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ナイツテイル 独り言

私は原作についてはざっくりストーリーを知ってる程度なのであしからず。

冒頭に「互いなしでは生きられない愛」ってセリフがあるんですよね。一言一句あってるかは自信がないですが意味合いとしては同じだと思います。たぶんこれは物語の主題の一つだと思うんですけど、面白いのがこのセリフを体現してるのが女性陣だという所なんですよ。

戦利品として王妃になる為に連れてこられたヒポリタは故郷の妹達を思い、パラモンとアーサイトが恋に落ちたエミーリアは幼なじみのフラヴィーナを思っている。ただ唯一フラヴィーナだけはエミーリアを思いながらも、パラモンへの恋心が大きいように見えます。ただそれはフラヴィーナの幼さ故というか若さがあるというか…彼女は幼いからこそパラモンが自分を捨てて逃げたと知った時に正気を失えたんだと思うんです。歳をとるとそんな事では正気は失えない。命までかけた男が自分を捨てて逃げたからって正気は失うわけにはいかない。泣いて喚いて、それでも頭のどこかでこれからどうしたらいいかを考えるようになるのが歳をとるってことのように思います。ただだからこそ、フラヴィーナの純粋な恋心には心を打たれるものがあると言えるんですが。

話を戻します。ナイツテイルは恋物語であるにも関わらず「互いなしでは生きられない愛」、お互いを魂の片割れというような愛を、女性達は恋人や夫ではなく家族と友人に見出しているという点が大変面白く私の中に疑問を持たせるんですよね。もちろんエミーリアはアーサイトに恋をし、ヒポリタは王への愛を(終盤では)抱いているのでしょうが「互いなしでは生きられない愛」と呼ぶには弱い。なぜなのか。

彼女達がエミーリアの為に決闘しようとする2人とそれを認める王を「意地とプライドに支配されている」と嘆く場面があります。この場面を思い出して思ったのは、彼女達は男達の愛を信じていないのではないかということです。彼らが闘うのは己の意地とプライドの為であって、自分への愛ではないと思っているのではないか。いや、そこまでではなくとも恋が刹那的のものだと彼女達は知っているのではないか。だからこそ真実の愛を家族や友人との中に求めているのではないか。いつか恋心が冷めても彼女達の中には愛を失わないという強さが見えます。

そしてこの愛はアーサイトとパラモンの間にも感じられるのですが、それにお互いが気付くのがラストという点がまた面白い。男達は全体を通して愛に鈍い。意地を張り合いプライドを掲げ、最後の最後に女性達と女神の手を借りて愛に救われる。

正直なぜエミーリアがアーサイトを好きになったのかよく分からないところがあったのですが、そんなことに命をかける男達の愚かさを愛しいと感じるのかなとも思いました。あとはまあ、顔か。顔は強いですからね、どんな欠点も可愛いく魅せてしまえるくらいには。

私には自分達への男達の恋心を利用してでも愛を守ろうとする女性達の強かさと凛とした美しさがとても好きで、この舞台の中でも一番魅力的なものに見えました。

そんな男性と女性を軍神マルスと知恵の女神という対比で表し、愛と知恵の勝利ともいうべきアテナへの賛歌でラストを迎える。これほどナイツテイルを興味深く描いたジョン・ケアードという方はやはり素晴らしい脚本家なんだろうと思います。俄然他の舞台にも興味が湧いてきました。新しいものを知ることができるのは本当に幸せなことですね。ありがとう、光一さん、ありがとう、ナイツテイル。

特に着地点があるわけではないんですが、今日グルグルとずっとこの事について考えていたので吐き出せて満足です。もう一度観劇する予定なので、その時にはまた感想も変わるかな。追記したり書き換えたりするかもしれません。

まあ、あれだね、古今東西騎士というものはくだらないものに命をかける生き物なんですよ。

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