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楽しくて少し刺激的だったウルムチ(6)

[4]何となくの恐怖

翌日、ホテルからバスで少しだけ郊外に出る。街中には果物や肉の店は見かけたが、野菜を売っているところがない。

市場は、そんな普通の店の間、ドア一枚分くらいの入り口の奥にあった。とても知らない人は入れない隠れ家的なたたずまい。上の写真にある、人が入ろうとしている緑のカーテンのところが入り口。市場の文字もない。ただそこに何かがあると分かるのは、多くの人が出入りすることだけ。あたかも存在を隠しているかのよう。人が集まる場所の多くは、基本的に入り口は1つしかない。これも一度に大量の人の出入りを抑えるシステムなのだろう。

市場の肉屋さん

外出後、ホテルに戻る前に少し寄り道を、と思い、ホテル前の道の一本西の筋に行こうとした。繁華街のすぐ側の交差点を渡ると目に入る鉄柵。先端が尖っていて、その曲がり具合がどこ方向の不審者を拒絶しているのかがわかる。そしてそのエリアに入ろうとすると、また荷物検査の警察官。普通の道に突然検査所が現れる。

とりあえず検査を通過。その先に出てきたのは、いくつものファッションビル。道に面して特に男物の衣類を並べて、売っている。先端ファッションというより問屋街のイメージ。

そのあたりは結構な人出。明らかにウルムチ族系の顔が多い。細い道を曲がるとナンとか地元料理の屋台が並ぶ。売っている多くはウルムチ顔。お店の裏にある団地から出てくる人もウルムチ顔。なるほど、この地域はウルムチ族系の住居地区なんだ(多分)。

なるほど、それで地区の入り口にセキュリティがあるのも納得。本当は納得なんかしてはいけないんだけど。

いつもの癖で、屋台的なパン屋さんとか服屋さんの写真をスマホで撮る。観光地ではないけど、自分にとっての非日常の日常がおもしろい。

ウルムチ族っぽい人が多い地区の服飾ビル

でも急に昨夜のことが気にかかる。昨日は誰かに監視されていた。もしかしたら今も監視されているのかも? 誰かが見ている。何枚か撮ったウルムチ族の人の顔が入った写真。何の目的か?って聞かれるかも。特にこの地区はシステムが特別で、厳重に見張られているのでは?

もちろんそんなことはないだろう。それに何もやましいことはない。でも誰かに見張られている感は、街でもスーパーでも気になった。

そのことは結局ウルムチを離れるまで頭の片隅から追い出て行かなかった。その地域から出ても、スーパーで買い物をしていても。スーパーのカメラも自分を見ている気がする。

[5]個人を監視する社会

この先は妄想だ。

今、中国は日本よりはるかにITが進む社会になり、街にはwechat payやalipayのキャッシュレスシステムが溢れている。

アリババは個人の信用を数値化し、その数値があたかも人の価値を表すように取引で扱われる。

次のステップは顔認証だ。AIにより顔の同定は飛躍的に精度が上がっている。ネット上の情報とリアルの情報が結びつく。それを政府が統制のために使ったらどうなるか?

人の人生は多面的で、ある他人からは自分の一面しか見えていない。もちろん家族でさえも。

この新しい人追尾システムは、その隠れた面をあばき出す。他人どころか自分の知らない自分を記憶している。

悪意を働かせれば、人を簡単にコントロールできる時代が来るのかもしれない。行動を予知し、事故を未然に防ぐという名目で。

そんなことを考えながら、広い世界のことを考える、いい機会だった。

[6]もう一度ウルムチ?

エキサイティングな街だった。思った以上に頭も体もリフレッシュした。精神的には少し疲れたところがあったけれど。

機会があればまた是非来たい。今度はカシュガル、トルファンにも行こう。

このノートのエントリーが悪い方向のレコードとして残らないことを期待しながら。

終わり




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