2021年映像ベスト10

1.アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン(シドニー・ポラック/アラン・エリオット)
2.ザ・ビートルズ:Get Back(マイケル・リンゼイ=ホッグ/ピーター・ジャクソン)
3.ザ・スーサイド・スクワッド(ジェームズ・ガン)
4.RWBY Volume 5(ケリー・ショウクロス)
5.シン・エヴァンゲリオン劇場版(庵野秀明)
6.ミッチェル家とマシンの反乱(マイク・リアンダ)
7.Kanye With Special Guest Drake Free Larry Hoover Benefit Concert(Aus Taylor)
8.花束みたいな恋をした(土井裕泰)
9.ウィリーズ・ワンダーランド(ケビン・ルイス)
10.ラストナイト・イン・ソーホー(エドガー・ライト)

次点
・サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)(アミール・“クエストラブ”・トンプソン)
・オモコロチャンネル


 久保さん、元気でやってますでしょうか。今年こそそちらに遊びに行ければ良いのですが、じわじわとコロナ感染者が増えつつあるのを見るとまだしばらくは難しいかもしれませんね。


 さて、今年の上原商店映像ベストテンです。「映像」ですので、映画館で上映されたものと配信を問わず、10時間の映画でも3分間のMVでも、さらに言えば私が映像と感じたものなら何でもありのベストテンです(過去にはオーディオドラマがランクインしたこともあります。脳内に映像が浮かぶので)。
 ここ何年かは説明を加えず作品名だけ列挙していましたが、あとから見て自分でも何でその作品を良いと思ったのか分からなくなることがあったので、久保さんに紹介するついでに備忘録も兼ねて簡単に解説しときます。

 今年のベストテン、簡単に言うと半分は音楽物で半分は一癖あるフィクションです。
 音楽物の中には偶然ですが「撮影だけはされたものの(望ましい形で)世に出なかった音楽ドキュメンタリー」が3本入ってます。1位、2位、あと次点の『サマー・オブ・ソウル』ですね。
 まず1位の『アメイジング・グレイス』は1972年にシドニー・ポラックによって撮影されたもののカチンコを入れ忘れていたために画と音の同期が取れず素材はお蔵入り。それを90年代にアラン・エリオットが編集したものが今年日本で公開されたという映画です。
 そして2位の『Get Back』はご存知のようにマイケル・リンゼイ=ホッグが『レット・イット・ビー』というタイトルで監督した映画のために撮られた素材を、ピーター・ジャクソンが現代の視点から再構成したものです。
 次点の『サマー・オブ・ソウル』は1969年の“ハーレム・カルチャラル・フェスティバル”の記録です。撮影はされたものの商業化の目処がつかなかったため未編集のまま倉庫に眠っていたものをザ・ルーツのクエストラブが2時間の作品にまとめました。

 この3本、出演者のパフォーマンスはもちろん素晴らしいのですが、カメラマンとか撮影スタッフの姿を見るだけでなんかもう泣けて泣けて。
 監督はまあいいですよ。と言うかきちんと作品化されなかったのには監督の責任もあるでしょうし。可哀想なのはこれらの作品に携わったスタッフたちです。汗水たらして撮影した素材が誰にも見られることなく倉庫の隅に眠り続けるわけですから。ギャラさえきちんと貰えりゃいいだろうと言う人もいるかもしれませんが、そういうことじゃないのは久保さんなら分かってくれますよね。そんな素材達がようやくこうして日の目を見ることができたという経緯に想いを馳せると涙無くして見られない。
 ただ、その一方で撮影したものが世に出て世間から高い評価を得ることだけが撮影スタッフの喜びなのかというと、そうでもない気もするんですよ。カメラマンならただもうカメラを回しているだけで嬉しい、という気持ちも絶対あるはずです。『アメイジング・グレイス』の不安定な脚立の上で汗だくになっているカメラマンの姿とか、『Get Back』のクライマックス、アップル本社の向かいのビルの上から手を振り返してくる撮影スタッフたちの興奮した顔とかを見ていると、「ああ、俺はいい仕事を選んだな」としみじみ自分の職業が誇らしくなります。

 実は私も去年、編集までしながらその後制作会社のトラブルで公開の目処がつかなくなってしまった作品がありまして。そのことはもちろん非常に残念で、いい作品なので皆んなに是非見てもらいたいという気持ち(あとできれば編集も褒めてほしい)でいっぱいなのですが、たとえこの後永久に公開されなかったとしても、編集していた時のあの楽しい気持ちは否定できない、のです。

 そして音楽物がもう一本、7位はカニエ・ウェストが去年の12月に行ったライブの映像です。去年の頭に見た『アメイジング・グレイス』がゴスペルの映画で、去年最後に見たこのカニエのライブもゴスペル・クワイアから始まります。アメリカでは音楽の伝統が真っ直ぐに継承されているんだなと、すごい嬉しいし少し羨ましい。カニエのライブ自体も最高です。何も無い真っ白なステージに照明とスモークだけでこれほど映える演出ができるとは。一見の価値あります。会場で生で見ても凄いのでしょうが、配信カメラの使い方もまた絶妙なんで7位に入れときました。

さて、残りのフィクションについては…これね、それこそ久保さんの家に泊まった時にでも話したいことが山ほどあるんですよ。文字にすると長くなりそうなので日を改めて。今日はここまで。

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