映画体験記①

感想を書く。
これまでは、こうした類の文章は極力避けてきた。映画感想文や読書感想文みたいなものを披露し始めると、「これを観てる・読んでるジブン、カッコいいだろ?」になりかねないと思っていたからだ。「人に見せるために観る・読む」は鑑賞者として微妙だと思うので、あまりそれはしたくない。スタンスはあくまで「自分が観たい・読みたいものを鑑賞し、純粋に伝える」。これに尽きる。これを今年はやりたい!
だから、感想ではなく、体験を記す。自分との接点を探る。現実世界と作品の世界を、極力地続きで考える。
「ジブン、カッコいいだろ?」に対する戒めを強く強く持ちながら、自分と作品との接点は伝えたい。とりあえず、シャープ①。

2024.01.08鑑賞
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(2024年/監督: ポール・キング)

2005年公開の「チャーリーとチョコレート工場」に登場するウィリー・ウォンカの前日譚。前作と監督も違い、テイストにもかなり乖離がある。乖離があるから悪いというわけではなく、ミュージカル映画として純粋に楽しめた。
個人的に今は、創作物と自分との距離を測ることをテーマにしているので、どのように観るのか迷いはあった。正直、これまでなら「つまらん」と一笑に付していたようなストーリーではあるが、この機会に、自分なりに真剣に向き合った。所感や、自分と映画との接点を言葉にしてみたい。

【感じたこと】
・チョコの価値が金塊くらい高い。チョコで警察署長を買収している。
・この物語に出てくる固形チョコレートは全てパリパリ、ポリポリと音がした。つまりしっかり冷えているということだ。それは、物語の季節が冬であることと関係があるのだと思う。
・ウォンカがオープンしたチョコレートのお店はピンクを基調とした店内で、中央にドデカく桜が鎮座し、さくらんぼをモチーフにしたデカいチョコレートがぶら下がっていた。さくらんぼは日本から取り寄せたらしい。製作陣の中にJAPAN好きがいるようだ。
・ウンパ・ルンパは前作から引き継がれていたが、姿形は似ても似つかず、似ているとすれば、背が極端に小さいことぐらい。
・ミュージカルは久しぶりに観たけれど、韻がよく踏まれていて楽しかった。
・ウォンカの青年時代のルックスはとても精悍で、ジョニーデップ演じるウォンカを彷彿とさせるが、髪型のセンスが現代的すぎて、チョコレート工場時代になぜあのボブみたいな髪型に落ち着いたのか理解不能。

【映画との接点】
昨年末、取引先からお歳暮で上等なチョコレートを頂いた。

上等なチョコレートというのは、得てして内壁に仕切りのある大箱に包装なしでデザインの凝ったものが整然と並べて入れられている。今回も例に漏れずそうだった。
30個程入っているから同じ部署の大体13人くらいに配ることになるのだが、包装なしで入っているため、大変気を遣う。
包装のないチョコレートを取ってもらう時に手が汚れないように一応片手にティッシュ箱を携え、もう片方の手に大箱を持ってデスクの島々を練り歩く。練り歩くタイミングも難しく、部署の人がある程度デスクに着いている時間を見計らなくてはならない。当然自分も席を外すタイミングがあるから、なかなか点と点が繋がらない。気を遣う。
そして、夕方。やっと練り歩けそうなタイミングが来た。練り歩く。大箱とティッシュ箱を両手に持った男が夕方のオフィスを闊歩する。アクションが大きくなるので、恥ずかしさも若干ある。

11人目くらいでティッシュが底をつく。
すみません、と謝りつつ素手で取ってもらう。
あっ、柔らかいと言われる。タイミングを見計らいすぎてチョコレートは溶けている。
困惑の笑みを浮かべ、手を汚しながらもチョコレートを皆受け取ってくれた。優しい。
疲弊した私はデスクに戻る。

多分、取引先の担当者がウィリー・ウォンカだったら、年末には嬉々としてお歳暮に大箱に入った包装なし剥き出しのチョコレートを大量に送りつけてくることだろう。

お願いですから、お歳暮にチョコレートはやめてください。冬だからといってチョコレートはやめてください。暖房で普通に溶けます。
チョコレートで幸せにできない世界もありますから、ウォンカ。
海苔巻き煎餅とかください、ウォンカ。

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