塩・ストックホルム・温

 今日も夢の話を書く。夢は絶対ありえない経験ができて面白い。でかい家に閉じ込められ、塩を飲み、殺されかける夢を見た。

 私は誘拐された。黒ずくめの服装で顔を隠した男だった。車を降りると他の人質と共に二階建ての大きな家にいた。祖母の家に似ていた。大体5人くらいの私たちは各個室をあてがわれ、しばらく生活することになった。

 誘拐犯はどうやら身代金の目的ではなく、純粋に阿鼻叫喚する人を見たいだけのようだった。3日ほどすると私たちはもう帰ることはできないと言われた。犯人は私たちにさまざまな殺害方法を提示した。毒殺、絞殺、銃殺……これらを早い者勝ちで選ぶことになった。

 他の人たちは、今考えるとなぜかわからないのだが痛みを伴う方法を選び(あまり従順ではなかったから、それらを強いられたのかな)死んでいった。私は犯人に従順にしていたので、1番辛くなさそうな殺害方法を選ぶことができた。それが塩を飲むこと。(これも変だ。毒があるのに。)

 高濃度の食塩水を渡される。すでに他の人質は死んだか、閉じ込められるかのどちらかだった。私はすでにストックホルム症候群になっていて、彼のことが好ましいとさえ思っていた。だから従順だったし、こういう生き方を選んだ彼を可哀想だと思った。

 私は食塩を飲んだ後(しょっぱかった)、ああこの後死んじゃうんだと思ってどきどきした。少し気持ちが悪いような気がした。そういえばトイレとか行っといた方がいいのかな、後どれくらいで死ぬのかな、とか考えて「やっぱり不安だし毒も飲んだ方がいいですか」と聞いた。彼は「いやそれは……別に必要ないんじゃない?」と言う。その感じなんなんだ。では2階の自室で横になってでもいいかと聞いた。彼はそれを許した。夢あるあるのご都合展開で、彼も私には優しかった。聞き分けのいい人質だったから、死ぬ前には憐んでくれたのだと思う。

 部屋のベッドで横たわっていると、彼が入ってきた。まだ意識があったので腕を広げると彼も屈んでくれ、ハグをした。無臭だけどあたたかい生き物の匂いがした。真っ黒な服のお腹のポケットにごつごつした物が入っていて痛かった。今思えばあれは銃だったと思う。彼は「これから外に出て自分の宗教を集団自殺させる」と言った。そうかー行ってらっしゃいと思いながら意識を失った。

 夢の中で私はベッドで目覚める。猛烈な尿意でトイレに行くと、すごい色の尿が出た。びっくりした。今ならそれが夢の中で食塩の排出に成功したという意味なのかなと考えられるけど、この時の私はそう思えなかった。まだ私はいつ死んじゃうんだろうと思っていた。

 テレビをつけると彼の作った宗教団体が映っていた。多くの人たちがゴマのように見え、みんな倒れていた。リポーターがヘリに負けじと声を張り上げていたのをぼうっとしながら眺めた。そのうち、彼の起こした数々の事件が、隣国との戦争の火種になったと報じられた。

 彼もいないので私も外に出ることにした。死人しかいない家には鍵をかけないようだ。外に出ると、シーンが切り替わり、国境線にいた。そこは砂漠で、武器を持った人がたくさんいた。まさに今、戦いの火蓋が切って落とされんという状態だった。日差しが眩しい。私は1番端っこの対国の女性に声をかけた。どうやら私は向こう側の国から攫われてきたらしかった。そのことと、もうすぐ死んでしまうからそっちに入れて欲しいと声を張り上げた。そうしたら彼女が日差しに目を鋭くしながらうなづき、1人分道をあけてくれた。私は国を越えた。

 またシーンが切り替わり、私は列車に乗っていた。列車なのに、フェリーのテラスみたいにひらけた列車だ。人がたくさん乗っている。青い空が見える。風が気持ちいい。これは古い列車のようで、近くにいたお爺さんが列車の説明をしてくれる。これはすごく古い列車を先進国からもらってきたのだと。列車には漢字が書いてあり、「これは日本から古い貨物列車をもらって使っているのだな」と思う。

 前の列車へと移動していると、横に知っている人がいた。母だ。お母さんだ。よかった。お母さん。でも私死んじゃうかもしれないんだ。どうしよう、どうしよう、死にたくないよ。死にたくない。泣きそう。声をかけたら悲しすぎるかもしれない。

 ここから意識が覚醒し始める。とりあえず起きて現状を確認した方がいいかもしれない。と思って起きる。起きてから意識が正常になるまで、あとどれくらいで死ぬのかな、死ぬ時は痛いのかなーと思って静かにびびっていた。はーあ、変な夢ー


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