太陽コロナ加熱問題遂に解明!?「ナノフレア」を観測か
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「コロナ加熱の原因となるナノフレアを遂に観測か」というテーマで動画をお送りしていきます。
コロナ加熱のカギを握るナノフレア
太陽は地球から最も近い「恒星」に分類される天体です。
天の川銀河内だけで2500億個もの恒星があると言われていますが、太陽はその他の恒星と比べて圧倒的に地球に近い位置に存在しています。
ですが太陽には未だに解明されていない謎がたくさんあり、その中でも最大の謎とされることも多いのが、コロナ加熱問題です。
太陽は表面が5500℃程度で、内部に潜るほど熱くなり、中心部では1500万℃程度にもなっていると考えられています。
ですが表面より外側にあるコロナというプラズマの層は、実に100万℃以上にもなり、表面より遥かに高温なんですね!
Credit:ISAS/JAXA
そんなコロナ加熱問題は未だに解明されていないものの、その原因とされる有力な説はいくつか提唱されていて、その中の一つに「ナノフレア説」というものがあります。
太陽表面ではフレアと呼ばれる爆発現象が起きていますが、実は地球から観測できないほど小さなフレア(ナノフレア)が太陽表面で無数に起こり続けていて、そのエネルギーがコロナに届き、コロナを加熱させているという説です。
ナノフレア観測成功の条件
ナノフレアは通常の太陽フレアの10億分の1程度の大きさしかなく、非常に観測が難しい現象です。
ですがナノフレアが本当に存在していた場合、それは2つの重要な特徴を持っていると考えられています。
Credit:Wikimedia commons
一つ目の特徴は、ナノフレアは観測できる通常サイズのフレアと同様に、「磁気リコネクション」という現象が起こる事によって発生しているというものです。
磁気リコネクションとはその名の通り、磁力線が繋ぎ変わる現象です。
通常の加熱現象であれば徐々に物を加熱させますが、磁気リコネクションが起こるとまるで氷が突然1000℃になるように、周囲にある冷えたプラズマが瞬時に超高温に加熱させられるんだそうです。
二つ目の特徴は、発生したナノフレアがその何千㎞も上部にあるコロナを加熱しているというものです。
太陽表面で起こる他の爆発現象では基本的にその周囲しか温めませんが、ナノフレアはコロナを加熱している必要があります。
まとめると、観測された爆発現象がコロナ加熱の原因とされるナノフレアであると特定するためには、それが他のフレアと同様に磁気リコネクションによって発生していることと、コロナを実際に温めていることが示される必要があるのです!
コロナ直下で奇妙なループ構造を観測
Credit:Bahauddin et al., Nature Astronomy, 2020
そして今月、もしかするとコロナ加熱問題の原因であるナノフレアかもしれない現象を観測することに成功したと最新の発表があったので、今回紹介していきたいと思います!
コロラド大学ボルダー校のLASPという研究組織の研究者は、幅100㎞ほどの太陽スケールでいえば小さなループ状(環状)の現象が超高温の太陽コロナのすぐ下の層で明滅していることを発見しました。
このループ構造を詳しく調べた結果、様々な奇妙な点が明らかになりました。
まず、ループ構造は周囲の温度より実に数百万℃も高温だったそうです!
そしてさらに奇妙なことに、このループ構造を構成するイオンを見てみると、陽子を14個持つケイ素のような重いイオンの方が、陽子を8個持つ酸素のようなより軽いイオンより遥かに高速で移動し、高温だったそうです。
通常同じ力を加えても軽い物質ほど速い速度を得るので、ループ構造では何か奇妙な現象が起こっているということを示唆する観測結果でした。
ループ構造=ナノフレア?
Credit: NASA/GSFC/SDO
その後数年間に渡ってコンピューターシミュレーションで加熱メカニズムを調べた結果、実際のループ構造での観測結果を満たす現象はたった一つだけで、それは他の太陽フレア同様に磁気リコネクションだったそうです!
磁気リコネクションが起こると電場が発生します。
その電場からイオンが受ける力は、陽子をたくさん持つ質量の大きなイオンの方が強いため、結果として重いケイ素イオンの方が速い速度を得ていたということになります。
そしてシミュレートされた現象が実現するには特殊な条件が必要でしたが、現実の太陽でもその条件が満たされていたそうです。
そのため観測されたループ構造は磁気リコネクションが原因で起こっている可能性が高いと判明しました!
さらにループ構造が出現したその20秒ほど後に、その上部にあるコロナが突然数百万℃にまで加熱された瞬間を観測することにも成功したそうです!
Credit:ISAS/JAXA
先述の通り太陽フレアの加熱の原因とされるナノフレアの特徴は、磁気リコネクションによって発生していることと、コロナを実際に温めていることでした。
今回観測されたループ構造はそれらを満たしていることになります。
ですがこれをナノフレアと断定するためには、実際の太陽フレアが持つ膨大なエネルギーを供給できるほど、ループ構造が至る所で頻発していることが示される必要があるとのことです。
まだ確定段階とは言えないにしても、ナノフレアの観測に成功し、コロナ加熱問題の解決に大いに近付いたと言える研究結果でした。
今後の続報に期待がかかります!
情報参照元:https://www.nasa.gov/feature/this-may-be-the-first-complete-observation-of-a-nanoflare
サムネイル画像クレジット:ISAS/JAXA
ここから先は
宇宙ヤバイchマガジン
登録者数10万人越えのYouTubeチャンネル「宇宙ヤバイch」のコンテンツを文章でほぼ毎日更新します。過去1か月分の記事は無料公開してい…
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?