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花様年華〜18-2. save Jungkook

18-2. save Jungkook

→つづき

これまでの試験で被験者が過去で亡くなったケースは当然ながらゼロだ。
そうならないように被験者本人も現在で見守るこちらもブレーキをかける。
そういった事故が起きてしまえば研究所自体も閉所に追い込まれ、所長は倫理責任に問われてしまう。

何より現在から過去へ意識を飛ばしたまま亡くなった場合、現在にどのような影響を及ぼすかは全くもって未知数なのだ。
現在に置いていった体、意識を飛ばした過去から現在までの間に出会った人の記憶、もし子どもが生まれていたらその子はどうなるか。

人一人がどうにかなっても地球は回り、太陽は昇るだろう。
しかし、その一人が生活圏周辺に及ぼす影響は想像以上に多岐に渡り、全ての帳尻を合わせ、解決するのは不可能だ。

そういった見解を被験者自ら体現するかのように、過去へ数回行ったくらいで思い通りに現在を変えしまうことなどないのだ。

なかったのだが。
ジンは変えてしまっているのだ。


ジンが私から体を離し、頬に優しく触れる。

『実はね...言いにくかったんだけど...』

...きた...かな?

『現在に戻ったらナムジュンから連絡があったんだ』

...うん。
ごめんね、知ってたんだよ。

『どうして言ってくれなかったの...?』

ジンが厚い唇を強く結ぶ。
私の反応を見て、既に私がナムジュンの気配を感じ取っていたことに気付いたのだろう。

『怖かったんだ。一度過去へ行っただけでナムジュンに会えるようになるなんて。夢見てるのかなって。誰かに話すと夢から醒めてしまうんじゃないかって』

誰か...なんて関係のない遠い人みたい。
それが私にも当てはまる言葉なんだ。

『でも何度かナムジュンと話すうちに少しずつ打ち解けて、会えなくなった過去から今までの話を聞かせてもらって、現実なんだ、夢じゃないんだって』

『どうして今話そうって思ってくれたの?誰か、に話すと醒めちゃう夢かも知れないのに』

かわいくない私が角を見え隠れさせる。

『ごめん、誰か、なんて言い方。タイムリープを重ねるごとに僕とナムジュンの記憶が一致し始めたんだ。僕とナムジュンが同じ記憶を共有できていることに気付いて、もう大丈夫なんだ、夢じゃないんだって』

タイムリープを重ねるごとに...?
ジン、まだ3回目が終わったところだよ?

『そう...それで誰かさんである私に話してくれたってわけね』

角は隠さない。
思いっきり嫌な言い方してやろう。

『ヌナごめん。ヌナをがっかりさせたくない気持ちもあったんだ』

私を?

『だってヌナ、僕がナムジュンとこっちで話したなんて言ったらきっと自分のことみたいに、すごく喜んでくれるでしょ?良かったね、って』

そんな...
そんな優しくないよ、私...

『もしそれが僕の勘違いだったり、また現在が変わったりしてナムジュンと会えなくなったって知ったらヌナ泣くでしょ?もう僕のことでヌナを泣かせたくないんだ』

ジン...
ごめん。
私はジンと私のことばかり考えちゃってる...

『ありがとう、ジン。でもこれからは少しの変化でもちゃんと話してね?レポートにも書いてね?』

飛び出した角を隠し、ジンの肩にもたれかかる。
ジンの全てを知りたいと思うのはわがままかな...

『ヌナ。明日どこかに行かない?』

えっ?突然?

『どこかって...どこに?』

『実は行きたいところがあるんだ。寒いからって部屋にこもってばかりは良くなかったよね』

そうだね。
部屋にいるとジンのタイムリープの話を聞くばかりで。
もちろん試験を担当している私としては大切なことだけど、ジンの話に私が出てこないのを寂しく感じていた。

『うん。いいよ』

外へ出て、少し離れるのもいいかも知れない。
タイムリープから。
ジンの過去から。

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