都内の縄文遺跡をめぐる② 東京都埋蔵文化財センター/竪穴住居内で火焚きが体感できる都内屈指の遺跡
・京王・小田急線 多摩センター駅徒歩5分
東京の縄文遺跡を語る上で外せないのが多摩センター駅の「東京都埋蔵文化財センター」だ。多摩ニュータウンを開発する際に関東最大規模の膨大な縄文遺跡が発掘され、その展示・管理のために設立されたのがこの東京都埋蔵文化財センター。ニュータウン開発にあたってほとんどの遺跡は調査の後に埋め戻されたため、その痕跡を確認できる数少ない施設だ。
センターに入って階段を上ると、「多摩ニュータウンのヴィーナス」がお出迎えしてくれる。「縄文のヴィーナス」を彷彿させる造形だが、こちらの方が柔和な表情をしている。
土器だけでなく土偶や呪術具であった「石棒」も出土しており、かなり長い期間にわたって定住が行われていたことがわかる。
縄文土器だけでなく、弥生土器も出土しているが、数は少ない。縄文時代、多摩地区での定住は数千年(7,000年といわれている)にわたり、最盛期には数千人が暮らしていたと思われる巨大集落だったが、なぜか縄文後期から弥生時代に入ると遺跡はほぼ消滅する。気候の変化や稲作の本格化による移住が行われたためといわれているが、本当のところはよくわかっていない。
しかし、皮肉なことに縄文人が多摩を捨てたおかげでニュータウンの開発が行われる現代まで、一切手付かずの遺跡が保存されることとなった。
集落を再現した模型が細部に至るまで素晴らしく、ずっと眺めていたくなる。
「新築中」がかわいい笑
隣接されている「遺跡庭園 縄文の村」がまた、素晴らしい。ここの林は縄文時代のクリやドングリ・クルミなどが再現されており、竪穴住居もコンクリートの復元建築ではなく、茅葺でリアルに復元されていて中に入ることもできるし、デモンストレーションで火焚きも行われている。
火焚きの様子。
しかし、火焚き中に中に入ってみたが、煙くてかなわない。これにはビビった。本当にこんなに換気の悪い空間で毎日煮炊きを行っていたのだろうか??一酸化中毒になってしまいそうだ。
火焚きを行ってくれたおじさんに「これ本当にこんな環境で焚き火してたんですか?キツすぎませんか」と尋ねたところ「そもそも茅葺の屋根をこれだけの大きさでこしらえるのは現代でも至難の業だし、実際は違ったんじゃないかと言われている」「なにしろ、床しか見つからないから屋根は想像するしかない。タイムスリップでもしない限り、どんな建物だったのかは全くわからない」とのこと。
さしずめ、今の復元竪穴住居はティラノサウルスが直立していたと思われていたのと同じようなものか。土器を使って室内で煮炊きを行っていたことは確実だが、どのような構造の建物で縄文人が暮らしていたのかは、実はあまりわかっていないのだ。これにはロマンを感じた。
十年後の教科書には、全く違う形の竪穴住居が掲載されているかもしれない。
都内最大級の遺跡を堪能できる「東京都埋蔵文化財センター」、縄文ファンならサンリオピューロランドのついでにぜひ訪れてほしい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?