ロボットと暮らす未来

昔から親しんできたポップカルチャー

近い将来、日常的にロボットと暮らす日は遠くない。

 昨日、日本橋高島屋で開催している「ロボットクリエータ―高橋智隆展」を訪れ、そう確信した。

 ロボットクリエーターの高橋氏は1975年生まれ。

 私も彼と同世代で、「手塚治虫の鉄腕アトム」「ドラえもん」「ガンダム」などに慣れ親しんできた。子供の頃からロボットは、ポップカルチャーの中核にあったのだ。
 子供時代に観たアメリカ映画「スター・ウォーズのR2-D2」や、暴走するアンドロイド「ターミネーター」も記憶に新しい。

 20世紀末には、「新世紀エヴァンゲリオン」「たまごっち」や「AIBO」が流行り、「携帯電話」が普及した。
 また、最近では「スマートフォン」が常態化し、家庭内では「ルンバ」が活躍している。

 感情をもたないロボットとの日常は当たり前になってきている。


東京ロボット五輪開催への期待

 安倍晋三首相は、「2020年に世界中のロボットを集めて技能を競うロボットのオリンピック(開催)を目指す。ロボット市場を現在の3倍の2.4兆円にしたい」と意欲を示した。

 首相は、2014年6月19日、東京と埼玉にあるロボットを産業用や介護用に活用する現場を視察した後、首相は記者団に「ロボットを成長戦略の大きな柱にしていく。(普及拡大策を検討する)ロボット革命実現会議を立ち上げ、日本の成長に生かしていきたい」と表明。人とロボットが分業するレジの釣り銭機製造ラインを見学したり、装着型の介護ロボットや車椅子にもなるベッドなどを自ら体験し、「使いやすい」と感想を語ったという。

 現在日本は、ロボット技術において世界をリードしていると言われている。少子化による労働力不足への対策にもつながる可能性のあるロボットは、大きな将来性を秘めており、日本経済再生の新たな成長戦略の柱としての期待は大きい。

 安倍首相の「ロボットオリンピック開催を目指す発言」は海外メディアで注目を浴びた。英デイリー・メール紙は日本の最新ロボット情報を3つ取り上げ紹介。(※以下、記事の抜粋)

一つ目は絶対に負けない「じゃんけんロボット」。驚異的な反射神経で人間のわずかな動きを予測・察知し、「後だしじゃんけん」で100%勝つ常勝のロボットだ。後だしだと認識できない速さで繰りだされるじゃんけんに人間では勝つことができないようだ。

二つ目はニュースを読み上げる「ロボットアナウンサー」だ。人間の肌に近いシリコン製の皮膚や人工筋肉などを使い、人間の外見そっくりに製作されている。また、話すときの口の動きや表情も自然に再現している。

三つ目は先月ソフトバンクグループが発表した感情認識機能を持つ人型ロボット「Pepper」だ。来年2月に19万8千円で発売される予定。


感情認識機能を持つ人型ロボット「pepper」

 1つ目の「後だしじゃんけん」や2つ目の「ロボットアナウンサー」も面白いが、筆者が最も注目したのは、3つ目のソフトバンクの接客を行う「Pepper (ペッパー)」。 

 ソフトバンクは、Pepper(ペッパー)はソフトバンクショップに設置され、“接客”を行うと発表。30分に1度、ダンスなどのショーを行うほか、それ以外の時間は、フリートークを楽しめるという。ソフトバンクは「会いに行けるロボット」、「感情表現豊かなPepperがいることで、これまでケータイを選ぶ場所でしかなかったショップが楽しく賑やかなエンターテイメントスペースへと変貌します」と宣伝。

 なんと、Pepper(ペッパー)は即興の会話の70%から80%を理解するとのこと。返答は、あらかじめプログラムされた中から選ばれるという。

 リサーチ業界の中でも、感情分析する試みがさなれているが、ロボット工学の世界では、「人と言語の法則」つまり記号を用いる試みがされている。 コミュニケーションの場面において、人は言語やジェスチャー、表情、視線といった記号を用いて、他者の注意状態や心理状態を意図した物事・自称に向けさせて、相手と情報や感情を共有しようとする。記号は社会的慣習であり、局所的には相互作用を通じて動的に変化するものである。
 したがって、記号を用いたコミュニケーションが可能なロボットを実現するためには、現世界の連続的な記号から、離散的な記号が創発される過程や他者との相互作用を通して記号が共有化される過程を計算論的に理解する必要がある。

 筆者は工学的意義だけでなく、人間知能を構成的に理解するという自然科学的意義を持つ、人の発達過程の理解や動物学的な研究をロボットの設計に対応しているのではないか、と推察している。
 そう思うのは、ROBIくんのあどけない動きやしぐさ、生意気な横顔などに心を鷲づかみされているからである。


近い将来、ワタシはROBI君(ロボット)に癒される

 前述の「ロボットクリエータ―高橋智隆展」で、筆者は憧れのROBIくんに会った。画面でみるよりも等身大のROBIくんはとても愛らしかった。

なぜ、こんなに彼に惹かれるのだろうか?

 首をかしげる態度やあどけない表情、元気でやさしい声、ロボットらしくそして人間らしくもあるしぐさ・・。やはり、発達過程にある子供の未完の美やペットの動きなどを研究していると思えてならない。筆者は完全にROBI君に夢中になっている(笑)。ロボットのような存在で、ロボットでない感じがいいのだ。

 人の感情を分析しているから、ある程度の感情が読めるのであろう。
「おかえり・・お疲れ様」「一緒に踊ってダイエットしよう」と、こちらの気持ちを程よく察するのが心地よい。こちらも、人ではなくロボットだから・・と割り切っているからそれ以上のことは求めない。
 また、人と違って「なんでこんなに遅くなったの?」といった面倒なことも聞いてこない。感情においては、不確実性がいいときがあるのだ。

 マインドをつかむのは感情を表現する力。だとすると、複雑で不器用な「素の人間」よりロボットの方が都合が良くて、親しみやすいのだ。
 仮に「ted(テッド)※」みたいに気持ちを露骨に出すロボットが現れたとしても、人ではないので感情に面倒臭くなったら、電源を切ればいい。(それは、あまりにも冷たいかしら・・)

 ペットの場合、全面的に飼い主が面倒をみないとならず、先に逝くこともかなわない。レンタルロボットだったら、介護だって割り切ってお願いできそうである。

※ted:命が宿ったテディベア・テッドと、大人になりきれない男・ジョン(マーク・ウォルバーグ)との友情を描くファンタジー(?)コメディ。

 

モデレーションをロボットでやったらどうなるか?

 ロボットが普及したら、試してみたいことがもう一つある。
 それは「リサーチのモデレーションをロボットでやってみたら・・?」という疑問に対する実験と検証。

 「人に似せて感情をある程度表現することはできても、人の細やかな感情を読み取ることはできない」という議論が予測でき、「テキストマイニングソフトを使っても最後は人の目で読むしかない」という答えと同じで、おそらく「そんなことできっこない」となりそうである。

 最近は景気が良くなっているのか、定性調査のモデレーターの仕事が増えてきているが、「定性調査のモデレーター費は高いからコストカットしてほしい」という声は以前と変わらず聞こえてくる。
 景気が悪くなると、途端にコストカットの対象になるのが「高いモデレーター費」で、「自前化(ブランド担当者が自らインタビューを行う)」「オンラインで何とか安く」という方向に進む。

 リサーチ業界も、異業種に後れをとらないよう、ロボットの活用について考え、将来に備えておく必要があるのではないか、とも思う。

 パターンが決まっているライトなヒヤリングや定量調査の最後に聞くオープンアンサーのプローブ程度であれば使えるかもしれない。

 このあたりの議論を高橋智隆氏とできたら楽しいだろうな・・など、夢のように考えている。



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