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『ゲンキジャパンを10倍楽しむ方法』第2回:ゲンキジャパンとは何か?(中編)

初めに

はい『ゲンキジャパンを10倍楽しむ方法』、第2回目の投稿となります。想像以上に書くのメンドイから、もう前編だけでやめたろかなーと思ったんですが、意外とナンパ友達から好評やったもんで、中編も書くことにしましたー。

やっぱ何事もモチベは外からもたらされますな。ま、貶されたら貶されたで、意地でも書いてましたが(笑)

さて、メンバー紹介やグループの歴史を振り返った前編に続き、この中編と次回後編ではゲンキジャパンがYouTuberとして如何にエキセントリックかを考察していきます。幾つかのキーワードを深掘ることで夾雑物が取り除かれ、ゲンキジャパンという特異なグループの全体像が浮かび上がってくるでしょう。


キーワード①「俺はYouTuberなんて嫌いだ」


自身のラジオ『鯨の大爆発』でそう語ったのは、YouTuberであるゲンキジャパンのジュンペーこと松枝純平です。

"松枝"と聞いて、小説『春の雪』の主人公、松枝清顕を連想した三島好きのそこのあなた!

はい、ジュンペーも三島由紀夫が好きです。彼の場合、作品よりも三島の生き様が好きなようだけど。

また、"松枝"と聞いて、盆栽の松柏類を連想したそこのあなた!

はい、ジュンペーも盆栽が好きです。年配の知人に土の入れ替えや夏場の剪定方法を学びながら、着実に"Bonsai Master"への道を歩んでいます。彼、まだ26歳なんすけど、盆栽に限らず公園や庭園を散策し樹木や草花を愛でるというジジ臭い、違った(笑)、風雅な趣味を持っています。

むむ、ジュンペーのパーソナルな部分への言及が長くなりましたね。

「俺はYouTuberなんて嫌いだ」発言に戻ると、自分自身がもう何年もYouTube活動をバッキバキにしていながらYouTuberが嫌いだと断言する様に、地蔵はレヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』を想起しました。

レヴィ=ストロースはフランスの文化人類学者で構造主義の祖と言われる現代思想好きにはお馴染みの人物。

『悲しき熱帯』は1930年代のブラジルの少数民族を訪ねた旅の記録をまとめた紀行文です。

その『悲しき熱帯』の冒頭にはこう書かれています。

「私は旅や探検家が嫌いだ」「それなのに、いま私はこうして自分の探検旅行のことを語ろうとしている」

世界中に調査旅行をするのが宿命である人類学者の自己否定を内包した独白を目にし、初っ端から衝撃を受けた読者も多かったのではないでしょうか。

レヴィ=ストロース著 『悲しき熱帯』上下巻 中央公論社刊

「レヴィ=ストロースなんかとの大袈裟なアナロジーはやめて~」とジュンペーの嘆きが聞こえてきそうですが、やめません!(笑)

ラジオを聴く限り、ジュンペーの発言の大意はこうです。「日本のYouTuberの殆どは全く面白くない。俺は子供の頃からテレビっ子だったので、テレビで活躍した芸人達を尊敬しているが、日本のYouTuberへのリスペクトなんか全然ない。ゲンキジャパンもテレビが輝いていた時代のお笑い番組にインスパイアされて企画を作っている。なので"YouTuber"という括りの中にゲンキジャパンを入れるのはやめてくれ。俺らは他のYouTuberと違うんだ」

いやー、尖ってますね。プライドとTV愛と芸人愛と自己矛盾がごちゃ混ぜになった複合感情の発露に地蔵は正直痺れました。実力の無い若造が大言壮語しているだけなら一笑に付しますが、ゲンキジャパンは確かな実力がありますからね。

「さよか。ほな、どんだけおもろいものを見せてくれるか楽しみにしてるで」と、ジュンペーと同じく昔のお笑い番組が大好きな僕はもう期待するしかありません。まだコンプラが緩く、面白い企画を好き放題できた80~90年代のお笑い番組の壁は厚く、とてつもなく高いでしょうが、その高みを目指すZ世代のYouTuberを年輩者としては応援せずにはいられないですね。

ここで察しの良い読者の為に申し添えると、第1回の前編でジュンペーの紹介を素っ気なく終わらせたのは、この中編と後編でこれでもか!と彼について言及する予定だったからです。特にその表現者としての鋭角な信念について。

まずゲンキジャパンを知らない読者の方に改めてジュンペーを紹介すると、彼はゲンキジャパンの頭脳ですね。企画の立案から構成、演者への演出、動画編集の監督にコラボ相手との折衝、グループの短期計画から長期計画の策定、撮影旅行時のスケジューリング全般などを担当。

要はゲンキジャパンを組織として成り立たせている業務を一手に引き受けている感じです。その役割はTV番組のプロデューサーに近いかもしれませんが、職掌はもっと多岐に渡るのではないでしょうか。

TV業界ほど分業化されておらず、小さな組織のYouTuberにとっては"兼務"が当然とは言え、ジュンペーがカバーしている業務が広範囲なのは動画やラジオを視聴していれば分かります。

しかもジュンペーは完全な裏方ではなく、演者としても動画に登場します。マッコイ斎藤や佐久間宣行への憧れを隠さない彼にとって、"でしゃばり裏方"がベストな立ち位置のようです。野球で喩えると南海時代の野村克也や選手生活晩年の古田敦也のようなプレイングマネージャーといった役割ですね。

海外サッカー好きの自分としては、ACミランやイタリア代表で活躍したピルロやバルサやスペイン代表で活躍したブスケッツ等、攻守の要となりゲームを支配する名ボランチもジュンペーの役割にダブらせたくなります。

ここで余談ですが、レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』には終章にも印象的な次の一節があります。

「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」

意地悪で不敬な地蔵はこの文学史に残る有名な言葉をこう改変します。

「ゲンキジャパンは人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」

冗談、冗談です!人間ちゃん、ゴメンなさい!!(笑) 人間はゲンキジャパンが存在する限り、絶対に必要なキャラです。

では、悪ふざけはこの辺にして、次のキーワードに進みましょう。

※追記:2023年12月末で人間が脱退し、この悪ふざけの予言は悲しくも的中してしまった…

キーワード② ノマド系YouTuber


レヴィ=ストロースと違い、ゲンキジャパンは旅行が大好きです。いや、旅なくしてゲンキジャパンは語れないほどです。これまでの5年の歴史の中で本拠地こそ福岡⇒東京の2か所ですが、その間どれほどの"旅"をこのグループがしてきたか、古参の視聴者の方達は良くご存知でしょう。

思いつくままに過去から現在までの旅先を挙げてみます。

国内:大阪、京都、名古屋、北海道、沖縄本島、宮古島、湘南(毎年夏)

海外:ニューヨーク(3ヶ月滞在)、パリ(3ヶ月滞在)、韓国、ハワイ、台湾、ロスアンゼルス(1ヶ月滞在中)

メインのナンパ&プランク企画のみならず、旅先のオフタイムもサブのvlogにバッチリおさめる。そして撮れ高満載の動画データと共に、四人は忽然と現地の宿(アジト?)を後にして意気揚々と次の旅先に向かう。

何かお宝を奪取した後に、華麗かつ陽気に逃走するルパン一味のようじゃないですか(笑) もちろんこれはアニメのルパン三世との安易なアナロジーなので、ゲンキジャパンはルパン一味のような愛すべき悪党ではなく、健全で愛すべきYouTuberなのは強調しておきましょう。あ、人間ちゃんは過去に"おいた"が有りましたな(笑)

ところで、昨春にアルセーヌ・ルパンの祖国フランスをゲンキジャパンが旅先に選んだ理由を皆さんは知っていますか?実は熱烈な岡本太郎主義者であるジュンペーが太郎の留学先だったパリに行きたかったというのが真相なのです!

この真相をジュンペーがラジオ 鯨の大爆発で照れながら語っていたのは、コアなファンの方達なら知ってますよね(笑)

パリ編のサブチャンでは、ソルボンヌ大学(旧パリ大学)の重厚な校舎の前からジュンペーの深い岡本太郎愛が語られます。

そのシーンの字幕が素晴らしいので引用します。

『パリ大学で哲学を学んでいた太郎はミュゼ・ド・ロムを見て衝撃を受け、民族学科に移籍。レヴィ=ストロース、ミシェル・レリスらとともにマルセル・モースに学び、一時は筆を折って研究に没頭する。このときの体験が「芸術は商品ではない」「芸術は無償、無条件であるべきもの」「芸術とは全人間的に生きること」という太郎の芸術観を醸成した。』

出典:サブチャンネル 2022年3月27日投稿動画『ちゃんゆう、舌ピあけました。-今週のゲンキジャパン-』7分24秒から

何とここでもレヴィ=ストロースの名が(笑) ジュンペーは覚えてますかね? 当該動画もここで挿入しておきましょうか。舌ピを開けたちゃんゆうのド迫力の絵にビビらないでくださいね(笑)

また、パリ編の他のサブでは岡本太郎に影響を与えた人物として、ジュルジュ・バタイユが一口メモで紹介されています。どこの世界に動画内にバタイユの紹介が入る、ナンパ系YouTuberのチャンネルがあるでしょうか!(笑)

そういった知的なシーンとは裏腹に、ゲンキなどはパリのシャンゼリゼ通りの名前も知らないまま彼の地に行ってる。僕なんて名前が示すように『動かないこと地蔵の如し』の出不精なので、その蛮勇とも言うべき圧倒的な行動力が羨ましくなります。

このカシコとアホさがない交ぜになったアンバランスさもゲンキジャパンの大きな魅力ですね。ちなみにゲンキはシャンゼリゼ通りの事を「フランス宮殿ストリート!」と快活に答えた後、現地の青年への"ネイマールチャレンジ"で抜群のコミュ力を見せてくれます。

一連のやり取りは、サブチャンネル 2022年3月20日投稿動画『【vlog】パリ着いたらもちろんtinderかますっしょ-今週のゲンキジャパン-』7分46秒~を参照。この動画も入れておきましょう。

ここから漸くキーワードのノマド系YouTuberについてです(笑)

シボレー ノマドやスズキのエスクード ノマド等の車名に使用されたり、ノマドワーカーなんて言葉も10年くらい前から使われているようですが、僕がまずイメージする"ノマド=遊牧民"は、ジル・ドゥルーズが提唱した"ノマディズム nomadism"なんですよね。80年代のニューアカデミズムの流行時に日本でも人口に膾炙したタームになります。

「レヴィ=ストロースの次はドゥルーズですか!彼が提唱したノマドの概念をゲンキジャパンの旅好きの解釈に援用するなんて…。ウチらはただのナンパチャンネルやけん、恥ずかしいから今度こそやめて!」とジュンペーのクレームがまた聞こえてきそうですが、今回も絶対にやめません!(笑)

コトバンクに"ノマディズム"について明快な解説が載っているので、一部引用します。

ノマディズム (nomadism)
『前略、フランスの哲学者ジル・ドルーズらによって提起された概念。本来、遊牧民をはじめとして非定住的な生活を送る人々(ノマド)の生活形態を意味する語であるが、1970年代以降、フランスを中心に展開した新しい思想の流れのなかで、非定型的・非同一的な多様な生の可能性を表現するイメージを担うことばとして多用されるようになった。画一的な定義を与えることはむずかしいが、おおむね、国家や社会や集団のなかで与えられる固定した地位や役割を拒否し、中心的・求心的な権力や権威から絶えず逃走するような生のあり方を称揚するものといえる。また、世界のさまざまな周辺的な場所に生息する少数者の生や、巨大な支配の構造によって虐(しいた)げられた人々の抵抗のイメージと結び付くと、システムを攪乱(かくらん)する運動として、美的・倫理的な価値、ひいては政治的な価値を帯びることになる。後略』

出典:コトバンク/小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

自分は引用文のうち、太字にした部分が"YouTuber"という或る意味、価値紊乱的な社会的ポジション、とりわけゲンキジャパンのように旅から旅を繰り返し、行く先々でトリッキーなナンパやプランクを一般人にガチで仕掛けてきた集団に当てはまるなーと思ってしまうのです。多少贔屓目に見てますけどね(笑)

だからこそ、昨年8月にゲンキジャパンハウスに定住して以降のメンバーの落ち着きを実は危惧していました。経済的に満たされて、賃貸と言えど大きな一戸建てに住み、昔のアグレッシブさを忘れてしまったんではないかと。

ゲンキジャパンには決して"ノマド=遊牧民"という牧歌的なイメージに収まらない、ドゥルーズが語るノマディズムの実践者であり、破天荒なトリックスター的な存在でいて欲しいと願うわけです。

その意味で昨春のパリ編以来の大型海外旅行企画である今回のLA編では、彼、彼女らの"ノマド系YouTuber"としての熱き血が目覚めるのか大いに注目しています。

それでは、第2回:ゲンキジャパンとは何か? (中編) は以上となります。

次回の後編では、更にゲンキジャパンの尖がった魅力を考察していきますので、どうぞご期待くださいー!!

※注意:著作権者(有縁地蔵)からの許可無く、掲載内容の一部およびすべてを複製、転載または配布、印刷など、第三者の利用に供することを禁止します。

【メインチャンネル】

チャンネル登録者数 45.4万人 (2024年4月27日現在)

【サブチャンネル】

チャンネル登録者数 4.41万人 (2024年4月27日現在)

【ラジオ 鯨の大爆発 (ジュンペー出演) 】

毎週水曜日20時頃の週1回配信。

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