見出し画像

うろんな客と他人

上席のうろんな客(生後1ヶ月半)が職場にいらっしゃった。どうやら奥様が産後初の美容院に行かれるのでその間見ているとのこと。ずいぶん早い社会科見学だが、どんどん新しいことを吸収させるのはきっと良いことだ。ほおらごらん、これがやる気のない社会人だよ。こんな労働環境を赤子に見せてもいいのだろうか。真実を見せるのはまだ少し早くないだろうか。けれどもよその家の教育方針には口を挟まないほうがいいので静観している。

職場は一応掃除しているとは言うものの若干の埃くささがあって清潔な空間じゃないし、喫煙者がいるから三次喫煙の恐れもある、新生児にふさわしくない環境だと思うのだが…それは置いといて。

私は一人っ子で身近な「うろんな客」は会ったことが無い。仕事も子供とはなんの関係もない職だ。友人の「うろんな客」は抱いたり膝にのせて遊んでもらったり(?)したことがあるけど2時間一緒にいただけだ。4歳になるその客人は見知らぬ人の前だからか、手のかからない良い子だった。暴れたりしないし、子供って良い意味で扱いやすくてピュアで面白い生き物かもしれないと思ったのであった。別の1歳前後の客人は泣いて飲んで泣いて排泄して寝て泣いてと全力で生命活動を維持していた。何回も泣いていたけど私は泣き声をストレスに感じることは無かった。ただ、私の五感に「生命力」(せいめいぢから)を強く響かせてくれた。

37兆の細胞が分裂を繰り返して見た目を変え、選択と行動の連続によって大人になっていく。あと20年したら深海からやってきた巨悪サメと戦うような戦闘世界の命運を握る立場になるかもしれない。もしくは宇宙から来た邪悪グレイと戦うか滅ぶか、地球の行く末を託される人物になるかもしれない。なんにも描かれていないまっさらな本がここにあるんだ!とほぎゃあほぎゃあ泣きながら宣言している。この声を聞いてしまうと、良い世の中であってくれと思わずにはいられない。1ヶ月半の客人はまだコントラストのついた世界しか見えていないらしい。作り物のような綺麗な目は何を映すのだろうか。

どうか、どうか健やかに成長することを願ってやまない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?