4歳長女が「適当」を的確に理解していた話

4歳の長女は言葉が好きだ。

2歳頃から、初めて聞いた言葉をすぐアウトプットしたがる節がある。
絵本の読み聞かせをすると、絵ではなく文字を追っているらしいことが最近分かった。読み手の読む音と文字をリンクさせているらしい。なので私が読み間違えたり文章を飛ばすと、長女から指摘が来る。

先週、子どもたちとお風呂に入ったときのこと。

2歳の次女は顔に水がかかるのを極端に嫌がる。
いつもなるべく顔にお湯をかけないよう気を付けながら洗うのだが、この日は完全に油断していた。次女の頭を濡らそうとシャワーでお湯をかけたら、思いっきり顔にまでお湯がかかってしまったのだ。

びやーーー!と泣き出す次女。
「わー!ごめんごめん!」と謝る私。

続けて私は独り言のようにつぶやいた。
「お母ちゃん、雑なんよ~」

すると先に体を洗って湯船の中で遊んでいた長女が、私のつぶやきに反応した。
「おかあちゃん、”雑”ってなに??」

私はしばらく考えてから
「雑かあ~~~。”適当”ってことかな?」
と答えた。

長女は口を尖らせておもむろに言った。
「おかあちゃんが水筒をカバーにいれるときさー、ひものとこにボタンがくるから飲めないんだよー」

急な話に付いていけず混乱する私。
「うん?えっ?水筒!?
えっ…っと、どゆこと??」

「だからさー、おかあちゃんが水筒をカバーに入れるときさー、飲み口がカバーのひものとこにあるから開けれなくて飲めないの」

長女の言う水筒とは、幼稚園に毎日持っていく、ボタンを押したら蓋がぱかっと開いてストローで飲むタイプの水筒であることは何となく分かった。
水筒専用のカバーもあって、カバーには肩から提げられるように長さ調整のできるひもが付いている。

そこまでは分かったのだが、まだ私の頭は混乱していた。

どの向きで水筒をカバーに入れようが飲めるんじゃないの?
そもそも毎日水筒の用意をしてるのは夫じゃん。なのになんで「おかあちゃんが入れるときさー」って言うんだ?お父ちゃんはどうなのよ!?

ますます混乱した私はイライラ混じりに長女に言った。

「よく分からんけど、もし飲めなかったとしても長女が一旦カバーから水筒を出して、飲める向きに入れ直せばいいだけなんじゃないの?」

それを受けた長女、
「意味が分からん!」と一言。

「お母ちゃんも意味分からんわ!」
と言い返して会話はひとまず終わった。

自分の体を洗って湯船に浸かりしばらくしてから、ようやく頭の中が整理されてきた。
ああ!長女が言っていたのはこういうことか、と。

改めて長女に確認してみる。
「さっき長女が言ってたのはさ、お母ちゃんが水筒をカバーに入れた時、蓋を開けるボタンがちょうど肩ひもにかかっちゃって、ひもが邪魔で蓋を開けられないってこと??」

「そうだよ」とうなづく長女。
私は「そうだったんか!ごめんね。お母ちゃん、よくわかってなかった」と伝えた。

しかし完全に納得したわけではない。

えっじゃあ夫は?
お父ちゃんが毎日水筒セットするときは同じようなこと起こってないの?
私とお風呂に入ってるから、私に教えてくれたのかな??

風呂あがり。
一応夫にも伝えておこうと、リビングで長女にパジャマを着せている夫に呼びかけた。

「夫ー!長女がねー、水筒をカバーに入れるとき肩ひものところにボタンがあると開けにくくて飲めないって言うてたよ」

「ああ!そうやで」と笑い出す夫。
いわく「ボタンがひもにかかってたらそら飲みづらいわなぁ」と。

きょとんとしている長女に語りかけるように夫は言う。

「あの水筒はカバーに向きがあるんよね。マジックテープが付いてるとこを水筒の後ろに持ってこなあかん」

えーーーっっ!!!
カバーに付ける向きがあっただと!?
衝撃の事実におののく私。

「そしたらボタンがひもにかかって開けられんてことは無くなるから。お父ちゃんは向きを意識してカバーに入れてるんよ」

「お母ちゃんはその辺適当やからなぁ~。向きとか気にせんとカバー付けるんよな」

夫は可笑しそうにあははと笑い、水筒とカバーを持って実演して見せてくれた。

うわあ、ほんとだ。
カバーには付ける向きがあるんだ。
全ッッ然気にしたことなかった!

夫は気付いていたのだなぁ。そりゃあ「【おかあちゃんが】入れるときさー」になるわけだ。

そしてふと気付いた。長女はどうして急に水筒カバーの話をしたのか。

“適当”という言葉が出たからだ。
お風呂でのわたしとのやりとりから、長女の脳内に「お母ちゃんは雑→雑≒適当→お母ちゃんは適当」という図式が生まれ、「おかあちゃん適当だなぁ」と長女が感じたエピソードを思い起こしたのだ。

もっと言えば、長女は”適当”という言葉の持つ意味合いを理解しているということになる。

「えっ長女すごくない!?」と思わず夫と顔を見合わせた。

長女は言葉が好きだ。
「好きこそものの上手なれ」とはきっとこういうことなんだろう。

長女は早速、会話するときに”雑”という言葉を使うようになった。彼女の脳内辞書に登録されたに違いない。

何かと適当な私だけれど、長女の好きには応えたいと思う。

「おかあちゃん、○○ってなに?」
次はどんな質問が来るのか、楽しみに待っていよう。


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