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まさに絶景…2つの太陽の周囲を周る系外惑星で新発見

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。


今回は「壮大な絶景が広がる系外惑星の新発見」というテーマで動画をお送りしていきます。


最近の観測により太陽系の外にある恒星を公転している系外惑星はとてもありふれた存在であることが分かってきました。

そんな系外惑星を観測する方法はいくつかありますが、その中でも主星からの光を反射している惑星の姿を直接捉える観測方法を「直接観測法」と言います。

原理自体はシンプルなのですが、実は今の観測技術でも直接観測された惑星はかなり少ないんです。

そんな数少ない直接観測された系外惑星の一つが、非常に興味深い特徴を持っていることが明らかになりました!

ハッブル宇宙望遠鏡の新発見

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Credits: NASA, ESA, M. Nguyen (University ofCalifornia, Berkeley), R. De Rosa(European Southern Observatory), and P. Kalas(University of California, Berkeley and SETI Institute)

今回、新たな発見があった惑星は、南十字星でお馴染みのみなみじゅうじ座の方向に336光年離れたところにある「HD 106906 b」です。

この惑星は木星の11倍の質量を持つヘビー級の惑星で、主星から737 au、キロメートルに換算すると1100億 kmも離れたところに位置しています!

太陽系で最も遠いところにある惑星である海王星でさえ、30 au(45億 km)しか離れていないので、HD 106906 bが主星からとんでもなく遠いところにある事が分かります

さらに、この惑星はまだ形成されてから1500万年しか経過していないと考えられている若い惑星です。

生まれたばかりの惑星なので、まだ内部に熱が残っており、こんなに主星から離れているにも関わらず、表面温度は1500℃にも達しています!

実は今のところ直接観測されている惑星は、こうした主星から遠いところにあり、かつ温度が高い巨大な惑星が殆どです。

主星から遠い事で、主星からの眩しい光に紛れにくく、また自ら熱を放射している高温の惑星ならば赤外線でも観測が出来るからです。

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Credits:NASA, ESA, P. Kalas (University ofCalifornia, Berkeley and SETI Institute),and J. DePasquale (STScI)

さらに主星の周りには形成時のガス円盤が今も残っており、その円盤も赤外線による直接観測によって捉えられています。

この惑星は2013年に直接観測によって、その存在が明らかになりましたが、この時はこの惑星がどのような軌道で主星の周りを回っているのかがよく分かっていませんでした。

しかし、今年、ハッブル宇宙望遠鏡を使って行われた観測により、この惑星のより詳しい軌道が明らかになりました!

なんとHD 106906 bの軌道はガス円盤から大きく傾いていて、さらに、かなり歪んだ楕円軌道になっていたのです。

普通、惑星はこのガス円盤の中で生まれるので、惑星の軌道の傾きはガス円盤の傾きとほぼ同じで、軌道もほぼ円形に整うので、これは普通に考えれば
明らかにおかしい軌道であると言えます。

惑星系の構造

では何故、この惑星はこれほどイレギュラーな軌道を持っているのでしょうか?

この惑星がこんな軌道を持つようになった原因はこの惑星系の構造にあります。

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主星の周りには形成時のガス円盤が残っていると説明しましたが、実はこの系には他にも特徴があります。

それは主星が2つの恒星から成る連星系であるということです。

HD 106906 bは直接観測されただけでなく、2つの恒星の周りを公転しているというもっと特別な惑星でもあるのです!

このように連星系の周りを公転する惑星は「周連星惑星」と呼ばれ、4300を超える既知の系外惑星の中でもまだ数十個しか見つかっていない激レアな惑星です。

惑星の発見当初は主星は単独の恒星であるとされていましたが、2016年に主星が連星系である事が判明し、この惑星が周連星惑星でもある事が判明しました。

この連星が惑星の運命を大きく変えてしまうことになります。

何故こんな軌道になったのか?

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CREDITS:NASA, ESA, and L. Hustak (STScI)

まず、HD 106906 bが形成された当初は、連星系から3 auという近距離にあったと考えられています。

太陽系でいうと、3 auというのは大体、太陽から火星と木星の間にある小惑星帯までの距離に匹敵します。

現在と比べると身近に思える程、かなり近い所にいたHD 106906 bですが、周囲にはまだ形成時のガス円盤が残っていました。

一般的に惑星がこのガス円盤の中を突き進んで公転すると、ガスとの抵抗で公転速度が減速し、どんどん主星に近づいてしまうと考えられています。

そして周りのガス円盤がなくなる頃には、惑星は主星から超至近距離を公転するようになります。

これが今日数多く発見されている、ホット・ジュピターを始めとする主星のすぐ側を公転している惑星が形成されるメカニズムだと考えられています。

しかし、主星が連星系だったHD 106906 bにおいては違う事が起きてしまいました。

主星が互いに回り合う連星系だったので、HD 106906 bはその重力の影響で大きく軌道が弾かれてしまい、惑星系外へ放り出されてしまうことになります!

このまま惑星系外へ放り出されてしまい、恒星の周りを公転せずに永遠に宇宙を彷徨い続ける天体を「浮遊惑星」と呼びます。

この惑星も同じように浮遊惑星になりかけたのですが、なんと偶然近くに接近してきた別の恒星からの重力の影響でギリギリ放り出されずに済んだそうなのです。

こうして偶然居合わせた別の恒星のおかげで、HD 106906 bは現在のような広大で歪んだ軌道で安定することになったと考えられています!

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誤差が大きいものの、現在ではHD 106906 bは約15,000年かけて連星系の周囲を公転していると考えられています。

軌道がガス円盤から大きく傾いているので、この公転周期のうち大部分の期間でHD 106906 bからは2つの太陽とその周りを取り囲む円盤が見えるこんな景色を拝めれるでしょう。

美しいですね・・・

プラネットナインが存在し得る証拠に

公転周期15,000年、大きく傾き歪んだ軌道を持つ惑星、こう聴くと、ある天体の事を思い出した人も居るかもしれません。

実はこのHD 106906 bの軌道は、近年、太陽系外縁で存在が予測されている太陽系第9惑星「プラネット・ナイン」の想定軌道とよく似ているのです。

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Credit:https://arxiv.org/abs/2012.04712

この図は、HD 106906 bの軌道と想定されているプラネットナインの軌道を比較したものです。

上から公転周期、主星からの平均距離、主星に最も近づいた時の距離、軌道の歪み具合(離心率)、軌道の傾斜を表しています。

こうして見ると、HD 106906 bと同じような運命を辿ったプラネット・ナインが実在していてもおかしくないように見えます。

実際に、プラネット・ナインは元々は今の太陽系の惑星が存在しているような太陽から近いところにいたが、木星の影響ではるか遠方へ飛んでいってしまったという予測もあります。

もし、この時プラネット・ナインが浮遊惑星になりかけたのを別の恒星が阻止していたとしたら、プラネット・ナインの想定される軌道にも説明がつきそうです。

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まだ理論上の予測であり、存在が確認された訳ではないプラネット・ナインですが、HD 106906 bはそれが実在しうる事を示す根拠になるかもしれません!

結論:連星・ガス円盤「運のいいヤツめ・・・」
HD 106906 b「フフフ」

情報参照元:https://www.nasa.gov/feature/goddard/2020/hubble-pins-down-weird-exoplanet-with-far-flung-orbit
サムネイル画像クレジット:ESA/Hubble, M. Kornmesser


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