【詩】音。
猫が水をのむ音
猫がおしっこする音
猫がサイドボードに跳びのる音
耳をすませていないと聴こえない
しあわせの音
風にゆられるカーテンの音
ぽたん、ぽたん、と落ちていく珈琲のしずく
とつぜん「みしっ」と鳴る家の音
耳をすませていないと聴こえない
しあわせの音
わたしのお腹が小さく鳴る
どくっどくっ 心臓の音
腸のあたりが、ぎゅるるっと動く
耳をすませていないと聴こえない
しあわせの音
bluetoothをはずし
思考をはずし
感情をおいて
ただそこにいた
すべての音が消えると
音のない空間は
「音」であふれていた
しあわせの音
愛おしいほど微か(かすか)で
たしかで
いまここに在る音
いのちの音
「いま」がいつで
「わたし」が誰で
「どこ」にいるのか
気づかせてくれる音
家の音
森の音
海の音
地球の音
涙ぐむほど
懐かしい音
耳をすませていないと聴こえない
しあわせの音
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