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テラフォーミングマーズについての短考察:永続効果の一元的な可視化

テラフォーミングマーズについて考えていた際に、非常に有意義なゲームデベロップ上の気付きがあったので文章にすることにした。
当記事はある程度の知識があるボードゲームのゲームデザイナー、デベロッパー、ユーロ文脈のボードゲームファンを対象に書いた。

当記事は、様々な事情で筆者がかなり忙しく、全体について細かく話していく体力がない状態のため、一部分にのみフォーカスした短い考察となっている。テラフォーミングマーズの魅力は他にもあると考えているが、この記事では触れない。
筆者は40回程度テラフォーミングマーズを遊んでいるが、さらに遊んでいく中で今後考えが変わる可能性もある。


ボードゲームのデベロップメントにおいて「永続効果」は非常に扱いが難しい。
・プレイヤーが自身で処理をする関係上、永続効果は忘れがち(=認知負荷が高い)
・カードパワーが起動回数によって変わりすぎるため、コントロールが難しい(=強い効果を用意しづらい)
からだ。

Slay the Spireというドミニオンが源流のデジタルゲームがある。
デジタルゲームであれば、雑に永続効果を実装してもプレイヤーは処理をしなくてよく認知不可が増えない。また、そもそもソロのゲームなのでカードパワーが壊れても問題がない。
だから、ゲーム中に結構な頻度でレリック(永続効果)を渡される。
このレリック、使うか使わないかは置いておいて、貰う時は本当に嬉しい。

Slay the Spireから分かることは、永続効果を認知的な負荷を増やさずにボードゲームにうまく取り入れることができたなら、本当に嬉しい瞬間がゲーム中に沢山あるってことだ。

本題に入ろう。
テラフォーミングマーズの優れた点は「資源トラックによって永続効果を一元化し、認知負荷を減らしたこと。それによって、永続効果を得るタイミングが大量にあること。」だと考えた。

テラフォーミングマーズには、即時カードと永続カード、イベントカードの3種類が存在する。永続カードとイベントカードは特段特殊な実装ではないため、今回は触れない。

特筆すべきは即時カードの効果にある。
即時カードの効果は大抵、「〜の収入を上げる」という効果になっている。
この「〜の収入を上げる」という効果は、実質的に永続効果だ。ゲームが続くラウンド数×上がった分の収入が湧く。
しかも、認知負荷がかなり低い。収入フェイズで参照すれば良いだけで、しかも収入ボードに一元化されて可視化されているため、収入ボードだけを見ていればいい。
テラフォーミングマーズは、「1度しか使えない」という制限からプレイヤーの指針になりにくい即時カードを「実質的な永続カード」にすることで、プレイヤーがずっと嬉しいゲームにしている。

また、カードパワーも実質的にほぼ制御されている。ゲームの終了トリガーによって「世界に必要な資源の数」は、だいたい決まっているからだ。

また、タグも実質的に永続効果のようなものだ。
例えば、「地球タグの数だけ収入が上がる」という即時カードをプレイしたとしよう。
この時、過去に出したカードの地球タグが働いている。
つまり、タグは「起動タイミングが新しいカードで指定されている永続効果」になっている。

このようなUIの革新、情報の整理整頓によって、テラフォーミングマーズは忘れにくく、壊れにくい永続効果のオンパレードになっている。
プレイヤーの心を掴んで離さない傑作になった要因の一つとして、このような永続効果の扱いがあるのではないかと考えた。

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