Googleの汎用人工知能記事について

https://newspicks.com/news/2399711/
の記事のコメントです。
長文になったのでノートにしました。

Googleの主張は
1) 脳の動作原理の再現を目指していない。

2)人などの脳が情報処理する仕組みについての知見から、人工知能のアルゴリズムの着想とひらめきを得ている。

3) 開発中の人工知能アルゴリズムと似た情報処理過程が、脳内で行われている確認された場合、汎用的な知能システムを構成する機能部品として、方向性が間違っていないと判断できる「ひとつの強力な根拠」が見つかった、ととらえている。

以下、考察。
上記は考え方なので、これ自体とやかく言うものではないが、工学的な応用に対して、とても素直な考え方に思える。

1)、2)について、脳の機構を模倣してマクロな知識を作るには、あまりにも脳のマクロな情報処理は分かっていないことが多い。
よって、完全な模倣を目指すより、実際の結果ベースで工学的な実現を目指すのは実利的であり、情報系の多くのアプローチがこれであろう。

一方、3)は、新しさを感じる。
つまり、「3) 開発中の人工知能アルゴリズムと似た情報処理過程が、脳内で行われている確認された場合」との記載は、人工知能の学習と人の脳の動き(マクロな情報処理)との関係を検証しているのだろう。
この時の脳との対比は、囲碁のような複雑な動きではなく、もっとシンプルな人工知能の学習と脳の動きを対比していると想定される。
工学的なアプローチを取りながら、きっちり脳との対比を追求し基礎的検討をしているのは、さすがに思える。

なお、注意しないといけないのは、ここでは「汎用的な知能システム」を作る方向性の話をしているのであって、その到達可能性については述べられていない。つまり、ある情報処理は脳を模倣した動きを獲得できるかもしれないが、別の情報処理は獲得できないかもしれない。とても冷静な書き方をしてある。

やたら、汎用人工知能がいつに出るとか、そこでの倫理観とか、飛躍的な考え方は、工学的な応用を競争するいる立場としては、それほど意味があるとは思えていない。

○ 以下 矢野さんの意見に対して

矢野さんの意見の前半には、少し違和感を感じる。
1)80-90年代がルールの組み合わせ(ルールベース)の時代であった、というのは正しくない。今の機械学習ブームの根底になる多層ニューラルネットの学習原理はこの時代に確立され、3層ニューラルネットがどのような関数も写像できるということもこの時代に証明されている。現在の成果は、理論的な部分での進展は多くなく、計算機資源を豊富に利用し、多層にすれば学習の成果が出ることが分かって来た、というレベル。あくまで連続的に続いているもの。
もちろん、成果的には最近の進展はすごいが。

2)ルールベースシステムがダメ
ここも少し違う。例えば最近よくある会計処理システムは、仕分けなど一部の部分を除き、ほとんどは会計処理をルールベースで処理するものである。
もちろん将棋など、一部の問題はルールベースではなく、学習システムが優っている。
だと言って、ルールベースダメということはない。
ただ、ここは表現の仕方だけの問題だろう。

3)国会等での議論
 「現在の国会の議論が時に不毛に思えるのは、結果よりも前にルールに従っていたかを問題にしているからです。」
ここ以下はその通りと思います。

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