センサーが反応したのか、異様に明るい合成マイコ音声が途切れ途切れにアイサツした。マイコ音声はさらに続く。

『ガガ……DNAスキャン……データ照合……ヨロシDNA感知……データベース照合……本社データベースアクセス不可……エラー……エラー……』「うるせえな。これ、俺に向かって言ってんのか?」カマイタチはカマ・ブレードでセンサーとスピーカーを切断破壊しようとした。だが、マイコ音声はまだ続く。

『ガガ……DNAスキャン……データ照合……ヨロシDNA感知……データベース照合……社員認証……健康状態スキャン。心拍……脈拍……体温……正常……問題無しな……今日もガンバロ……明日もヨロシサン……』「イヤーッ!」サワタリはタケヤリを投擲し、スピーカーを破壊した。

 サワタリはきょとんとするカマイタチに構わず、隣の部屋に続く自動フスマドアを蹴り破り、クリアリングを行う。サルーテは無言のままである。その表情は窺い知れない。「いくぞお前達。これよりサヴァイヴァー・ドージョーと海兵隊との協同作戦を開始する!」サワタリの号令が轟き、僅かに残っていたマイコ音声の残響を掻き消した。

ダイブ・トゥ・ディープ・ブルー(その2)へ続く