殺されるより殺す派

冷え性の皆さん、生きてますか。私は凍死寸前です。どうも上乃葵です。人間界にも冬眠制度を導入したい。

さて、本日2月3日の産経新聞関西版の夕刊に、私の書いたビブリオエッセーが掲載されています。3回目の掲載。

画像1


https://www.sankei.com/smp/west/news/210203/wst2102030028-s1.html


結構な量を書き直していただいてるので、下に置いてる元の文章も読んでみてくださいね。
高校生のとき、私の作文が学科通信に載ると聞いて喜んだのも束の間、教員によって書き直されると知った途端「それなら私の名前で出すな」ってキレたのが懐かしい。若かったですね。えっ、もう10年以上前…?


「顔のない十字架」
赤川次郎・著
(光文社)

 ‪数少ない私の蔵書に、際立って古い本がある。紙は茶色になり、いつページが外れてしまうか分からない。私が産まれる八年前の、昭和六十年の初版一刷。元は母の本だ。私が同著者のデビュー作『幽霊列車』を読み切ったとき、挑戦状とばかりに渡されたのが、この『顔のない十字架』だった。
 ‪佐知子の弟が車ではねたのは誘拐犯だったようで、宛先のない脅迫状を持っていた…という犯罪のオンパレードで物語は幕を開ける。描かれるのは月曜日から翌週の月曜日まで。たった一週間だ。
 この作品で最も魅力的なのは、殺し屋である辰巳の存在だと思う。辰巳は、弟の罪を隠蔽しつつ誘拐された「娘」を探す佐知子を殺そうとした。だが二人は協力関係になり、やがてお互いに惹かれていく。辰巳との恋の行方はどうなるのか、「娘」は見つかるのか、とハラハラの連続でページをめくる手が止まらなかった。読後の私は、すっかり辰巳に心を奪われていた。そのことを母に伝えると同意され、驚いたのを覚えている。異性の好みが合わない私たち母娘には珍しい現象だったからだ。しかし、辰巳が実在したら、たまったものではない。彼は小説の中にいるからこそ愛せるのだ。どれだけ魅力的だとしても、自分の命を狙っていた人を好きになれるとは思えない。‬
 ‪幸か不幸か、私は素敵な殺し屋にも誘拐犯にも出会わないまま今まで過ごしてきた。でも、こんな過激な一週間、人生で一度ぐらいなら経験してみたい気もする。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?