十日市場

今日。

新幹線に乗り、新横浜から横浜線で町田へ来た。

電車が駅に停まる度、勝手なことをまた考えている。

十日市場駅

...この街では、年に一度、夏の最も暑い夜に十日間だけ市が開く。それは、自治体が主催した地元警察に申請を出したようなものではなく、いわば”闇”。
街の中でも普段は息を潜めているような人々(決して毎夜飲み歩くようなやかましい若者たちはこの市に訪れることはない)、そんな人々が自分の家にあるものを持ち寄って好き勝手に売って去っていく。
紙に書いたミミズののたくったような文字を一円で売る者もいれば、ヤニで汚れたスマートフォンで撮影した三十秒ほどの動画をQRコードに換えて紙に印刷し十円で売っている者もいた(その文字や動画が何を意味するのか分かる者は少ない)。
その市は開かれていることも終了したことも告知されず、ただ個々人が「最も暑い夜」と感じた日に市を開く。
それは道端にただゴザを敷いただけの者もいるし、運動会で出すような「◯◯小学校66期卒業生寄贈」と書かれた大きな薄汚れたテントの下に折りたたみテーブルを置いて売り場を作る者もいる。
一日目から三日目は訪問客で盛況だが、四日目からは閑散。八日目、九日目はほぼ無客。十日目は誰にも知らされていないにも関わらず盛況となり、静かな大団円を迎える。...

そんなことを、町田の喧騒から外れた雑居ビルの2階のカフェで書いている。

電車でスマートフォンを見なくてもなんとかなる

最小単位の面白さを知りたい。ミクロのものを集めたい。別にマクロにならなくてもいいや。別に挑戦しなくてもいい。今のままでいい。ただ、はあ〜面白いことを考えたい。

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