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生命のリズムとバイオアート:非言語的コミュニケーションの美しさ


※このnoteは、Podcast番組「漫画とうごめき」で語っている言論部分を文章化したものです。漫画とうごめき本編は、最下段のリンクからどうぞ。

最近、バイオアートについて研究していて、その世界の奥深さに引き込まれる毎日である。バイオアートとは、生物や生命科学の技術を使って作り出される芸術の一種だ。しかし、それは単に生物を素材とするだけのアートではない。人間以外の生物との交流から、まるで新たな世界を見つめ直すかのように感じる。

人間の言葉は、当然ながら人間以外の生物には通じない。しかし、それを異なる記号、つまり視覚や音、触感などに置き換えて関係性を築き、表現にするのがバイオアートである。そう考えると、バイオアートとは生命そのものとコミュニケーションを取る試みであり、その魅力は無限大だと思う。

具体的には、あるアーティストは特定の生物、例えば粘菌と共に作品を制作する。粘菌というのは、ネバネバとした質感を持つ生物で、彼らが移動することでアート作品が生まれる。それはまるで、彼らが自分たちの意志でカンバスを彩っていくかのようだ。

言葉では意思疎通ができない粘菌との作品作りでは、粘菌が好む色や光、行動の傾向を見つけ出す。それらはすべてが記号となり、それらの記号から生まれる作品がバイオアートである。この記号システムは、人間が言葉を使ってコミュニケーションを取るのと同じだと思う。

そして、この記号システムは、生物を制作の一素材にするだけでなく、作品を共に創り出すパートナーにもする。だから、バイオアートでは人間という存在と、他の生物という存在の境界が曖昧になる。つまり、自分と他者との関係性、そしてその交わりが作品になるのだ。

有名な評論家が一度言ったことがある。「世界にあるすべてのものは流れとして存在し、流れが持つリズムがそれを形態へと形成する」。それはまさに、記号システムというリズムが生命とアートを結びつけるということではないだろうか。このリズムこそが、世界の本質を捉える鍵となるのだ。

リズムとは反復であり、それ自体が時間感覚をもっている。これが、文学やアート、そして生命そのものの交流に共通する鍵となる。文字通り、リズムは生命の鼓動、心臓が送り出す命のリズムとも言えるだろう。

こう考えると、バイオアートは人間と生物、そして自然界全体とのダイアログであり、その対話から新しい意味や美が生まれてくる。それはまるで、川が流れ、岩がその形を変えていくような自然のプロセスそのものだ。

この世界のすべての存在が、互いに影響を与え合いながら流れるリズムを形成し、そのリズムが空間を作り出し、広がっていく。それはまるで川の水が流れ、その流れが大海に至るまでの風景を形成するようなものだ。

そして、私たちはその中に存在し、私たち自身もその流れの一部である。自分と他者、人間と非人間、すべてがリンクし、絡み合うことでこの世界は存在している。そしてその流れとリズムが、バイオアートという表現を通じて視覚化される。



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