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“完璧な一杯”を飲んでみよう

「紅茶にひとつまみの塩を入れると、”完璧な一杯”に仕上がる」

アメリカの科学者が提言したそれは、イギリスの各メディアに取り上げられ、物議を醸している。予想通りというべきか、イギリス側からは、非難と皮肉たっぷりなコメントの嵐である。
いかにイギリス人が”紅茶”に対してこだわりを持っているか。「イギリスは紅茶の国」というイメージをさらに印象付ける話題といえるだろう。

いやいや、塩って。紅茶に入れるなら砂糖だろ。私もそう思う。SNS、というか主にX(旧Twitter)でも、ネタ投稿が散見されるくらいだ。
それくらい、多くの人が「紅茶に塩を入れるなんて」と感じているのだろう。

それにしても、この”完璧な一杯”なるもの。どんな味がするのだろうか。
そもそも、紅茶に塩をひとつまみ入れるだけで、明確に違いを感じ取れるほど、味の変化は起きるのか。
「塩入れたら完璧になる」と、わざわざ書籍として発表するくらいだ。少なくとも、なにがしか味の変化を感じられるはずだ。

そこで今回は、「同じ淹れ方をした紅茶に、塩をひとつまみ加えると、ヒトでも感知できるほどに、明確な違いが発生するのか」を検証していく。
なぜこう定義したのかというと、「おいしい」という価値観は、あまりにも個人差があるからだ。
そのため、味の良し悪しはさておき、「ヒトでも変化を感じられるか」を焦点において、飲み比べを行う。

【使用した道具】
・ティーポット
 陶器製。無印良品で購入したもの。

・ティーカップ
 陶器製。内側が白く、底が浅めのものを用意。紅茶の色や香りにも変化がないか見るためだ。
 形状や材質の違いによる差異の発生を防ぐため、同一形状のものを使用する。

・ケトル
 ステンレス製のやかん。

【材料】
・水
 蛇口から汲みたての水道水を用いる。ティーカップ1杯あたり150mLとしたため、今回は300mLを沸かした。

・茶葉
 今回は、【JANAT Heritage seriesのセイロン(ティーバッグ)】を2個、使用する。
 選出理由は3つ。
1.スーパーマーケットや食料雑貨店で手に入りやすい
2.ティースプーンでリーフティーを計量するより、茶葉量のばらつきを抑えられる
3.茶葉の性質上、香りや味、渋みがしっかりと出るため、塩の有無による違いを感じやすいと考えた。

・塩
 スーパーマーケットで購入した塩。ひとつまみ分とのことなので、ちゃんと親指・人差し指・中指でつまんだ分を加えた。

・牛乳
 セブンイレブンで購入した牛乳。今回は小さじ3杯分をそれぞれに加えた。

【淹れ方】
日本紅茶協会のホームページに掲載されている方法を参照する。
https://www.tea-a.gr.jp/make_tea/

以上を踏まえ、塩を入れた紅茶と、塩を入れていない紅茶を比較してみる。
また、それぞれを飲む前には、毎回口を真水でゆすぐことで、口内の状態をリセットした。

【検証】


左が塩入り


(ストレートで飲んでみた場合)
香りに変化はない。
色は、塩入りの方が若干明るいような気がする。光の加減と言われたらそれまで、というくらいの差異ではあるが。
味は、塩入りの方が、言われてみれば、渋みというか苦味が薄れているような……? 塩味を感じられるような……? しかし、紅茶本来の味がしっかりとしており、塩による違いより、紅茶の味の方が強い印象だ。

では、牛乳を入れてみてはどうだろうか。それぞれのカップに、牛乳小さじ3杯分を加える。


見た目は変わらない

(牛乳を加えてみた場合)
香りはやはり変わりない。
色は、こちらもまた、塩入りの方が若干明るいような気がする。
味はというと、明確な違いがわかるようになった。塩を入れてる方に、はっきりと塩味を感じる。口当たりも、渋みの角が取れたような印象だ。
渋みや苦味が苦手な人や、レモンティーやアイスティーなど、爽やかさが欲しい時に入れるといいかもしれない。いわゆる、隠し味のような使い方ができるのでは、と感じた。

結論
・ひとつまみの塩を加えることで、味の変化はあった。
・具体的には、苦味や渋みが薄れた。隠し味的な役割になりそう。
・香りに変化はない。

これは個人的な感想だが、「ゲテモノってほど変な味ではない。むしろアレンジとして成立している。けど、わざわざ『必ずこうして飲みたい!』と思うほどでもない」といったところだ。

今回の比較は、出来る限り再現しやすいよう、真似しやすい材料や道具、淹れ方で実行している。ぜひ他の人の意見も聞きたいので、試してみてほしい。

なお、世界には、ミルクティーにバターを淹れて飲む地域もあるらしい。そう考えると、塩を入れるのは、アレンジとしてありなのかもしれない。今度、塩バター紅茶なるものも、挑戦してみよう。

……電子レンジで紅茶を淹れるのは、どうかと思うけど。

参考文献
Michelle Francl. (24 Jan 2024). Steeped: The Chemistry of Tea. Royal Society of Chemistry. 
https://books.rsc.org/books/monograph/2162/SteepedThe-Chemistry-of-Tea

「「紅茶に塩」で外交問題=米教授主張に英反発」ライブドアニュース、2024年1月26日掲載。2024年1月27日閲覧

日本紅茶協会「紅茶のいれ方」日本紅茶協会。(2024年1月27日閲覧)
https://www.tea-a.gr.jp/make_tea/

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