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大好きな父の話


父、西郷輝彦が、前立腺癌により、2月20日の午前9時41分に病室で息を引き取りました。


生前父を応援してくださった沢山の皆様、ファンクラブの皆様、お世話になった沢山の皆様に、心から感謝申し上げます。

報道が出てから沢山のご連絡をいただき、父がどれほど愛されているか改めて実感しました。
私のSNSにメッセージをお寄せくださった皆様も、本当にありがとうございます。



2月19日、演劇の公演期間中だった私は、父の病状を聞き、無理を言って昼公演と夜公演の合間に病院へ駆けつけました。
父は思ったより顔色が良く、不織布マスク越しに目を合わせてニヤッとすると、酸素マスク越しにニヤッとし返してくれました。


いつも書斎で音楽を流しながら仕事をしていた父。
もしかしてずっと音楽を聞いてないんじゃないかと思って、耳元にiPhoneを置いて、父の大好きなビートルズのLet It Beを流しました。
これこれ。という顔。目がキラキラして、手でリズムを取って、口パクで少し歌ったりして、曲が終わったら酸素マスク越しに手の甲にキスをしてくれました。
「これ(酸素マスク)邪魔なんだよ。」というおどけた仕草までして見せてくれて。
そのまま少しまどろんでいたので、「明日も来るからね」と言って、病室を後にしました。


2月20日、演劇の千秋楽の朝。
父と一緒に聞きたい曲を集めたプレイリストを作りながら劇場に向かう途中、姉から訃報の電話が入りました。
本番までには劇場に戻ることにさせていただき、なんだか信じられない心持ちで病院に向かいました。


私が到着した頃にはまだ体温も少し残っていて、まるで眠っているようで、呼び掛け続ければまた目を覚ますんじゃないかと思ってしまう程に穏やかな表情でした。
母に支えられながら長い戦いを終え、やっと痛みや苦しみから解放されて、安心しているようにも見えました。


私は家族より先に病院を出て急いで劇場に向かい、開演ギリギリの到着になってしまったけれど、
あたたかい共演者の皆様に支えられ舞台に立つことができました。 



元気だった頃は、私の芝居を見に必ず劇場へ足を運んでくれた父
何度も芝居の相談に乗ってくれた父
私が芝居で悩んで泣きながら帰った日は、何も言わずに抱きしめてくれた父の眼差しが
劇場全体を包み込んでいるようで、自分でも驚くほどに落ち着いた気持ちで千秋楽を終えることができました。


もうあの深く優しい声は聞けないのかと思うと、今は胸が張り裂けそうなほど苦しく、悲しいです。
父との沢山の温かい思い出ひとつひとつを噛み締めながら、またお世話になった全ての皆様への感謝の気持ちに包まれながら、今は家族一同静かに過ごしております。



沢山の思い出話は、これから少しずつこぼさせてください。


偉大な俳優・歌手であり、芝居や歌や人生について多くを教えてくれた師匠であり、
そして何よりも強くて優しくて家族思いな、この世でたった一人の大好きなお父さん。
つらくて苦しかったね。最後まで頑張ってくれて本当に本当にありがとう。
世界で一番大好きだよ。
あなたの娘に生まれて私は本当に幸せです。




改めて、生前父を愛し、応援してくださった皆様。お世話になった関係者の皆様。心からありがとうございました。


そしてこれからも
父という人間を
父の出演してきた沢山の素晴らしい作品を
父の音楽・歌声を
一緒に末長く末長く愛し続けていただければ幸いに思います。

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