郊外から進む基地局整備。楽天モバイルのなぜ

楽天モバイルの基地局は北九州市や福岡市ではいずれも郊外で整備が進む。しかし、両都市の中心部では意外にも整備するスピードは遅い。なぜだろうか。

考えられるのは、圏外をサポートするために導入しているau(KDDI)とのローミング契約だ。楽天は未開局エリアに関しては、auから電波を借りてサービスを提供している。この契約は楽天の人口カバー率70%になった段階で終了するとしており、すでに東京の区部や大阪市で楽天モバイルのみに切り替わっている。

auの電波を借り続けるのは負担が大きく、あまりauに喧嘩を売るようなサービスも打ち出しにくい。楽天としては人口カバー率の7割超えを早期に達成し、auとの関係を解消させたいという思いが強くあると思われる。

従って、住宅地で基地局を集中整備し、定住人口に対する7割超えを一足飛びに実現させていくというのは自然な流れだ。定住人口の多いエリアをカバーすれば、表向きの人口カバー率を早い段階で高く表現ができるようになるのも営業上のメリットになる。

とはいえ都市部の整備が遅れるため、昼間人口の多い商業地やオフィス街の通信環境は必ずしも安定しない。「街なかのほうがつながらない」というのは利用者の不満を招くおそれはある。

ただ、在宅時間の増加やテレワーク、オンライン授業などの推進を背景に、郊外でも高速通信を必要としている人が増えているのも事実だろう。さきの三木谷浩史社長のプレスカンファレンスでもオフィスで働く人ではなく、家でスマートフォンを扱っている人の写真を出しながら、サービスを説明していた。

従来なら現実の使い勝手を上げるために都市部で基地局を整備しながら、その一方で人口カバー率を増やすために郊外で基地局を整備するという二正面作戦を採らなければならなかった。コロナ禍は楽天にとって「優先順位」をもたらしたのかもしれない。都心部よりも住宅地の基地局を強化することには、楽天にも、利用者にも、一定のメリットがあるというわけだ。

実は販売代理店網も郊外から整備が進んでいる。住宅地需要やシニア世代の取り込み――。競争は新たなゾーンを開拓しなければならない。モバイルネットワーク界の第四極は何をもたらすのか。注視していたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?