ハタチの洸介へ

ここに残しても、洸介が読む事は絶対にないだろう。しかし、もし輪廻転生で次に生まれ変わった時(まだ生きとるわ!というツッコミは無視しておく)、どこかで前世の記憶で手繰り寄せでもしてくれたら、そんな嬉しい事はない。

2月9日。障害児の、しかもかなり重度の障害児の親になって、20年が経ちました。

縁起でもないとは思われるだろうが、君を残して、親は先に逝けない。呼吸をする事でさえ、誰かの手を借りなければ完全ではない君を、どうして置いて逝けるだろう?20歳を迎えるまでは、親として、死んでも生きてやる!そんな気持ちで、君と向き合って来た。は?というような表現ではあるが、これは当事者であれば、なんとなくわかってもらえると思う。こうして、なんとか20歳を迎え、ここまで生かしたとホッとする反面、この先、どうなるだろう?という不安も大きい。なんなら不安のが大きい。障害児として、障害者と呼ばれるようになるまでの成長の過程は、敷かれたレールなんてガン無視して、洸介が楽しいと思う(であろう)道を突き進んで来た。それを高く評価して下さる人もいれば、親としてどうなのか?と批判する人もいた。でも、ここまでやってこられたのは、洸介の笑顔があったから。忘れちゃならんのは、洸介、兄ちゃんの存在やぞ?兄ちゃんが、変わり者でなければ、洸介は、地元の小学校も中学校も、到底行かれなかったのだし、先日の〈はたちのつどい〉で、スーツ姿のイケメン同級生達が、声をかけに来てくれる事もなかった。兄ちゃんの懐の深さ(んー、ただ単に、変わった事が好きなだけなんだけどな)に感謝しなければならん。

そそのかす人も多かったのだが、正直、もう施設じゃないけど、ずっと誰にも文句言われないで済むように、事業所を立ち上げちゃおうかな?と悩んだ事も少なくない。そしたら、そこで母ちゃん自身も働けて、一緒にいられる、目の届く所にいられる。オカネが無くても、ヤル気さえあればやれるんだろうけど、毎日毎日一緒に学校行って、常に一緒にいて介護していたら、とてもじゃないが、そこまでの余力がない。洸介と、日々の生活だけで体力も気力もいっぱいいっぱいで、とてもじゃないけど、夢物語でしかなかった。母の妄想構想としては、デイサービスで良い、母子もしくは父子で通所してきて、ここに来たら職員はそれぞれの父や母で、時間休とか使えるようにして、用事を済ませ、入浴して、またそれぞれ帰って行くみたいな、のんびりできる場所を作りたかった。でもな、子供と離れる時間が大切とか、お母さんが少しでも休める時間とか、世間では必要らしいのだ。その割には、そういうの、なーんもあらへんし、大きくなる間に、誰か、そういう事(少し離れられる時間持てるようにとか)言って来た人って、おったか?おらんかったやん?なんでも、母ありき。母ちゃんは、それで全然構わんのだけど、ちょっと普通じゃないらしいよ?(笑)普通って言われる子供を育てとるんじゃないだもん、母ちゃんだって、世間の普通じゃなくてもいいやんな。これが、普通なんだし。ここへ来て、急に母子を離そうとかされるの、ワケわからんわwww小学生の時にはママ友から、ショートステイだって、1年前からウソの理由(病院行くとか)を作って申請せんと使えんだよ!早く申請した方がいいよ!とか、一時入所から在宅に戻ってくるっていう息子が、帰って来るとめんどくさいとか、そんな母親と、手を取り合ってガンバロウ!とか思っていた自分が、今となっては恥ずかしいし、どうか彼女に天罰が下るようにと願うしかないな。

20歳とは言っても、見た目はまだまだ、大きな赤ちゃんみたいだし、おばちゃんには大人気だし(血だよな)、50を迎えた父ちゃんと母ちゃんには、少しずつ体力の衰えという老化現象がヒシヒシと襲っては来ているのだけれども、これから先のいろんな問題と大きな不安には、もうがむしゃらに抗おうとしない方がいいのかな、すべてを流れに任せてもいいのかな?と思い始めている。洸介を置いて逝けないという気持ちは全く変わってないけれども、次のステージに進むには、もしかしたら、母ちゃんが先に逝く事がターニングポイントなのかもしれないし、その問題すら触れる必要がなくなる事だってあるかもしれない。これまで、洸介の強い生命力に加え、生きて欲しい!という祈りも届いて、何度も三途の川の川岸から連れ戻して来たけれど、もう、自分で決めていいからな。だってハタチなんだもの。父ちゃん母ちゃんは、ずっと洸介と一緒にいたいけれど、洸介に任せるよ。でも、もし良かったら、母ちゃんも一緒に連れて行って欲しいな(笑)母ちゃんの人生、今生は、洸介の為の人生。別にやりたかった事って言っても…洸介が笑うのを見た、今の医療センターの有名な先生が、すっごい驚いて、笑えるのはすごい事だって感心しとった、あそこがスタートでゴールだったのかもしれんもんね、やり切った?って言ったら、洸介怒るよな。いっぱい笑わせてやれたと思っとるもんで、やることはやったんじゃないのか?まあ、そんな話は良しとして、こうして20歳の誕生日を迎えさせてやれた事、とても嬉しいし、亮太の時ともまた違って、感慨深い。
いろんな視点で、世の中を見させてくれて、ありがとう。
母ちゃんの子供で産まれてくれて、ありがとう。
ここまで生命を灯してくれていて、ありがとう。
父ちゃんも、母ちゃんも、兄ちゃんも、洸介が大好き。
まだまだ、先は長いけど、もっと笑おうな。
誕生日おめでとう。
20歳おめでとう。
もっともっと、残しておきたい話とか思い出はたくさんあり過ぎるのだけれど、来年の誕生日までかかりそうなので、はたちのお祝いだけで。 

HAPPY BIRTHDAY
Dear 𝑲𝒐𝒔𝒖𝒌𝒆

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