津田沼木夜受講生用 「物理の復習の手法」

Introduction

 どうすれば合格できるのか。みなさんには1年間, これだけを考えて生活してもらいます。合格するために, 初回の授業にて, 物理は復習が大事だといいました。開講から2回の講義を経て, 皆さんもすでに復習を進めてくれていることと思います。ですが, 以下のような不安や心配がわき始めている人もいると思います。『復習のやり方はこれで良いのだろうか』, 『復習が十分できているかわからない』, 『何をすれば良いかわからない』…。

 そこで, 当記事では復習の目的とその到達基準を明確に定義し, その達成のために必要な方法をお伝えします。当記事で扱う「復習の方法」は, みなさんが今日から使える手法です。いつ何をすればよいのか, どのように計画を立てて, 復習の最中には何に気を遣えばよいのか, どれくらいの時間がかかるのか, そこまで明記しています。
 授業は, 教授されただけでは不十分です。学生が理解して, 充分に活用してもらわないことには, 授業の役割を果たせていないといえます。僕の担当クラスに在籍する学生にだけは, 授業内容を活用して入試問題を解けるところまで進んでもらいたいと思います。当記事をその最も基礎的な土台に位置付けていただけたら幸いです。


現状把握

 では, 本題に入りましょう。いきなりですが, この問題を解いてみてください。制限時間は10分です。10分で満点以外は不合格です。それでは, 用意, スタート。

 ノートと鉛筆を用意し, 時計を見ながら10分測って解いてください。解かずに先を読まないでください。自分の実態を把握してもらわないとこれから先の内容について, 実感を持ってもらえないからです。



 それでは, 続きです。どうでしたか, 解けましたか?10分で最後まで解けたという人は, 復習のやり方, 量ともに問題ありません。今の方法で勉強を続けてください。
 対して, 『運動方程式は立てられたけど, 束縛条件が書けなかった』とか, 『運動方程式と束縛条件は書けたけど計算まで含めると10分では間に合わなかった』とか, 『恥ずかしいけど, まったく手がつかなかった』という人が多かったのではないでしょうか。はじめにはっきりと言っておきます。これらに当てはまる人は得てして「復習をやってはいるけど, 完璧とは言えない」とか, 「復習不足」とか言いますが, そういった甘い言葉を使ってはいけません。「復習をやっていない」に等しい状態です。
 そんなことを言われたらイラっとするでしょうか。『こっちは忙しい中復習やってんだよ!上からの立場で偉そうなこと言うな!』と思うでしょうか。なるほど, でしたらもっとはっきりと言いましょうか。授業で扱った問題も解けないようなやり方でこれから先1年も復習続けるの?やばくない?

 でもね, まだ大丈夫です。ギリギリ間に合います。多くの受験生が似たような状況なんです。『復習しなきゃいけないことはわかっているけど, どうすれば良いかわからない。』, 『問題を解いてはいるけど, 物理ができるようになっているかわからない。』そういった, 漠然とした不安, 何が不安なのかすらわからないまま無限に感じる不安を抱えたまま, 時間が過ぎていく日常を送っている受験生のなんと多いことか。だからこそ, 今, 『自分もそうだ』と思ったみなさん。逆手をとって考えましょう。周りもみんなそうなのです。これはチャンスなのです。まだ5月の頭です。日本中の受験生たちが不安を抱えたまま停滞しているうちに, 我々は実効的な方法で, 一歩一歩前進していきましょう。

復習の手法

 具体的な話に入りましょう。まずはこちらをご覧ください。

§力学

第1回(4/21)
■運動方程式
・C (3分)
・D (3分)
・E (3分)
・F (3分)

第2回(4/28)
■運動の記述
・例題1 (5分)
・例題2 (5分)
・例題3 (5分)
・例題4 (5分)

・問題4 (10分)
 ・運動方程式を自力で立てる(3分)
 ・束縛条件を自力で立てる(2分)
 ・計算を実行し, 加速度を求める(5分)
・問題1 (5分)
 ・自力で最後まで解く(5分)


初回(4/21)と, 第2回(4/28)の授業内容(章立てと扱った問題)の一覧です。問題のあとには(○○分)と時間が記してあります。これは復習の際に目安となる制限時間です。
 いきなりですが, 復習の手法におけるもっとも大事な結論をはじめに言います。各問題について, この制限時間内に, 最初から最後まで解答が書けるようになってください。実際に書いてください。全部の問題でできれば復習は完了です。ただし, できない限りは復習は不十分, いえ, 復習を始めたことにすらなっていないと扱います。
 とはいえ『それだけじゃわからないよ』という声も聞こえるので, さらに詳しく見ていきたいところですが, 手法を箇条書きにしたところで,

①    制限時間内に解いてみる(授業が木曜日なので, 遅くとも土日までに)。
②    解けなければ, ノートを見て最後まで手で追う(計算をちゃんとやることが大事)。
③    翌日再チャレンジ, 解ければ終わり, 解けなければ②に戻る。

これだけです。以下では, この3手順を軸に , 運用上の注意点を2つ挙げてから, 実際にかかる時間を見積っていきます。

復習するうえでの注意 その1

 まず, 注意点の1つ目。 ②の段階では, 実際に手を動かして結果が合うまで計算をすること。ここは絶対にはずしてはいけません。まずは, 計算をしている時間だけが復習完了までの到達度を前進させると思ってください。ひとつひとつの計算を確かめ, 数回繰り返せば, すばやくできるようになります。 脳, いや「腕」にインストールされた計算の量がその人の物理の実力を形作ります。こう言うと, 『え, 原理・原則を理解することが大事なんじゃないの?』と思われるかもしれません。確かに原理・原則を理解することが重要です。しかし, その, 原理・原則を理解するという目的に向けて僕らにできることは, 一見無機質に見える計算作業だけなのです。ここについては, 近いうちに別稿に詳述します。

復習するうえでの注意 その2

 それから2つ目です。 授業で扱った以外の考え方(別解)をすることは大いに研究になりますが, これで「解けたから終わり」とすると, やはりこれも, 復習の完了はおろか, 開始したことにすらなりません。授業で扱った考え方, 解き方が実行できるようになることは絶対にはずしてはいけません。
 以上を心がけて復習に取り組んでください。ひとまず初回, 第2回ののち, 5月末まで, つまり第3回(5/12), 第4回(5/19), 第5回(5/26) の3回。この3回の復習を意識的に取り組んでくれれば, 習慣になります。

復習にかかる時間

 次に, かかる時間を見積もってみましょう。まず, 授業終了後なるべく早いうちに, 制限時間内に解いてみます。例えば初回(4/21)の復習であればプリントのC,D,E,Fについて, 運動方程式を立てて, 設問に答える。ここまでで12分です。授業ノートと同じ記述ができていれば終了で構いません。この確認にかかる時間は追加で10分くらいでしょうか。計算が大事だとは言いましたが, 紙の空いたスペースに煩雑に計算だけ書いて終わり, としないでください。「運動方程式より,」という日本語の記述も含めて, 白紙に整然とまとめてください。その後, E, Fの問題では, 必ず加速度や垂直抗力, 糸の張力を, 計算によって求めてください。
 白紙に構築できなければ, ノートを見返して運動方程式を立てます。運動方程式の数式は, 授業で書いた書式以外は認めません。左辺右辺が逆になっていたり, どうせ加速度を求めるのだから, と, 最初からa=の形で書いたりしないこと。明日, 自力で同じ運動方程式が立てられそうか, 自問自答しながら書いてください。最後に計算して結果を確認して今日は終わりです。こちらにかかる時間は個人差がありますが, 長くて30分ほどでしょう。よって, かかる時間の合計は最大でも52分。
 そして, 翌日に再チャレンジします。運動方程式を立てて, 設問に答える。最大で12分です。2回目ですから8分もかからないでしょう。確認も5分ほどでできそうです。昨日もできなかったところが今日もできなかったとする。それでも今日の確認にさらに昨日と同じ30分がまるまるかかる人は少ないでしょう。長く見積もって見直しと再計算の作業に20分。すると33分です。3日目になればさらに短縮できるでしょう。このようにして, 各問題が自力で解ききれるようにしていくのが復習の手法です。

 どうでしょうか。いままで抱えていた漠然とした不安が少しは, いや, かなりやわらいだのではないですか?
 ちなみに, 今みなさんが持っている安堵感は「何をすれば良いかがはっきりとした」ことによるものです。物理に限らず, いえ, 勉強に限らず何事についても, なるべく細かなレベルでこなすべきメニューを具体的に列挙すること, つまり, あとはこれをやるだけ, という状態にすることが計画を立てる際の鉄則です。メニューがはっきりすれば時間が見積もれます。あとは, 明日の何時何分から何時何分の間に, 見積もっただけの時間が確保できるか探して, 手帳に記入してしまいましょう。「バーチカル(vertical 縦の)タイプのウイークリー(weekly 週ごと)の手帳」は受験生必須アイテムです。
 
 ところで, 高校時代の水谷少年は, 物理の復習を週に1日で行っていました。特に, 当時の授業には小テストがありましたから, 直前(前日とか)に復習して小テストに間に合わせるサイクルでした。しかし, 今は, 2つの観点から下手なやり方だったと思います。1つめは, 授業から時間が空くと, 思い出すまでに時間がかかるから非効率である点です。授業当日から翌日には復習を始めましょう。もう1つの観点は, 一度に詰め込もうとしてボリュームが増えすぎる点です。上記のとおり, そもそも着手が遅いので当時の私は自分で書いたノートを「解読」するところからスタートです。そこからはじめて, 計算をマスターするまで繰り返すと, 合計4時間以上かかることが常でした。当然これを1日でこなそうとしたって, 人間の集中力はそんなに持ちません。復習はなるべく早めに手をつけること, 小分けにしてこなしていくことを教訓としてお伝えしておきます。

Conclusion

 以上が当記事で紹介する復習の手法になります。各問題について, 制限時間内に最初から最後まで解答が書けるようになることを目的とし, 手段は

①    制限時間内に解いてみる(授業が木曜日なので, 遅くとも土日までに)。
②    解けなければ, ノートを見て最後まで手で追う(計算をちゃんとやることが大事)。
③    翌日再チャレンジ, 解ければ終わり, 解けなければ②に戻る。

の繰り返し。注意点は, 実際に手を動かして結果が合うまで計算をすることと, 授業で扱った考え方, 解き方が実行できるようになることです。計画を立てる際には, なるべく細かなレベルでこなすべきメニューを具体的に列挙したのち実行する時刻を決め, その際なるべく早めに手をつけること, 小分けにしてこなしていくことを意識するとよいでしょう。このブログを読んでいる, つまり運良く (運悪く?) 僕の担当クラスに在籍することになってしまった皆さんの受験生ライフが, 実のある成果で溢れることを祈っています。

予告 

次回講義は第3回5/12(木)です。摩擦力について1から扱い, 問題3を解きます。次に, 空気抵抗について紹介し, 問題5を解きます。最後に「運動量」と「力積」について紹介し, これらに成り立つ関係を導いた後, 衝突現象の解法を整理して問題6を解きます。

また, 当ブログにおいては, 週末までに夏期講習紹介を整理します。数日に1度で充分ですので, 今後も覗きに来てください。

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