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闘病ノート⑧

急転。
全ては順風満帆に進むかと思われた木曜日(5月27日)の手術予定であったが、呆気なくキャンセルされてしまった。急患が入ったのだという。私の状態は安定しており、一刻を争って手術をしないと命に関わるわけではないので、当然後回しにされる。医療リソースが限られた中で優先順位をつけられてしまうことは致し方ない。しかし、こちらにも予定というものがあり、無為に病床で安逸を貪っているわけにもいかない。特に今は私の個人的な特殊事情が治療に専念することを許さないのである。聞けば、手術可能な日程は再来週以降とのことで、それは全ての計画を御破産にするのに充分なほどに遅すぎるのだ。そこで、私は一時的に退院することとした。手術はおそらく7月頃になろう。その機を逸すれば次は10月である。それまで胆嚢に管が刺さった状態で日常を生き延びなければならない。

幸い、施術をしてくれた内科の医師によると激しい運動さえしなければ管は半永久的に保つとのことだった。細菌による感染だけは気をつける必要がある。また、排泄時に力を入れると痛むので、摂取する飲食は消化の良いものに限られよう。しばらくは粥や葛湯だけで暮らすのも悪くはない。事実、私は今回の入院を通じて長年の懸案であった減量に成功した、というよりも強制的にそうなった。まだ体重計に乗ってはいないので数値化された成果は分からないが、以前よりも健康的な身体になったことは間違いない。これをしばらく維持、進行させてホメオスタシスが働く質量を大きく下げておくことは万事にとって都合が良いだろう。

また、身体の一部や行動の自由が利かないという生活体験は、わずかなれども病気や障碍のために不便している人々の気持ちを知るのに役に立つはずだ。

かくして私は明日の朝退院し、闘病生活は次の段階に入ることになる。この闘病ノートも一旦ここで区切りをつけようと思う。今後の手術や、そこに至るまでの日常生活については、機会があれば稿を改めて書きたい。

今後しばらくは、文字通り不要不急の行動は避け、ミニマムな生活に移行するため、多くの皆様には不義理をしてしまうことを予めお詫びしておく。手術が終わり、管が外れ、快癒して、また心おきなく動き回れる日が来ることを待ち望んでいる。

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