見出し画像

ゴエへ

ゴエよ。
早いもので、オマエがウチに来てからもう3ヶ月になるのかの。
5月の8日、別に猫を買いに行こうとは当方もヨメさんも全然思うとらんかった。よく晴れた日じゃった。
二人とも、ただ「和風釜茹でパスタの店 五右衛門」に行こうと思っただけじゃったよ。その途中に「猫あげます」の看板を見た、それが運の尽きであった。

オマエと兄弟と全部で6匹おった。可愛いなと抱いてみたら元の飼い主さんが「そいつは偉くヤンチャで暴れん坊で、大人しく抱かっているのは珍しい」と言った。それがお前じゃったの。ヨメさんはもうミケマサに夢中であった。

パスタ食いながら、2人してもうお前らの名前を考えておったよ。

あの日はあれから大変じゃった。川の向こうのホームセンターまで自転車を飛ばして、ケージを買ってきて…その後お前らの病院、餌、砂の運搬のために電動アシスト3輪車まで買った。医者にもかかったし保険にも入ったナ。全く、貰うのはタダでも世話はタダとは言えぬワイ。押し付けがましい?まあそう言うな。まだまだこんなものじゃないぞ。

オマエらのせいで、すっかり家の様子も変わってしもうたよ。障子はみんな簾になった。ケーブルは無理くりに収納され、画材にも全部蓋がされた。それに毎日4時起きじゃないか。自分より先にオノレらにメシ出しているのだぞ。ここまでやっているのだから、当方がアナログマンガ描いてる時くらい部屋から追い出されてもそうヘソを曲げるでない。

それにしても俊敏な妹ミケマサに比べオマエは鈍である。走れば柱にぶつかり、飛べば降りられなくなり、潜れば出られなくなる。その上ビビりであるナ。花火にも雷にもビビって、押入れに逃げ込んだの。兄貴のくせにちと情けないとは思わんか。…兄とか男とか、今はそういう時代じゃない?まあ確かにのう。当方、オマエに男らしさを強要は出来んよ。

これはずっと心に引っかかっておるが、去勢手術を受けさせてしまったんだからね。そりゃ当方にもいくらか言い分はある。でも全部こっちの都合だ。せっかく五体満足に生まれたオマエのタマを取ってしまって…これは本当にスマンと思うておるよ。こんな奴に男だなんだと言われたくはあるまいの。
これには結論はつけず、死ぬまで…当方かオマエかどっちが先か知らんがね、悩んでいこうと思うとるよ。

いや今日はそんな湿っぽい話をしたいんじゃなかった。

オマエ、歯が抜けたろう。

掃除の時見つけたんじゃよ。上の歯かの。当方は目が悪いもんで、今までも見落としがあったかもしれんナ。オマエも大人になっていくんじゃのう。

当方はこの歯が、トイレの砂と髪の毛とホコリにまみれたこの歯がね、なんだか捨てがたく思えたのよ。

ヨメさんに聞いたらナ、簡単な道具で腐敗も乾燥もせずに綺麗に取っておけるという。当方は午前中の雨をついて材料を買いに行ったナ。午後まで待てばピーカンだったのに、バカな真似をした…モノは「レジン液」。ん?むろん100円ショップじゃ、なにか文句があるかね?

初めてじゃで、不器用だし気泡も出来てしまったがね。でもホレ、なかなかいい出来じゃないかね。

次はもっと上手く作るから、抜けたら教えなさい。飲み込んだりしないように。

この第1作は当方の登山バッグにつけておくからの。


…ああ、言い忘れた。
オマエの名前は、その日食べに行ったパスタ屋から貰ったんじゃよ。ゴエモン。






(…お粗末さまでしたm(_ _)m)

たくさんのサポートを戴いており、イラストももう一通り送ったような気がするので…どんなお礼がいいですかねえ?考え中(._.)