【連載小説】恋は、愛に勝てるのか⑥
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最初から
スイートルームは玄関からして大きい。ドアは観音開きになっていて、少し錆びついた金色のノブには、波みたいな流線が描かれている。「Clean up please/清掃お願いします」の札も、しっかりかかっていた。
木村さんが、唾を飲み込んだ後、いつにも増して丁重にノックをした。部屋の音を確かめるように、ドアに耳を澄ませる。うん、と頷くと、エプロンのポケットからマスターキーを取り出す。すると次の瞬間、彼女の腰についている小型無線から、ピピっと電子音が鳴っ