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じょうよう

桜は綺麗だという話。桜は綺麗だなあ。本当に綺麗だと思うぜ、俺。
でもな、桜が咲いていない桜の名所っつうのも、綺麗なんだって気付いたよ、昨日。
昨日な、我々夫婦でいわゆる桜の名所に行ってきたんだ、電車で、つらつら揺られながらよお。
そしたらさ、その駅に着いて、その駅っつうのは、駅名にまあ桜の名所でなけりゃ一発で読めないようなムズい漢字が使われていてさ、そんなことは良いんだけども、まあ、駅に着いたの。
めっちゃ暖かいし、パーカーの上に薄ジャケットを羽織って出てきたはいいが家から出て二分で暑くなっちまって、パーカー脱いだ。二分って言ったら家まで戻るには結構面倒くさい距離まで歩いてきてるんで、パーカーは手に持ったトートバッグに押し込んだ、っていうくらい暖かかったんで、桜くらいもう咲いてるっしょ、と思ったが、桜の方はそんなことないっしょ、っていう感じで、駅に着いて車窓から見た感じだと、まあ、咲いてるんじゃね?というような様相を見せていた名所様だったが、降り立ってみると、枝、枝、枝。枝見に来たのかっつうくらい、桜の花なんて咲いていない。咲いてないモノは仕方ない、歩くか。っつうことで、歩き始めたらさ、愉しいんだよ。ほら、結構、沢山の人が歩いている。桜咲いてないねえ、とか多分言いながら、幸せそうに歩いている。いいじゃねえか。この人達の顔を見れただけでも、来た甲斐があったってもんだ。
この名所というのは、川沿いに桜がずらあっと植わっていて、駅に降り立ってから、我々は川上に向かって歩いて行った。小さな川で川べりまで降りていくことができるのだけれども、その川が綺麗のなんのって。
久しぶりにアメンボを見たよ。あのアメンボの浮くやつって油でできてて、洗剤が入った水だと沈んじまうんだよお、とか抜かしながら歩いていると、水と木と春のにおいで歩くのがさらに愉しくなってきた俺は、さらに川上、川上へと進んでいく。妻はまあ着いてきてくれているという様子。
なんか川上すぎて人が少なくなってきて、さすがに二人とも疲れたので、川べりに座って休んだ。コンクリートに直に尻を着けて休むなんてこの頃していなかったので、童心に帰るっつうか、マジで子どもになった、一瞬。
いつのまにやら桜の木さえ一本も生えていない場所に来ていたということに全く気付かなかった。
いいよ、いいよ、この感じ。桜を目的に来たのに、自然を満喫してしまったこの感じ。思わぬ愉しさと疲労に出会い、我々はいつのまにか二駅も先まで歩いてきていた。二駅先の駅はこれは普通に読める。
常用漢字。常用漢字。

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