暑い日が続く。そんな日は暑い夏の詩を書く。

窓を開ける
 
私の家は高台にある
窓を開けると雲が話しかけて来る
空が青の波紋を部屋中にまき散らす
その中で ときどき溺れたりする
窓の外には小さな森がある
紅葉の森と呼んでいる
今は 蝉の鳴き声がしているが
転げ落ちると あっという間に亡骸になる
その魂の無い亡骸を
蟻が小さく切り刻む
無駄になるものは一つもないように
 
一センチの段差に躓くものが
今年の暑さに躓かない筈はない
友人のA君は
昨年の夏から居住地を天上に変えた
住所は無いし 表札も無いから
遊びに来ても分からないという
高所恐怖症のK君には
この高さは無理だけどねと
ときどき笑いながら話しかけて来る
窓を背中にぼんやりしている
 
窓を開けると
当たり前の顔をして風が入って来る
朝に一度挨拶するだけだ
何となく郵便ポストが気になる時がある
土曜日と日曜日は
朝刊二紙をとると何にもない
たった二日だが断捨離した気持ちになるが
何となく虚しさを感じる
50キロ離れた
いちえふの廃炉の新聞記事を傍に置いて
長いようで短い一日が始まる
 

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