人間は、ロボットなのかもしれない

※この投稿は2005年10月3日にWEBサイト「ウチナーコンボイ通信本部」内のコラムコーナー「余計な一言」に掲載した記事の再掲です。

人間は、ロボットでは無いかと思うことがしばしばある。それは、ネットサーフィンを始めてからだ。

最近は、個人が次々とホームページを立ち上げていて、更にブログが誕生したこともあり、個人が日常を綴ったサイトが数多く見られるようになった。「実録鬼嫁日記」のように書籍化されたものもある。これは、インターネットが作り出した新しい文化である。

ただ、ちょっと考えて頂きたい。ブログの読者は、ブログの作者の顔を知らない。芸能人や文化人が立ち上げているブログの場合は別であるが、大概、ブログの作者が顔を出すことは無い。

ということは、どういうことか。

もしかすると、あなたがいつも楽しく読んでいるブログの作者が、意外と身近な人だったりしないだろうか。私のように、身分を明らかにしている作者もいるが、ほとんどはハンドルネームだけで、作者が何者なのかを読者が知る術は、内容から推測する以外に無い。

あなたの身近な人で、ブログを開設している人はいるだろうか?いても、あまり職場関係や身近な人には公表していないのではないか。堅物で有名なあなたの上司が、実はブログを開設していて、趣味のゴルフの話をギャグ交じりに綴っているなんてこともありうるのだ。

ブログやwebサイトの文章と、実際に会った本人のギャップが激しい場合がよくある。これは、Eメールのやりとりでも同じことが言える。
例えば、いつもはものすごく面白おかしいことばかり言っている三枚目キャラクターの人が、ブログでは政治経済のことばかりしか書いてない、とか、真摯に仕事に取り組むビジネスマンが、ブログでは好きな漫画の話を綴っていたり、好きなアイドルの話をしていたり。
知り合いの開設しているブログを読んでいて「あの人、こんな言葉遣いするんだ」と意外な一面を発見したことが一度はあると思う。

この現象に、私は「人間=ロボット説」を見るのである。

人間の頭脳の中には、とても優秀なパイロットがいて、普段、人間はそのパイロットの操縦で動いている。しかも、そのパイロットは操縦する自分のロボットの特徴をしっかり理解していて、そのロボットの特性に合った操縦をしてくれる。

例えば…

「このロボットは、声が低いから、あまり早口は似合わない」とか、
「このロボットは、計算力が優れているから、計算をよく使う仕事をしよう」とか、
「このロボットは、筋力が優れているからスポーツ選手を目指したほうがいいな」とか、
「このロボットは、あまり整った顔立ちじゃないから、キザなセリフは似合わないな」とか。

つまり、普段人間が口走っていることの多くは、パイロットが計算して、ロボットの姿形、顔立ちや、キャラクター、集団の中におけるポジションや職業など、あらゆるデータを精密に計算して言わされていることなのである。但し、これは「本音と建前」の「建前」とも少し違う。

「ちょっと本音を言わせてもらうと…」で始まる本音も、実際は本当の本音ではなく、パイロットが「この場面で本音を言っといた方が効果的」と判断して言わせていることなのである。

その一方で、ブログやwebサイトに文章を載せるときには、「顔や姿形、声質、キャラクター」など、発言を制限するものがほとんど無い。だから、ブログなどの文章は、その人の「正体」つまり、パイロット自身が考えていることがストレートに表現されることが多いのである。

Eメールで絵文字を使う「オヤジ」が、周りにいないだろうか? そんな人たちを指して、若い女性達は「キモい」と一蹴する。しかし、Eメールで絵文字を使って文章を書くのが、その人の正体であり、普段難しい顔をした小太りの中年は、その人の世を忍ぶ仮の姿であり、「Eメールで絵文字を使って文章を書くようなパイロット」が操縦している「ロボット」なのである。

話が難しいかな?
異性に対して「好きです」と言ったことがある人、よく考えて欲しい。人間に取ってひとつのヤマ場でもあるそんな瞬間にさえ、「このタイミングで、好きです、と言った方が効果的かな」と冷静に計算していたもう一人の自分に気がつかなかっただろうか。

実際に目の前にいる人間の言葉なんて、本当のその人が思っていることの10分の1にも満たないだろう。その人の正体が見たかったら、文章を書かせてみるといい。Eメールのやりとり、手紙のやりとり、交換日記、開設しているブログを教えてもらったり、文章に表された言葉が作者の本当の性格なり思想を反映していると私は思う。

人間はロボットである。相手の正体が見えない。だから人間関係には「葛藤」があるのである。
人間はロボットである。操縦しているパイロットも、たまには自分の考えをストレートに世間に表明したい時もあるだろう。だから、手紙を書く、ブログに文章を載せる。

人間というロボットを操縦するパイロット達にとって、インターネットが普及する現代社会は、とてもいい社会なのかもしれない。

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