ヴァルカン大佐という男の魅力について



はじめに


 プロメアは最高の映画である。ガロはカッコよく、リオ様は顔がいいしカリスマ力もあるし強い、クレイもラスボスとして余りあるインパクトを持っている。
 脇を固めるバーニングレスキューのメンバー、マッドバーニッシュの幹部にクレイ陣営も個性豊かでみんな素晴らしいキャラクターだ。

 と、言いたいがプロメアファンの多くがリオ様のことが好きだと思う。私もそうだ。
 そしてそのリオ様を殴り煽り欺いたヴァルカンが嫌いと言う人が多いのではないだろうか?
 クレイはそのラスボスとしてのポジションや少なくとも人類のために行動していたという点でまだ擁護ないし好きだという人は多いとは思う。
 しかしリオ様だけでなくバーニングレスキューとも敵対関係のような位置に存在し、横暴な態度と過剰な攻撃性もあり「プロメアのキャラはみんな好き。だけどヴァルカンは嫌い」という人が居ても私は納得ができる。

 だが私はプロメアを語る上でヴァルカン大佐というキャラクターがめちゃくちゃ信念があり、意味があり、魅力に溢れているということを主張したい。
 
 この先に書くことの多くが妄想を根拠としていることを重々了承して欲しい。


ヴァルカンの正当性とクレイへの忠誠心


  ヴァルカンは攻撃性や残虐性が目立つが、その攻撃は必ず理由があるものばかりである。 
 理由とはフリーズフォースとして炎上テロリストを見つけ次第捕まえることであり、それはバーニッシュであれば事件になる未然に捕まえることである。

 つまりヴァルカンは非常に危険なバーニッシュに立ち向かう勇敢な戦士と言えるのだ。
 人類の半数を滅ぼしたバーニッシュの大事件が起きてから映画本編までの時間経過は30年ほど程度であり(映画冒頭にてニュースキャスターのセリフより判明)、ピザ屋での一般人のバーニッシュ差別を考えてもあの世界の人間にとって普通はバーニッシュとは恐ろしすぎる存在と言えるのだ。
 バーニングレスキューのメンバーやピザ屋の店主が理解のある人なだけで、あの世界での倫理観を考えるとバーニッシュへのヴァルカンの攻撃性はむしろ正常と言える。

 大体ピザ屋にバーニッシュが一人居るとわかった時の対応がフリーズフォース十数人がかりであることからもバーニッシュに対してどれだけ怯え、万全を期しているかがわかる。

 現実世界で言っても例えば銃を持ったテロリストが居ればSPが十数人が完全防備をして対応するのだから、それを踏まえて考えればフリーズフォースの仕事も危険だが市民を守るカッコいい仕事と言える。
 (ピザ屋の場合市民の危険性を重視していないところから、市民を犠牲にしても大規模殺戮を抑えようとしていると妄想。にバーニッシュ制圧を優先しているあたり、現実のSPほど人命優先ではないのかもしれない)

 更にヴァルカンは対バーニッシュ用の装甲車に置いて頻繁にその身を晒し、被弾のリスクを背負いながらもバーニッシュ制圧に勤しんでいるのだ。
 プロメテックエンジンの関係上バーニッシュを間違っても殺すことはできないため、安全な装甲車内にこもり引き倒すわけにはいかないのだ。
 そのためなんらかの理由でフルフェイスマスクもないのに危険を顧みず氷結弾を撃つヴァルカンが英雄でなくて何者であるのか、逆に問いたい。
 (メイスとゲーラの炎の壁の時は装甲車で突撃したり、バーニッシュの隠れ家を装甲車で壊して落下させてるあたり、実際は氷結弾やプロメテックエンジン以外でのバーニッシュへの殺傷は難しいと考えられる。
 戦闘フォルムへの変換もしかり、リオ様が「炎は燃やした身体を再生させるパワーをくれる」と発言しており、プロメアには炎を出すこと以外の身体能力強化があると推測される)

 ましてや龍の炎と化したリオ様に対して多くのフリーズフォースが空中で犠牲になる中、臆せず装甲車単騎でも立ち向かい、装甲車がやられても走ることをやめなかったヴァルカンの勇気は教科書に乗るレベルなのだ。
 装甲車を運転をしてくれていたフリーズフォース隊員にも敬礼を。
 
 終盤にてエレナを捕まえに行くシーンなどはフリーズフォースの気高き誇りを感じずにはいられない。
 あの時点でパルナッソス号は一度宇宙へ飛び立とうとしており、その時点でクレイに一度見捨てられているからだ。
 パルナッソス号が飛び立つシーンで市民達の暴動を制圧している姿がモニターに映っており、その制圧をしているのがフリーズフォースの装甲車とギア(フリーズフォースの着ているスーツ)を利用しているため、館内に残されているかも知れないフリーズフォース以外は基本的に見捨てられていると考えられる。
 もしヴァルカンが移民計画のメンバーに選ばれていたとしても、彼は市民を守るため龍の炎と化したリオ様に立ち向かっている勇敢さが考えられる。
 元々移民メンバーに選ばれていなかった場合、クレイ達が自分を見捨てどこかへ行こうとしてると知った上でクレイに命令をされて、それに従う忠誠心を見せたとも考えられる。 
 ガロがクレイの本性を知った時、暫く凹んでいたことと比較するとヴァルカン大佐の心の強さが見て取れる。

 というかそもそもフリーズフォースの隊長をしており、バーニッシュが燃料になることを知ってるヴァルカン大佐がパルナッソス計画を知らないとは考えにくく、彼は自身が助かることよりもクレイの命令に従う忠義の男であることは明確なのだ。


ヴァルカンのギアと身長についての妄想


 上記の文ではヴァルカンが一人無防備でも立ち向かうことが多いというような記述になっているが、実際には違う。
 映画序盤のリオ様を捕獲する時に「レスキューの下っ端は旧式のギアで頑張っているな」と発言しながら自身の装備を見せつけていることから、室内でのバーニッシュ制圧のための軽量化だけでなく、基本的なスペックがバーニングレスキューのレスキューモービルよりも高性能であると考えられる。
 描写的にはレスキューモービルにはカスタマイズ性能があり、特にルチアの独自開発などを考えると一概にフリーズフォースのギアの方が上とは言い難いが、バーニッシュを一網打尽にする時でさえ一機もレスキューモービルが参戦していない当たり基本的にはフリーズフォースの着ているものの方が優れているのだろう。

 そのため龍の炎と化したリオ様に立ち向かった時もギアに対する信頼があったため、化け物じみた炎を相手にしても怯まなかったと考えることができる。
 このギアに対する信頼もクレイへの忠誠心が関係している。

 ピザ屋でバーニングレスキューがクレイの話をしている時に耐火加工素材の特許を取得していると判明している。
 そのため対バーニング用のギアの多くはクレイが研究した耐火加工技術が用いられているのだ。
 正確にはデウス博士の研究なのだが、その事実はあまり認知されていないらしく、ヴァルカンも知らないだろう。
 そのためクレイの技術を身にまとった自分がバーニッシュに負けることはないという感情があった可能性は否定ができないのだ。

 更に私の妄想によるとヴァルカンの乗っているギアは恐らくクレイが特注で作らせた専用のものである可能性が高い。
 
理由は単純に終盤に発覚したヴァルカンの身長と他フリーズフォースの装備とのデザインの違いによる。だがそのデザインをクレイがしたと妄想した理由については後述とさせて頂く。

 ヴァルカンの身長だが非常に特殊であることはプロメア視聴者ならご存じだと思う。
 ギア装備時は8等身くらいあるが、ギアを取ると2等身ほどのいびつな姿なのだ。
 作中の一般人を見ても手長や複眼やそういった色んな種族のいる世界観ではないことが伺えるため、ヴァルカンのみが特殊な体質だと推察できる。

 そして異様に小さな身体でありながらフリーズフォースの隊長にまで上り詰めたのはクレイのおかげなのではないかと私は考えている。
 そのためヴァルカンはクレイへの忠誠心が高いのであると紐づけている。

 我々の住む現実世界ではSPであれば身長173cm以上、自衛隊ならば155cm以上、消防士は県により違うが東京などでは160cm以上の制限がある。
 バーニングレスキューが国家救命消防局というところに所属しているであろうことが映画序盤でバーニングレスキューが出動する時に文字で示されており、身長制限が設けられるような職種だろうことが考えられる。
 アイナとルチアはレスキューモービルを使わない補助役であるため身長制限がない、或いはアイナは身長制限を満たしており、ルチアは化学系の別枠として就職している可能性が考えられる。

 レスキューモービルは機械操作なので操縦者の身体能力は関係がないかと言われると、レミーがピザ屋で発言した「ようは力をどう使うかだ。バリスの怪力と一緒だよ」という発言からレスキューモービルなどのギアはあくまで使用者の耐火性能を上げたり筋力などの補助的な役割が主である可能性もあるのだ。
 それらを加味するといくら発展した技術を駆使した装備が揃っていても、危険な任務に当たる人材が身長制限などの基準を満たさない人間を採用するとは考えにくく、ましてやヴァルカンほどの異常な低身長が大佐にまで上り詰めるのは有り得ない話と言っていい。

 だがヴァルカンはなんらかの理由によりフリーズフォースに配属となり、大佐にまでなっている。
 これについて私の妄想を語っていく。

ヴァルカンが大佐になるまでの妄想


 ヴァルカンの年齢は私の目では30代くらいと考えている。だがイグニスと階級の差はあれど対等に近い対話をしている当たり同級生といかないまでもそれなりの年齢のはずだ。

 30年ほど前と言うとマッドバーニッシュにより人類の半分が消滅した事件が起きているのだ。
 その惨状を目の当たりにしてレスキューの道、或いはバーニッシュへの憎しみをヴァルカンが抱くのは不自然なことではない。
 終盤にヴァルカンが炎に包まれた時の慌てぶりは30年前の事件によるトラウマという面もあったかと思うとあのコミカルなシーンも笑いにくくなる。
 だがそのための道のりが楽であるはずがない。ましてや低身長のヴァルカンがまともな環境にいたかどうか、どれほどの努力をしたのかは想像すらできない。

 もしそんな時に誰かが手を差し伸べたらどうだろうか?
 「君の執念を見込んで試したいものがある」と道を指示してくれたら?
 レスキューではなくバーニッシュの捕獲をさせたい人間がいたとしたら? 厚い装甲機械の中で操縦ではなく、アーマードスーツのような軽量でレスキューではなくバーニッシュ捕獲に特化させたギアの実験体を必要としている人間がいたら、そんな利害の一致が起こったらどうだろうか?

 私はヴァルカンという人物がバーニッシュに対する強い憎悪を持った人物であると考えている。
 そしてそれがバーニッシュを捕獲しエネルギーとしたいクレイの需要にマッチし、低身長ながらもその憎悪を信頼しヴァルカンに大佐となるほどの装備や地位を用意したと思っている。
 またバーニッシュへの対策やその待遇によりヴァルカンがクレイに忠義を誓うのであれば妄想がいくらでもできる。

 クレイから見たヴァルカンについて


 クレイはヴァルカンの忠誠心や憎悪を理由にバーニッシュがエネルギーになることを伝えており、エレナを捕まえるという緊急時にも呼ぶほど信頼しているかと言うと、これもまた違うと考えられる。

 根拠は2つあり、1つはクレイ自身がバーニッシュのためヴァルカンの憎悪対象になりえるということ。2つ目はクレイは目障りな奴ほど危険な任務につけるという考えを持っているためだ。

 特に2つ目だがクレイがガロをバーニングレスキューに斡旋したのは慕ってくるガロがうっとうしく、危険な任務で死んでくれると助かるためと公言している。
  ならば命よりもクレイの命令を優先するほどの忠誠心を持ち、火消しよりも危険な放火魔を捕縛する任務を与えられたヴァルカンという存在はあまりにその待遇が似ているとは思えないだろうか?

 つまりクレイとしてはバーニッシュの捕獲はしつつも、自分がバーニッシュとバレる時に備え任務中に死んで欲しかったのではないだろうか?

 死んでは欲しいが、同時に任務も達成して欲しいというどっちに転んでもいい考えのため、ガロに対して言った「お前だけが計算を狂わせる」というクレイのセリフには矛盾が生じない。

 そして恐らくパルナッソス号が飛び立つ時は「安全に惑星移住をするため、市民が暴動を起こした時の制圧の指揮を取って欲しい」といった任務を与え元々惑星移住の際にヴァルカンを見捨てる予定だったのではないかと妄想をしている。ヴァルカンもその命令に忠義を持って答えただろう。


ガロとヴァルカンの関係


 上記した通りクレイへの信頼と危険な任務を行っているという点でガロとヴァルカンは共通している。他にもガロはリオ様と対立し、ヴァルカンはイグニスと対立するといった共通点がある。
 そのため私はヴァルカンは【ありえたかもしれないもう一人のガロ】と言った考えをしている。

 気になる点として、ガロが勲章をクレイに返したシーンだが、クレイはその気になればすぐに捕縛することが可能だったにも関わらず、パルナッソス計画についての説明をしているのだ。
 ガロはクレイの計画を聞き、それを否定することで敵対関係になったが、もしあの場でガロがクレイの計画に賛成をしたらどうなったのだろうか?

 リオ様を捕まえた実績を持ち、忠誠心も高く、ヴァルカンと違いバーニッシュ自体への憎しみが薄い。
 つまりクレイとしてはガロが第二のヴァルカンのような存在になるかも知れないパターンを考え、わざわざパルナッソス計画を教えたのではないだろうか?ということだ。

 仮にガロが幼少の頃にクレイに助けられた時に思ったことが「クレイのように誰かを救いたい」ではなく、「こんな目に合わせたバーニッシュを倒したい」であったら、それこそヴァルカンのような人生を送っていたのではないか?
 映画ではガロを主人公として展開していくが、もしクレイサイドを主人公とし、『人類滅亡を阻止すべく断腸の思いで1万人を救おうとし、その反対勢力にも対応する』ものとして描いた時のヴァルカンはどのように見えるのか、そしてガロはどう見えるのか。
 ヴァルカンに重きを置いて妄想をするとガロと対になるような存在として様々な考えができる。私がヴァルカンが好きな理由はここにある。

 そしてガロがヴァルカンになりえたかもしれないということは、ヴァルカンもガロになりえるかもしれないということだ。
 それはガロが対立していたリオ様と友達になれたように、ヴァルカンも対立描写のあるイグニスと仲良くなれる可能性があるということだ。

 物語はガロ達が勝ち、クレイ達が負けたような終わりのためヴァルカンとしてはバッドエンドで物語が終わったようにも思える。
 しかしヴァルカンがバーニングレスキューに言い放った「下っ端のレスキュー隊は・・・」という言葉にあるようにフリーズフォースもまたレスキュー隊なのだ。
 プロメアがいなくなった世界の復興活動や、イグニスと仲直りする可能性を通し、ヴァルカンが幸せになる未来はきっとくるのだろう。

 映画は終わってしまったがプロメアの世界の住民の生活はまだまだ続く。
 それを観測できないのは悲しいが、頂いた約2時間の情報でこれだけ妄想を私はできるのだ。
 ヴァルカン幸せとプロメア世界のみんなが幸せになることを妄想しつつ、プロメア世界のみんなの幸せを私は祈る。

 


 



ただしリオ様を裏切ったジジイ、てめーだけはダメだ。
お前だけはプロメテックエンジンで死んでくれ。










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