騎手を「批判する」ことについて

こんにちは。バーチャルサラブレッドのリュウタロウです。

この記事は「リュウタロウ活動記録(2021年9月)」の付録記事みたいなものです。ぜひ本編の方もチェックしていただけると嬉しいです。

今回の内容はタイトルにある通りです。かなり真面目な内容となっていますが、1意見として捉えていただけるとありがたいです。

あくまでも「自分の考え方を書き記す」のが目的であって、「誰かにわかってほしい」「皆にもこうしてほしい」という意図は一切ありません。(というかそれは無理に等しいので)

なのでこの件について肯定的な意見も否定的な意見も私は求めていません。馬の独り言としてスルーしてください。


この記事を書いた動機

まずこの記事を書いた動機をお話します。

先日、私がすごく応援しているサラブレッドクラブラフィアンの所属馬マイネルファンロンが新潟記念を制しました。

非常に嬉しい出来事だったのですが、その後のアレコレで少し複雑な気持ちになりました。その発端がこちらです。

1着になったマイネルファンロンとミルコ・デムーロ騎手に対して手塚調教師が「勝因はジョッキー」とコメントしました。このコメントについては何も問題ないのですが、このツイートに対する引用リツイートで

ラフィアンは柴田大知と丹内を降ろせ
柴田大知と丹内は下手!言われてるぞ!

原文ママではありませんがこのような趣旨のツイートが多く見られました。

※もちろん手塚調教師の「勝因はジョッキー」発言の真意を分かった上でツイートされている方もいます。

このように、手塚調教師のコメントの真意を理解せず「誰かを叩いていい」という大義名分を得たかのように一部の騎手に対して誹謗中傷とも取れるような発言をしていた人たちを見て、大好きなクラブの馬が重賞を勝ったのに大好きな騎手たちが叩かれるという意味の分からない構図が生まれて素直に喜べなくなってしまいました。

この件は心の中に留めておこうと思ったのですが、文字に起こすことで自分の気持ちの整理ができると思い、この記事を書き始めました。


「勝因はジョッキー」の真意

まずはこの記事作成の動機となった「勝因はジョッキー」発言の真意をご説明します。

ただし、これについてはここまでの流れや陣営のコメントを総合的に判断した私の考察なので、確定情報ではありません。その点だけはご理解ください。

とはいえ引用リツイートしている多くの人が勘違いしていた「勝因はジョッキー」=「柴田大知騎手&丹内騎手に対する嫌味」ではないということは間違っていないと思います。

結論から言うと「勝因はジョッキー」発言の真意は

①単純にデムーロ騎手を褒めている
②嫌味を言っているとしたら秋山稔樹騎手に対して

のどちらかだと思っています。①はそのままでわかりやすいですね。マイネルファンロンがあそこまでの末脚を使えるとは私も思っていなかったので、コースの特徴を理解した上で馬の新しい力を見出したデムーロ騎手の超神騎乗だったと思います。そりゃ「勝因はジョッキー」と褒めたくもなります。

問題は②の方です。もし「勝因はジョッキー」発言に嫌味が入っているとしたら秋山稔樹騎手に対してだと思います。

そもそも冷静に考えて欲しいのですが

丹内祐次騎手→マイネルファンロンに乗って2019年の函館記念で2着&最直近の騎乗だった前々走の巴賞では7番人気で2着と好走
柴田大知騎手→2020年以降、マイネルファンロンには2回しか騎乗していない(新潟記念までマイネルファンロンは2020年以降10回走っている)&そのうち1回(2020年オクトーバーS)では12番人気で4着という成績

「最直近の騎乗で好騎乗を見せた丹内騎手」と「最近はマイネルファンロンにあまり乗っていない柴田大知騎手」を今回の新潟記念でマイネルファンロンに乗っていないのに手塚調教師が叩くと思っているんですか?という話です。

もしそうであるなら手塚調教師はだいぶ性格が悪いことになるので、「勝因はジョッキー」発言を受けて「手塚調教師が言ってる」と大義名分を得たかのように嬉々として丹内騎手と柴田大知騎手を叩いている人は手塚調教師に対してもだいぶ失礼な発言をしていることをご理解いただきたい。

※「そんなことわかってるに決まってるだろ!」と理解した上で叩いている方はそれはそれで最低なので関わりたくないですね。

話を戻して、秋山稔樹騎手は新潟記念の前走である函館記念に騎乗し、7番人気14着という結果でした。以下はラフィアンのHPで見れる近況コメントに載っていたコメントです。

※直近4回分のコメントしか見れないので、今マイネルファンロンのページに行っても見ることはできません。

手塚調教師「途中からハミをガッツリ噛んでしまいました。ちぐはぐなレースになって申し訳ありません。騎手にはビデオも見てもらうようにして、稽古でも頻繁に乗ってもらい、途中から行きたがる、難しい面があることを伝えて把握してもらっていたのですが。にもかかわらず、今日は最初から促していきましたからね。状態が良いだけに、これではハミを噛むと抑えるのは難しくなります。少しでも良い位置をとりたい、という想いが空回りしてしまったのでしょうか。この後は、一度、明和へ出させてもらいます。そのうえであらためて今後の予定を検討していきます」

「~ですが」「にもかかわらず」「最初から促していきましたからね」というコメントからもわかる通り、結構怒っているようにも見えます。

実際函館記念にはマイネルファンロン以外にもマイネルウィルトスというラフィアンの馬も出ていて、人気はウィルトスの方が勝っていましたが、調教の動きなどの状態面は完全にマイネルファンロンの方が上だったようにも思えました。手塚調教師もその状態の良さからかなり期待していたのかもしれません。それを予想外の騎乗で無駄にされてしまったとも言えるかもしれません。

なので、「勝因はジョッキー」という言葉は単純にデムーロ騎手に対する褒め言葉であったとは思うのですが、函館記念でのいわゆる「騎乗ミス」があったからこそ出てきた言葉でもあると私は思います。


騎手批判は「あってもいい」

さてここからが本題の「騎手批判」についてです。

私のスタンスを示しておくと「騎手批判はあってもいい」と思っています。

よく「素人が騎手に対してよくそんな偉そうなことを言えるな」という「騎手批判否定派」の方もよく見かけます。

めちゃくちゃ理解できますが、それもそれで何か違うように思えます。

「騎手批判肯定派」の言い分として「プロなんだから批判されて当たり前」というものがあります。確かにそれを仕事としてお金を稼いでいる以上批判が来てもしょうがないと思います。

ただ、「プロなんだから批判されて当たり前」と言っている人は大抵「批判」をしていないイメージがあります。ただの誹謗中傷です。馬の敗因を「騎手が下手」という抽象的な言葉で片づけて騎手に対して暴言を吐いているだけです。

※話は若干それますが「下手くそ!金返せ!」って言っている人を見る度に「そんなに金を返して欲しいなら『あの騎手が乗っている馬に賭けたが酷い騎乗をされて負けた。金を返して欲しい』とJRAに問い合わせてみればいいのに…」って思うのはリュウタロウだけですかね…?だってお金の行き先は「騎手」じゃなくて「JRA」ですから。そうすれば自分がどんなに惨めな発言をしているかが実感できると思うんですが…_(┐「ε:)_

重要なのは「騎手批判は『あってもいい』」ということです。「してもいい」ではありません。「騎手批判」っぽい発言の多くは「誹謗中傷」であったり「抽象的すぎて幼稚な負け惜しみ」にしか見えないので、「騎手批判を『してもいい』」と言ってしまうと「誹謗中傷」の方が加速してしまう気がしています。ちゃんとした「批判」だったらあってもいいと私は思うのです。


騎手批判の条件

ここからは私が考える騎手批判の条件を述べていきます。

①発言者が「騎手」を予想のファクターとして取り入れている
②その騎手が「どういう騎乗をするか」が論理的に予測されていた上で予想外の騎乗をされた
③暴言を使わない

これが必須条件だと思います。

まず①について

そもそも「騎手」を予想のファクターとして使っている場合じゃないと「騎手批判」は成り立たないと思っています。そうじゃなければただの八つ当たりです。

例えばAさんが「この馬はこのコースで複勝率100%!○○産駒もこのコースで相性が良いし、メンバーレベル的にも馬券内は堅い!」と思って本命にした馬が馬券外に沈んだとしましょう。

その後Aさんが掲示板等に「○○騎手のクソ騎乗のせいで負けた!金返せ!」と書いたとします。予想する際に騎手のことを全然考慮していなかったのに「負けたら騎手のせいにする」は合理的ではないですよね。

あと、お金は賭けていないけど好きだった馬の産駒を応援している人が「○○騎手は○○産駒をつぶした!」と過激的な意見を述べることも一定数ある印象です。ラフィアンの場合だと「柴田大知騎手がゴールドシップ産駒をダメにしている」という発言もたまに見かけるのですが、普通に馬がかわいそうです。騎手には失礼ですし馬がかわいそうです。その馬の適性や状態面、そのレースの展開等を何も考えず「騎手が下手」という抽象的な理由で片づけれらてしまう馬がかわいそうです。本当にその馬のことを応援しているなら「騎手」以外の敗因もしっかり考えると思います。

続いて②について

騎手には様々なタイプがいます。逃げが得意な騎手や長距離の方が得意な騎手、特定の競馬場が得意な騎手など様々です。

また、何度もコンビを組んでいる馬なら「○○騎手がこの馬に乗る時はこういうレースをする」というのもわかってくるはずです。

①の条件を満たしている「騎手」を予想ファクターに取り入れている人の中には、そういった騎手のタイプや過去の経験から「今回この騎手はこういう騎乗をしてくれるはずで、そうしてくれれば馬券内のチャンスがある」という予測をしている人もいると思います。

※ここが重要で、同じ「騎手予想」でも「○○騎手は○○競馬場での連対率が高い」といった「データによる騎手予想」は「騎手批判」の条件にはなり得ないと思っています。なぜなら競馬場ごとの連対率等の「騎手データ」は騎手の「結果」に焦点を当てているものであり、「その騎手がどう乗るか」という「過程」の部分については無視しているからです。「結果」に焦点が当てられているファクターを使って予想をし、レース後に「仕掛けが早すぎるんだよ!」というような「過程」に対して批判をするのは合理的ではありませんよね?それはただの「文句」です。

その予測を論理的に立てた上で予想外の騎乗をされ、「前回は終いの脚を活かす競馬をして結果が出たから、今回もそういう騎乗をしてくれると思ったのに、なんで先行しちゃったんだ…」という批判をするのはあっても良いと思います。

当たり前ですがめちゃくちゃな予測の場合も騎手批判の条件にはなり得ないと思います。例えば、追い込みが得意な騎手がずっと追い込んで5~7着が多い馬に初騎乗して、レース本番でも追い込んで4着だった時、「なんで逃げないんだよ、追い込みで結果が出てないから今回は逃げると思ったのに」と言うのは暴論ですね。それは「予測」ではなくただの「願望」です。

最後に③です。

これは当たり前です。どんなに論理的でも暴言を使ってしまえば良い気はしませんよね。

以上のような条件を満たす「騎手批判」なら「あってもいい」と私は考えます。私はこれに加えて「次はこういうレースをした方がいいんじゃないか」と言うこともあったり、「次は○○騎手にした方がいいかも」と言うこともあります。ただ、それはその騎手が下手だというわけではなく、騎手のタイプと馬のタイプがマッチしていないと感じたから出た発言であり、騎手への誹謗中傷にならないように気を付けています。

まあ私の場合は褒めることが多いですね。「批判」しているつもりが「誹謗中傷」に見えてしまうこともあるかもしれないので…


おまけ:ラフィアンの騎手について

ここからはラフィアンの馬たちを応援し続けるリュウタロウが、どういう視点でラフィアンの主戦騎手を見ているのかについてお話します。

今回は柴田大知騎手と丹内騎手、そして主戦と言えるかは微妙ですが最近騎乗回数が増えてきたM.デムーロ騎手について触れていきます。

※あくまでも「ラフィアンの馬に乗る」場合の話です。ラフィアン以外の馬に騎乗する時のことは考えていません。

柴田大知騎手
・距離は2000mまでが適距離(ベストはマイル前後)
・直線が短いコースでの逃げが上手い
・直線が長いor広いコースだと外差しも○
・馬群を捌くのが苦手な印象なため基本外枠の方が良い
・捲りやリカバリーが必要な競馬は苦手な印象
・継続騎乗が良い
丹内祐次騎手
・距離は1800m以上が良い
・脚質は先行か捲りタイプが○
・内でロスなく立ち回るのが上手いため内枠が良い
・リカバリーが必要なタイプの馬には◎
・短距離の追い込み型は△
M.デムーロ騎手
・重賞に強い
・末脚を活かすタイプの馬で◎
・上位騎手からの乗り替わりor継続騎乗が○
・平場のレースで柴田大知騎手や丹内騎手で結果を出してきた馬に乗り替わる時はなぜか成績がイマイチ

柴田大知騎手の場合は中山or小回りコースでの逃げ先行、東京or新潟の外差しというイメージが強いですね。

これは中山で逃げ切った例ですね。

そしてこれは新潟で外から差し切ったレースですね。人気薄の馬でした。

一方で内々をロスなく立ち回ってはいるが最後の直線で馬群を捌けず、結局いいところがなかったというレースも多いです。

例えば今年のスイートピーSでの騎乗。5枠のスウィートブルームに騎乗した柴田大知騎手は早めに最内を確保しロスなく立ち回って最後の直線に向かいました。そこから外に持ち出すのですが上手く馬群を捌けず、もったいない競馬となってしまいました。もし馬群が上手く捌けていたら3着はありましたね。

この時も掲示板で「下手くそ」などのコメントが多かったのですが、私は大知さんがそういう競馬を得意としていないと感じていたので、騎手の技量を嘆くのではなくインにこだわったことを嘆いてました。「大知さんがインで脚を溜めるとこういうケースもあり得るから最初から外々を回る競馬をして欲しかった…というか大知さんはそういう競馬の方が向いてるはずなのに…」的なことを言っていた記憶があります。

ただ、インを立ち回って馬群を捌けたケースももちろんあります。このレースはマイネルパリオートという馬にとって、「負けたら連闘するしかない」という実質的な未勝利ラストチャンスでした。レース終盤「これ大知さん的には良くないパターンだなぁ…」と心配しながら見守っていましたが、馬群を上手く捌いて1着になりました。当時「良い意味で大知さんらしくない勝利」という表現を使って喜んでいましたが、リュウタロウの思い描いていた「柴田大知騎手はどういう騎手か」というイメージが良い意味で崩されたからこそ出た言葉でした。

続いて丹内さんはリカバリーの上手さと立ち回りの上手さが光りますね。大知さんは「自分の型に持ち込めば強い騎手」というイメージですが、丹内さんは「リカバリー能力もあり、立ち回りの上手さを活かす騎手」というイメージでタイプが違います。一般的に言われる「上手い騎乗」(「よう馬券内持ってきたな!」となるような騎乗)は丹内さんの方が多い印象です。

こちらは丹内さんのリカバリー能力が光ったレースですね。スタート後のダッシュに難ありだったマイネルエンカントを向こう正面からしっかりリカバリーして2着に持ってきています。

この2レースはどちらもアイオープナーという馬に騎乗したレースですが、未勝利戦の方は未勝利ラストチャンスという後がない場面で思い切った逃げを打って勝ちました。内枠を活かして攻めた好騎乗でした。

日田特別の方は荒れた馬場で行われた小倉のレースで他の馬があえて馬場の外を走らせる中、小柄でロスなく立ち回る方が良いアイオープナーに乗る丹内さんはあえて馬場の悪い内側をロスなく走らせました。馬のタイプと丹内さんのタイプがマッチして粘り切った3着だったと思います。

※この2レースはどちらも8番人気でした。

最後にデムーロ騎手です。オークスのユーバーレーベンや新潟記念のマイネルファンロンを見ればわかる通り、末脚を活かすタイプの馬が良さそうです。ただ、なぜか平場レースだと重賞ほどの信頼度はありません。

よく「柴田大知騎手or丹内騎手→デムーロ騎手」という乗り替わりになった時、「鞍上強化だ!」と掲示板の人たちが喜んでいますが、なぜかそういう時の方が結果が悪いです。

※あくまで平場レースの話で重賞は別です。重賞だと文句なしに強いです。

柴田大知騎手や丹内騎手以外の騎手も積極的に起用している馬にデムーロ騎手が乗り替わると買い
柴田大知騎手や丹内騎手の継続騎乗で結果を残してきた馬にデムーロ騎手が乗り替わると成績を落とす

という傾向が今のところ見られます。

実際の数字に表すと
・パターン①の時が[2-3-6-5]
・パターン②の時が[1-1-0-7]
※サンプルはデムーロ騎手がラフィアンの馬に再び乗るようになった2020年以降のレース

例えばユーバーレーベンに初騎乗した阪神JFは柴田大知騎手からの乗り替わりでしたが、ユーバーレーベンは元々戸崎圭太騎手で結果を残してきた馬でした。平場レースでも「津村騎手で結果を出してきたアインゲーブングに乗り替わって2戦とも馬券内」「D.レーン騎手で勝ち上がり、川田騎手でも馬券内に来ていたマイネルイリャルギに乗って勝利」という例があります。

一方で「近4走は柴田大知騎手と丹内騎手が交互に乗って全て掲示板内だったマイネルパリオートに乗り替わって1番人気5着。その次のレースも1番人気10着。その後マイネルパリオートは柴田大知騎手に乗り替わって2着→1着」「前々走柴田大知騎手で4着だったマイネルデステリョに乗り替わって5番人気(単勝8.4倍)で8着」という例もあります。

ここから言えることとしては「柴田大知騎手や丹内騎手に向いている馬」はデムーロ騎手には向いていないということです。これは大知さんや丹内さん、デムーロさんが上手い下手の問題ではなく、馬のタイプと合っているかどうかの問題です。

これらのことを踏まえて「なぜデムーロ騎手は重賞だと強い一方で、柴田大知騎手や丹内騎手で結果を残してきた馬(平場レース)だと期待値ほどの結果が得られないのか」というのを簡単に考察してみました。

一応2020年以降のラフィアン馬騎乗時のデムーロ騎手の成績(10/1時点)は複勝率50%を超えているので、ものすごく優秀な騎手です。

結論から言うと「デムーロ騎手は『120点の騎乗ができる騎手』で、柴田大知騎手や丹内騎手は『100点に近い騎乗ができる騎手』だから」だと思います。(引き続きラフィアンの馬に乗った場合の話です。)

以前、騎手の方(誰かは忘れた)が「重賞は120点の騎乗ができないと勝てない」と言っていた記憶があります。メンバーレベルも強く、どの騎手も本気で勝ちに来るため、100点の騎乗でも勝てないということなんでしょう。

「馬の能力を最大限引き出す(その馬らしい)競馬をする」ことが100点の騎乗だと定義すると、120点の騎乗とはそれ以外の要素も加わらないと成し得ないということがわかります。

例えば先日のオールカマー。デムーロ騎手はグローリーヴェイズに騎乗して3着でした。「最後の急坂に不安がある」というグローリーヴェイズの抱える課題を把握した上で、2コーナー以降の下り坂で早めに仕掛ける競馬をしました。馬の持っている課題を自分の騎乗で帳消しにし、馬の能力を最大限に引き出した100点の騎乗だったと思います。ただ、それでも3着でした。

一方で新潟記念です。マイネルファンロンは元々「先行して結果を残してきた馬」でした。マイネルファンロンは折り合い面にも課題があったので、100点の騎乗をするなら「折り合いをつけた状態で先行して結果を出す」だと思います。しかし、「控えて末脚を活かす」というマイネルファンロンの新たな力を引き出すという120点の騎乗をして1着に導きました。

ここまでの話で「120点の騎乗って博打に近いのでは?」と思われた方もいるかもしれません。実際そうだと思います。「安定」で勝てるほど重賞を勝つのは簡単じゃないと思います。ただ、実力や人気があればその馬にとって100点の騎乗をすれば勝てるケースもあります。ルメール騎手が1番人気でG1を勝つときは「そつなく乗ったなぁ」と思いますし、今年のエフフォーリアが勝った皐月賞も横山武史騎手の得意パターンに持ち込んだ100点の騎乗だったように思えます。

そういった人気や実力を兼ね備えた馬たちに勝つためには「120点の騎乗」をしないといけないと感じていますし、デムーロ騎手はそれができる騎手です。

ただ、悪く言ってしまえば「120点の騎乗」は「0点の騎乗」にもなり得ます。もしマイネルファンロンの新潟記念も結果が出なかったら「いつものマイネルファンロンの競馬に徹すればもっといい結果が出ただろうに」とデムーロ騎手も言われていたと思います。いわゆる「何がしたかったのかがわからない騎乗」になってしまう可能性もあります。

一方で平場レースは重賞以上に相手関係がはっきりしていますし、重賞ほどその1レースの勝利にこだわっている陣営も少ないでしょう。そういった点から平場レースは重賞レースほど「120点の騎乗」は求められていないと思います。馬の能力があった上でしっかり「100点に近い騎乗」ができれば結果はついてくるのだと考えています。

例えばこちらのレース。これは先ほども触れたデムーロ騎手が単勝オッズ8.4倍の人気だったマイネルデステリョに騎乗し1.9秒差の8着に敗れてしまったレースです。マイネルデステリョは初期のレースでは先行して結果を残していたのですが、休み明けから復帰した2020年12月以降は終いの末脚を活かす競馬で復調気配を見せていました。そのため、終いの末脚を活かすタイプのマイネルデステリョと差しが得意なデムーロ騎手は合うと思っていました。

しかし、レースではマイネルデステリョは出遅れてしまい、そこから強引にポジションを上げて3番手でレースを進めていました。そのせいか後半は失速し8着に敗れてしまいました。マイネルデステリョにとっての「100点の騎乗」はできていなかったと思いますし、デムーロ騎手がこういう負け方をするのは少し意外でした。

その点で言うと柴田大知騎手と丹内騎手は調教段階からかなりラフィアンの馬に跨っており、「その馬にとって100点の騎乗をする」という技術はかなり高いと感じています。ただ、「100点の騎乗」より上の騎乗(120点の騎乗)はあまり出ないため、重賞での成績は圧倒的にデムーロ騎手の方が勝るとも言えると思います。

以上のように、「平場レース」と「重賞」においては求められる騎乗スタイルが異なると考えています。デムーロ騎手は「重賞」に求められる騎乗スタイルが持ち味で、柴田大知騎手と丹内騎手は「平場レース」に求められる騎乗スタイルが持ち味の騎手であると推測できるため、先に述べた事象が観測されるのだと思います。

※わかりやすいように「重賞」と「平場レース」という区分けにしましたが、実際は「○○特別」のように名前がついている「特別戦」になるとデムーロ騎手は成績を上げているイメージです。ラフィアン以外の馬でもデムーロ騎手は「新馬戦」や「○歳未勝利戦」と言ったレースで人気馬に騎乗して着外に沈んでいるケースもそれなりに見られる一方、特別戦では人気に応えたり穴馬も持ってきているため、的外れな考察にはなっていないと思います。


おわりに

私は「一番好きな騎手は柴田大知騎手」と言っていつも応援していますが、全てのラフィアン馬に柴田大知騎手が乗ってほしいとは思っていません。大知さんとタイプがマッチしない馬に乗って結果が出せず、それで叩かれるのはあまり見たくないので…

大事なのは「馬のタイプと騎手のタイプを考慮した騎手起用」だと思っています。最初に示した得意脚質や得意距離もそうですし、「120点タイプ」なのか「100点タイプ」なのかといった部分も考慮して騎手起用が行われるのが理想です。例えば柴田大知騎手や丹内騎手が乗っていた馬の次走(平場レース)の鞍上を検討する時に、「その馬の型が決まっていて、その型が柴田大知騎手や丹内騎手に合っている」場合は継続騎乗の方が良いはずです。「その馬の型が決まっているけど柴田大知騎手や丹内騎手に合っていない」場合はその型とマッチする騎手に替えて欲しいです。「型が決まっていない、この現状を打開したい」場合はその馬の新たな力を見出す120点の騎乗ができるデムーロ騎手に替えればいいと思います。

※最近はラフィアンも重賞では積極的にデムーロ騎手を乗せようという起用にシフトしているように思えます。ただ、その一面だけを見て「柴田大知騎手や丹内騎手はラフィアンから干され始めている」と安易に思わないで欲しいのです。あくまで「重賞ではデムーロ騎手が強い」という合理的な騎手起用であり、柴田大知騎手や丹内騎手は平場レースでちゃんと起用されていて結果も出しています。

逆に馬券的な話をすると、そういった騎手起用がされていないと判断したら評価を下げればいいのです。「馬券を買う、お金を使う」という最終的な決断を下しているのは自分自身です。自分の責任です。それで負けたのを騎手のせいにして「批判」という名の「誹謗中傷」をするのは筋が通った行動とは言えませんよね。

私も気を付けているようにしていますが、批判をするならせめて「下手」などの抽象的な表現しか使っていない「誰かを下げるだけの批判」ではなく、その騎手や馬の適性を考えた上でどうするのがベストだったのかという「次を見据えた批判」でありたいと思ってます。

ただ、そういった考察も言ってしまえば「素人目線」です。誰かに押し付けようという気もないので自分の中の1つの仮説としてつぶやく程度にこれからも留めていきたいと思います。

以上です。読みづらい部分も多々あったとは思いますが、ここまでご覧いただきありがとうございました。