終演

作:フクダチナツ

いつのまにか朝になるような毎日も
増えていく約束も
君が作り出すフィクションだってこと
気づいてたよ

今日で終わりだね

君が嫌ってた
涙を誘うような
終わりを演出しよう
さあ、第3章の5分前
チャイムが鳴って
幕が上がった

勝手に始まった2人のお芝居は
今日が千秋楽だ
勝手に終わってくよ
小道具はみんな片付けておくから
早く帰りなよ
カーテンコールはないからね
お疲れ様、バイバイ

期待するだけ無駄だった
それでもまだ期待してたかった
合わない価値観を
埋められるほどの愛で満ちていたかったな
痛かったな

勝手に始まった2人のお芝居は
いつまでも続いたりしないんだよ
上げた幕はいつか下ろさなきゃ
いけないんだ

あーあ。

君が使ってた歯ブラシだって
お風呂掃除に使う準備はできてるよ
これから掃除するからさ
カーテンコールもないからさ
もう帰っていいんだよ
もう終わりでいいんだよ

ありがとうね、主役になってくれて
ありがとうね、ヒロインにしてくれて
バイバイ

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「始まったらいつか終わるなら始めなきゃいい」

この言葉にわたしは未だ呪われている。
好きだった男の言葉。あの時の話の流れは覚えてないくせにこの一文だけは強烈に焼きついた。
好きになっちゃいけないな、終わらせちゃいけないなと思った。思っていたはずだった。はずだったんだよな。わたしが勝手に好きになって幕が上がって、そんなに上手く演じることもできず、彼によって幕が下ろされた。

…この男!!!!
この男にはたくさんの呪いをかけられています。自分というものの曖昧さ、愛とは?みたいなことに悩みまくった10代最後と20代最初のほとんどの時間を共に過ごしたのでね!ええ!
「たしかに始まらなきゃ終わることってないよなあ〜。わかるわかる。」そう思ったわたし19歳のわたし!!!!!愚かですこと!!!!!!!

終演の中では、主人公の女の子が幕を下げる側の人間だからいつも歌ってて羨ましくなってしまいます。
わたしは幕を下ろされた側の人間なのでね。ええ。どうせなら主導権を握る監督のような立場でありたかったですね。残念。

「期待は痛い」といつも思います。
勝手に期待して傷ついて裏切られた〜ってなっちゃうの、なんて自分勝手なんだろうと思ってしまいます。自分の機嫌を取ることができるのは結局自分しかいないのにね。
しかも好きな人への期待なんてなおさら、一回欲が出てしまうともうあとはドバドバ。
「期待は痛い、だからしない」といつも思ってるはずなんですけどね。すぐ期待しちゃう。なんだこれ?
口約束が増えていくにつれて、どんどん期待も大きくなっちゃいますね。まだあの約束も叶ってないのに終わるわけないよな?って未来に期待しちゃう。
おばかですね。

それと、
恋愛ってなんだか演劇みたいじゃないですか?
好きな人の前で猫をかぶるタイプの人間と敢えて素を出していくタイプの人間がいるように思うんですけど、わたしは前者です。それって言い方を変えれば演技…相手ももしかしたら猫かぶってんのかも知れないし、自分の前で見せてる姿は仮の姿なのかも知れない…と思ったらもう恐ろしいですよね。
「君が作り出すフィクション」
という歌詞はそういう意味を含んでます。


でも所詮は劇なわけです。幕が下ろされたとしても、いつか自分も相手もそれぞれ、また新しい主人公やヒロインを迎えて幕が上がるんでしょうね。


いやー悲しい悲しい!
今現在恋人がいる皆さん、終演が訪れないように頑張りましょう…!

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