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花様年華〜16-1. save Namjoon

16-1. save Namjoon

ねぇジン。
ジンが踏み出した一歩はとても大きいものだったね。


『...ヌナ...』

ジンは長い過去への旅から無事に戻ってきた。
目を開けて最初に私を呼んでくれるなんて、こんな幸せなことはない。

『うん...ジン、おかえり。待ってたよ』

ジンの手を握り、小さく微笑む。
もちろん抱きしめたいのは山々だが、ここは試験室だ。
被験者初めてのタイムリープからの覚醒のため、私や東条先輩、助手がいるのはもちろん、かなり久しくNOTESを使用した被験者ということで所長も窓越しに立ち会った。

『キム・ソクジンさん、お疲れ様でした。過去へ行かれて最初は戸惑っていたようでしたが』

東条先輩が穏やかな声で話しかける。
覚醒直後の刺激は禁物だ。

『...そう...だったんですか...あまり記憶がないんです。ただ途中から自分がすべきことがなんとなく頭に浮かんできて。みんなに会いに来たんだ、助けに来たんだ、って気付けたような感じなんです』

NOTESの成果が得られた様で、東条先輩と所長は目配せし、所長はその場から立ち去った。

脳波計やバイタルラインが取り外され、覚醒から30分後、ジンはベッドから起き上がり、ペットボトルの水を受け取った。

『ヌナ...僕...過去へ行ったんだね。ナムジュンにしか会えなかったけど...いや、ナムジュンに会えたんだ...会えたんだっ...』

ジンはその場で顔を覆い、深いため息をついた。
そうだね、戸惑いも嬉しさもあるね。

でも焦らないで。
これから一歩ずつ。
できるなら一人ずつ。
みんなにどんな形であっても再会してジンの気持ちを伝えられたらいいな。

『キム・ソクジンさん、今は心身ともに外部からの影響を受けやすい不安定な状態です。過去での話は後ほどヒアリングします。今はゆっくり気持ちを落ち着かせてください。さぁ、水を飲んで。タイムリープするとみなさん喉がすごく乾くようなんです』

東条先輩にそう促されたジンは、ペットボトル2本をすぐに空にした。


『ヌナ...過去にいる間もヌナのことばかり考えてたんだ』

...かなり嬉しい。
照れ隠しに必死で平静を装う。

『そうだったんだね。過去はどんな感じだった?だいたい記憶通りだったかな?』

少し考え込むジンが、なんだかより一層凛として見え、見惚れてしまった。

『多分一緒だと思う。僕も若くなってた。でも、今回辿り着いた過去が何月何日か、とか時期がはっきり分からない部分も多くて。ナムジュンには会えたけど、ユンギとジョングクはもう学校を辞めているようだったし、他のみんなの様子はナムジュンもあまり知らないみたいで』

ジンの瞳をぶ厚い光が覆う。

『やっぱり...僕のせいだったんだなって。僕のせいでみんな本当にバラバラになっちゃって...あんなにずっと一緒にいたのに、今はどこにいるかも分からないなんて...本当に...僕は...僕が...』

俯いたジンの瞳から大粒の涙がぼろぼろと溢れる。
過去へ行っても、すぐに良い方向に転がるなんてことはないのだ。
さらに後悔の念が強くなったり、現在への不信を深めたり。

ジンは過去へ行って改めて自分のしてしまったことの重大さに気付かされ、打ちのめされているように見えた。

『ジン...試験はいつでも中止にできるんだよ。ジンが辛いならもう無理には...』

ジンがすっと顔を上げて私をまっすぐ見た。
揺るぎない決意が伝わる。

『ヌナ。僕やりたい。続けるよ。きっとうまくやってみせる。早くみんなを助けたいんだ』

タイムリープを経験し、より自分の使命感に燃える人もいる。
ジンがそうだった。

つづく→

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