多羽(オオバ)くんへの手紙─31
(1,224字)
狭い地元だ。そこらですぐ会うだろうと思っていたが案外会わないものだ。
むしろ電車通学をしている者同士が駅で顔を合わせることの方が多かった。
電車通学の朝は早く、帰りも地元の高校生とは時間がずれている。
1日のほとんどを地元以外で過ごしているのだ。
中学の延長のような多羽たちと偶然会うはずもなかった。
電車に揺られながら、ユーミンの「卒業写真」が頭の中で流れているようなセンチメンタルな時期もあったけれど、新しい環境に慣れることに精一杯な日々、それが日常にな