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古のシンボル太陽十字、鉤十字は幸運のシンボル?邪悪なシンボル?

ペイガン (キリスト教から見た異端信仰) のアクセサリー

ヴァイキング時代のアクセサリーで誰もが思いつくのは何と言ってもトールハンマーこと「ミョルニル」だと思いますが、キリスト教以前のゲルマン系の神話の神の持つ雷槌であり、そのアクセサリーは人々にとって力強いお守りでした。
ヴァイキングの時代にトールハンマーと同じくらいポピュラーだったのが「サンクロス」や「ソーラーディスク」と呼ばれるアクセサリーで、ヨーロッパに於いてはとても古い歴史を持っていました。

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(スウェーデンで見つかったヴァイキング時代のビザンティン風サンクロス)

太陽信仰から生まれたシンボル

「ソーラーディスク」は丸い形をした太陽を表す意匠で、その中に十字型のあるものが「サンクロス (太陽十字)」や「サン ホイールクロス (太陽輪十字)」と呼ばれています。
スラヴ圏では、サンクロスがスラヴ神話の太陽神スヴァローグとも結び付けて考えられて身につけられていた可能性もあり、三日月型の魔除けのアクセサリー「ルヌラ」と一緒にスカンジナビアやスラヴのヴァイキング遺跡で数多く見つかっています。

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(スカンジナビア、及びスラヴ圏で見つかったヴァイキング時代のアクセサリー)

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(サンクロス、ルヌラ、ガラスビーズなどで飾ったヴァイキング女性の胸元)


 関連記事:「ヴァイキング時代の三日月の魔除」

太陽と永遠の命のサイクルを表すシンボル

サンクロス (太陽十字) の歴史は古く、鉄器時代以前からヨーロッパ各地で用いられてきたデザインです。
丸い形状が太陽を表し、十字状の部分がホイールのスポークを表し、太陽、または太陽を動かす車輪を意味していると考えられています。

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(デンマーク領ボーンホルム島にある新石器時代のサンクロス)

太陽の車輪は日の出から日の入りの太陽のサイクルを意味し、永遠のサイクルや永遠の命の再生なども象徴する力強いシンボルです。
キリスト以前の様々な「ペイガン」信仰 (キリスト教側から見た異端教) に於いて太陽の神と結びつけられ、太陽の神の乗る戦車 (チャリオット) の車輪とも考えられました。
現代の新興多神教崇拝「ウィッカ」ではさらに十字で区切られた四辺が四季を表すとされています。

サンクロスの意外なバリエーション

通称ケルト十字と呼ばれている「ハイクロス」はアイルランド、スコットランド、イングランド、ウェールズなどで使われた十字ですが、古くはサンクロスの一種でした。

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(アイルランド、アヘニーにある8-9世紀頃のハイクロス)

下の画像は島津家の家紋?
そうとも言えますし、サンクロスともいえます。
島津家の場合キリシタンなので太陽信仰とは関係ないと思いますが、、、。
シンプルが故に、これと同じ意匠の太陽十字は様々な地域と時代で見ることが出来ます。

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(サンクロスとも言えるし、島津家の家紋とも言える丸に十字)

ペイントされたヴァイキングの盾、ひょっとしたらそもそもサンクロスなのかもしれませんね。

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(ヴァイキングの盾複製)

そうするとこれはサン ホイール クロスやスワスティカ (鉤十字) の類かもしれません。

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(ヴァイキングの盾、イメージ)


 👇関連商品:サン クロス (太陽十字) の首飾り

残念なことに近年、東欧のネオナチなど白人至上主義の差別暴力団によってシンボルマークに掲げられることもある「コロヴラット」 (スピン ホイールの意味) は、スラヴ神話の太陽神スヴァローグと結び付けられた太陽の車輪、もしくは太陽の光輪や、太陽と風などを表すシンボルでした。
サン ホイール クロスであり、同時に鉤十字 (スワスティカ) でもあります。

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(古いスラヴの太陽シンボル、コロヴラット)

悪のシンボルの意外なる歴史

鉤十字と言えばこれまた残念なことに、かつてナチス労働党が掲げた、ナチス及び旧ドイツ第三帝国のシンボルマーク「ハーケンクロイツ」も、もともとは「スワスティカ (スヴァスティカ)」というサンスクリット語に由来する、古くから世界中で使われている幸運や気象のや力のシンボルでした。
風、車輪、雷、太陽、太陽を回す車輪、永遠のサイクル、輪廻などを表わした図形として使われ始めたと考えられています。
アメリカ先住民は、光、愛、幸運、生命のシンボルとして。
ヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教では幸運や太陽を表すシンボルとして。
ヨーロッパでは雷を表し、ギリシャではゼウス、ローマではユピテル、スカンジナビアではトール、スラヴではペルーンのシンボルとして使われていた様です。

スワスティカはヴァイキング時代のスカンジナビアのルーンストーンにも見ることが出来ます。
古くは神の雷や、神の見下ろす宇宙や大気の渦の様なもののサインだったとも考えられています。

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(デンマーク、スノルデレフの9世紀のルーンストーンに刻まれたスワスティカ)

スワスティカの歴史はかなり古く、見つかっている最古と思われるものはウクライナで見つかった、マンモスの牙に彫られた先史時代のもので、炭素年代測定では1万5千年前のものと推測されています。

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(氷河期のマンモスの牙に刻まれた集合スワスティカ)

現在のバルカン半島のセルビアからルーマニアにかけて、紀元前5000年から前1250年頃までドナウ川流域にあったとされる、ヴィンカ文明の発掘品からは単一のスワスティカが登場します。

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(男性器を象ったチャリオットに乗った鳥人像)

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(スワスティカの刻まれた土器)

イタリアにあったエトルリア文明のペンダントにもスワスティカが描かれています。

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(紀元前700年から前650年頃のエトルリアのペンダント)

紀元前15世紀頃〜前8世紀頃に地中海沿岸に栄えたフェニキアの人々にとってスワスティカは太陽のシンボルでした。

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(キプロス島で見つかったフェニキア太陽の巫女のテラコッタ)

紀元前350年頃のギリシャの兜にもスワスティカが描かれています。

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(古代ギリシャの兜)

イギリス、ヨークシャーにある湿原にはスワスティカが刻まれた青銅器時代の石が見つかっています。

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(ヨークシャーの青銅器時代のスワスティカ ストーン)

史上最古の幸運のシンボルから人類史上最悪のシンボルへ

そして時は流れ現代。
アメリカの先住民が使っていた幸運のシンボル、スワスティカを取り入れてコカコーラやペプシコーラもノベルティグッズを展開してました。
1940年代頃まではスワスティカは当たり前の様に普通に使われている意匠でした。

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(コカコーラのノベルティグッズ)

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(ペプシコーラのノベルティグッズ)

アメリカに移民してきたヨーロッパやイギリスの人々にとって、スワスティカは昔から馴染みのあるシンボルだったので、おそらく当時はアメリカ先住民のラッキー シンボルに触発されたリバイバル!程度の感覚でしょう。

スワスティカは1万7千年以上もの間、幸運と、自然と、太陽と、宇宙のシンボルとして世界中で愛され、人々に使われ続けた、人類で最も長く使われ続けたシンボルの一つでした。

1920年代にナチスが使い始め、人種差別と迫害と虐殺と恐怖の象徴となるまでは、、、。

これ以降、スワスティカは「ハーケンクロイツ」として悪の紋章になり、世界中から忌み嫌われ、削り取られ、破壊され、忘れ去られ、目を背けられる存在になりました。

日本でも2020年東京オリンピックに向けて世界の目を気にし、寺を表す「卍」の記号が消されました。
人類に再び愛されるシンボルになるのは遠い遠い先の話になるのでしょう。


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