記事書いたよ
オモコロで記事が出ました
動画も出ました
今回はじめて「制作振り返り記事」をやりたいと思います。
ライターになって6年経つのですが(6年……?やりすぎだろ)こういったことを今までやったことがありませんでした。
なぜかというと、それはもう「自作品解説に価値があると思ってるんだ~へえ、ずいぶんとまあ巨匠なんですね」と言われるのが怖かったから。それだけです。
でも、まあいいか、と最近思うようになりました。これが精神的な成長の結果なのか、それとも年を無駄に重ねて繊細さを失っただけなのか、それは委ねます。他人に。
『作れる気がしない』
今年に入ってから精神的に辛いことが雪崩のように押し寄せ、鬱々と過ごしておりました。(あれやこれやそれや)
また体調も優れず、そこにストレスが重なって、平衡感覚がおかしくなったり、呼吸ができなくなったり、片頭痛に悩まされたりと、まあ大変でした(やばい病気っぽいですが病院では『特に異常なし』と診断されましたし、症状も一時的なものでした)
でも、そんなことを言い出したら私より辛い人なんて星の数ほどいると思いますし、不幸自慢をするつもりはありません。
何かというと
出来る気がしない……!!……創作!!
ということです。
ものを作るのにも、心の余裕は必要なんですね。今までの環境に感謝。
『読むことでしか書けない』
そんなわけで、長いこと何も手につかずだったわけですが、何もしないと罪悪感が溜まっていくので、4月あたりから徐々に制作を再開しました。
そのときお世話になったのは、まさきとしか先生の作品です。
今年の2月にまさき先生の新作『あなたが殺したのは誰』を読んで衝撃を受けまして、まだ未読だった過去作を読み漁りました。特に『レッドクローバー』が面白かったです。
ものを書くとき一番……というか唯一原動力になるのは『面白い作品』です。良いものを読むと一気にエネルギーがチャージされます。
今回の記事のタイトルはもちろん『あの日、君は何をした』から影響されました。
『あの日、君は何をした』は、特に前半の「壊れていく母親」の描写がすさまじく、拙著『変な絵』を書く際にも参考にさせていただきました。
今回の話は内容としては無関係なのですが、まさき先生の緻密な構成や、登場人物の出自によって真相が明らかになるシーンの悲しさなどを意識しながら作りました。
病院の窓の灯
今春、よく夜にウォーキングをしました。ある夜、普段通らない川沿いの道を歩いていると、川の向こう側にある古い病院の窓が闇夜にピカピカ光っていて、ちょっと不気味に感じました。
それを見たとき『何かの目的で、窓明かりを遠くにいる人に見せる』というアイデアを思いつきました。では何のために……?と自問自答しながら二つのストーリーを作りました。
①自殺誘発罪……踏切には自殺防止のために、青いライトを設置しているところがある。青い灯は心を穏やかにするとされるからである。
では逆に心を逆立てるような色のライトを設置したら自殺する人が増えるのでは?
丘の上に家を持つ一人の婦人。彼女は昔、一人息子を亡くした。彼は受験勉強に疲れ、予備校の帰り道、踏切に飛び込んだのである。
婦人は今でも「踏切には息子の霊が一人孤独にさまよっている」という妄執に憑りつかれている。そこで彼女はこう考えた。
「あの踏切で自殺する人が増えれば、息子に友達ができる」……そこで彼女は赤いライトを買い、毎晩、窓の近くで灯した。
踏切からはちょうど、丘の上の婦人の家が見える。深夜、踏切の前で電車が通り過ぎるのを待つ人に「赤い灯」を見せて、自殺をしてもらうためである。
②偽りの青信号……とある廃ホテルには、奇妙な噂がある。深夜、誰もいないはずの客室の窓が、青く光るのだという。
ある日、ホテルの付近で乗用車の自損事故が発生した。現場は急カーブに位置しており、車はカーブを曲がり切れずにガードレールに衝突したとみられている。ところが、のちの調べで奇妙な事実が判明した。
死亡した運転手は、事故の直前にアクセルを踏み込んでいたのだ。急カーブの目の前でなぜアクセルを?
もしや彼は、目の前に見える廃ホテルの窓灯りによって作られた『円形の青い光』を信号と間違えたのではないか。
結果として②のアイデアを採用しました。
筋書を固めていく中で『窓灯り』の設定は消え『青色の蛍光塗料を丸く塗った布を貼り出し青信号に見せる』という形になったのですが『なぜ蛍光塗料が丸く塗られていたと推理できるのか』の根拠を作れず断念。『顔バージョン』に落ち着きました。
これを書くにあたって『蛍光塗料の光はそんな遠くまで届くのか』を調べるために、布とスプレー缶を買って試してみたところ……全然届きませんでした。
苦肉の策で『ヘリポートや軍需品に使われる高価な製品』という言い回しにしたのですが、じゃあそういう製品なら100メートル以上先に光が届くのか……というとわからないんですよね。
私は届くと信じています。
春木名美来
春木名美来という少女がこの話の核になっていますが、美来の外見は二転三転しました。
最初は「アイドルなんだからとにかく可愛くしよう」と思ったのですが、それだけでは『親から愛されない心の穴を埋めるために、歓声を求める人』というキャラデザに合わないなと気づきました。
最終的には『かわいいけど目が笑ってない人』というイメージで、現状の外見に落ち着きました。
新聞
今回、小道具がない代わりに、新聞の画像に凝りました。
冒頭、過去の事件の説明が続くので、半端な画像を使っちゃうとその時点で読者が白けてしまう危険があると思ったからです。
逆に、新聞の質感をうまく再現できれば、本格ミステリー的な重厚なムードが作れるのではないかと。
フォントはフォトショップ付属のものですが、文字の縦横比と文字間のスペースを本物の新聞に合わせると、かなりリアルになりました。新聞の文字はやや横につぶれているんですね。
とはいえ、このままだとデジタルっぽすぎるので、一度プリントアウトした紙をスキャンしました。一度アナログをはさむ、ということです。
こうするとかなり「新聞」になります。ちなみに、うちの近くのデイリーヤマザキのコピー機はB3だけあまり光沢感のない、粗い紙質のコピー用紙を使っているので(もしかして全店そうなのか…?)それを使いました。
見た目は結構完璧に近いと思うのですが、記事の文面をリアルにするのは難しいですね。
ファレ兄の動画
記事内に、心霊YouTuberの廃墟探索動画が入っています。撮影場所は、荒川区の『アルファスタジオ』というところです。事前にアクセスを調べ「都電荒川線っていう電車に乗るんだな~」とぼんやり思っていたのですが、実物を見て驚きました。まさか都電荒川線がああいうタイプの電車だったとは。
ちょうど時刻が夕方だったこともあり駅には長蛇の列ができており、このままではスタジオの入り時間に遅れてしまうので、諦めて線路沿いを走りました。当日、雨がすごく降っていて湿度もすごくてあれはきつかったですね。
でも、雨のおかげで動画の雰囲気がかなりよくなったのでラッキーでした。
最後のところ
本当は『あの日、彼らは何をした』で終わらせる予定だったのですが、途中で致命的な矛盾に気付いてしまいました。
この矛盾が解消されない限り、そもそも話が成立しなくなってしまうので、急遽あの展開を作りました。後出しジャンケンではあるのですが(私の話は後出しジャンケンが多い)『あの日~』のオチだけではやや弱い気がしていたので、もう一つどんでん返しを作れたのは怪我の功名だったと思っています。
動画バージョンのBGMは時間に追われながらcubaseで作りました。何気に『5/4拍子』という変なリズムを使っています。
書籍化はしない
最近、長編記事を出すと「本になるんでしょ?」と言われることがあるのですが書籍化はしません。記事から本にするのは「変な家」が最初で最後だと思います。
色々書いて収集がつかなくなってしまいましたが、ひとまず最後まで書けてよかった。公開までこぎつけてよかった。
読んでくださった皆様、見てくださった皆様、ありがとうございました!!