サンドワーム

「ふん、銃で死ぬなら化け物じゃないな。人間と同じだ。むしろあらゆる賞金稼ぎに命を狙われて、今日まで生きてきた俺の方がよっぽど化け物かもな。」

横たわる巨大なサンドワームに唾を吐いて、ジェーコブは呟く。
「全く、俺の友達をさんざん食いやがって。」
落ちたハットを拾う。ハットには化け物の血が付いていて、それを訝しく払う。
「ジョセフ。今までありがとうよ。」
ジョセフの死体は見当たらない。小さく墓を作り、彼のウィンチェスターとキャップを添える。マルボロに火をつける。そして、信仰深くはないジェーコブは珍しく神に祈った。
「...アイリーン。」
彼女は首から上と多少のパーツを見つける事は出来た。行きずりの女ではあったが、化け物にも動じないはっきりとした女であった。
「...残念だ。」
そう呟くしか無かった。
「...まあ、俺も頭を撃ち抜かれたら死ぬんだがな。」
昨日、どうしてもとせがんで来た、取るに足らないリングを、残骸とかした彼女の指から抜きとりながら言う。
「生憎、まだ出会えてねえ。今回もまた生き残っちまった。」
沈む太陽がトワイライトに変わる。

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